サステナビリティについて考える。持続可能な未来へ導く教育とは?

Choice

「わたしはわたし」自尊心を育む子育て

名前
浅倉利衣 / Rie Asakura
家族
4人 (7歳と5歳の女の子)
所在地
東京都
お仕事
ライフスタイルプロデューサー
URL
Rie Asakura (@rie_asakura) Instagram

昨年夏、あまりの猛暑に危機感を覚え、改めてサステナビリティについて考えました。
年々、外でもなかなか遊べなくなってくるほど暑さが増してきて、子ども達が大人になる頃には一体地球はどうなっているのだろう?と。アマゾンでは森林火災、オーストラリアでも大規模な火災があり、いよいよ、他国で起きていることだから私たちには関係ないと言えなくなってきたと本気で思うようになりました。
以前聞いたことのある、「正常性バイアス」という心理学用語を思い出しました。自然災害や事件などがあっても、自分にとって都合の悪い情報を無視したり「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価したりしてしまう人間の特性のこと。「あー、私もそう思っていたな」と。

以来、気候変動を引き起こしている要因だったり、色々な繋がりについて学びたいなと思っていたところで、友人から勧められた「エシカル・コンシェルジュ」という講座を受講しました。
エシカル・コンシェルジュ講座について説明すると長くなってしまうので、興味を持った方は是非ググってみて頂きたいのですが、講座で11名のあらゆる分野の専門家から学んだことは、私が今まで学校でも学んでこなかった、そして知らなかったことばかりでした。

中でも、聖心女子大学教育学の永田佳之先生の講義内容は、私の心を強く刺激してくれるものでした。
永田先生は、2021年教育出版から出版される中学1年生の国語の教科書(注1)の中でも、「これからもっと予測不可能な時代を生きていく若者たちには、おのずと正答が求められる教育ではなく、答えのない問いを仲間と話し合い、自身の中で深め、〈問い〉とともに歩んでいくことが大切」といった内容を執筆されています。

受講後すぐ、永田先生著書『気候変動の時代を生きる』という本を購入して、一気読みしました。
親である私は、子ども達により良い地球を残したいと思いながら何かしてる?一体何ができるのだろう?と思っていたので、暮らしの中でできるヒントとなることが沢山書かれていてとても勉強になったのです。
また、特に、ドイツやイギリスなど、ヨーロッパの学校では、今やClimate Change Education: 気候変動教育(CCE)が当たり前のように幼稚園から組み込まれているところも多く、実際の例も紹介されていて、とても感銘を受けました。
そして自然と心が動いたんです。よし、我が家でも少しずつやろうと。

そうして始まった我が家のサステナビリティ生活は、前回記事でもご紹介してきたコンポストに繋がります。
生ゴミを捨てるのではなく、コンポストする。ゴミとして捨てていたものは、実は微生物がそれを発酵・分解してくれるおかげで、堆肥化し、有機資源となる。そしてその栄養たっぷりの堆肥を赤玉土などと混ぜてプランターに移し、種を撒いてベランダ菜園をする。栄養たっぷりの土から育ったお野菜を食べ、お野菜は私たちの体となり、料理で残った野菜の端切れなどはまたコンポストへ。結局生ゴミとして焼却しないので、焼却のための税金も使わないしCO2も排出しないわけです。なんて素敵なんだコンポスト

特に都会に住んでいると、人間と自然を切り離して考えがちというか。
でも、コンポストという自宅での自然体験を通して、一連の循環や自然とのつながり、生き物とのつながりをより体感できるようになって、いかに人間は自然の一部であるかもしっかりとわかるようになったし、自然界にもより敬意を持った行動に変わっていったのを感じます。「生きる」とはこういうことなんじゃないかな。
ブライトチョイスでも推奨している国際バカロレア教育の"Linking Skillsー複数の物事をリンクさせる能力"とも少し繋がるような気がしています。("linking skills"については「国際バカロレア連載:第2回: 私が国際バカロレアを選んだわけ。求められる人物像と必要な準備は?」をご参照)

同本の中で、「幼児期の発達段階の特徴を踏まえると、知識や技術の習得以上に、直接的な体験や価値志向性や行動を伴った実践が重要になってきます」と書かれていますが、我が家の娘達を見ていて本当に実感します。
実際に自分たちでコンポストして、堆肥で土作りをして、種を撒いて野菜を育てて、自分で育てた野菜を食べるという自然体験によって、子どもたちの意識が形成されます。
スーパーで通年たくさんの野菜が並ぶ中で、旬の野菜は何かな?どうやって育つのかな?ということも目撃できる。不思議だと思う気持ちや驚き、自然の摂理に圧倒される経験は、価値観の形成に大きく影響を与えるんだろうなとひしひしと感じます。また、幼児期だけでなく大人でも影響大だと思うのです。なぜなら自分が変わっているので(笑)

海外では、学校に行かないストライキをしているという若者が増えているという記事も目にします。理由は、学校で勉強したところで、地球が壊滅的になって人類が滅ぶのであれば、行く意味がないと。大人たちが早く気候変動対策を起こしてくれと。
子どもの方がサステナビリティの問題に対して真正面から向き合っているのかもしれません。そして私たち大人はそれをきちんとキャッチしなければと思います。

子ども達が希望を持って安心して学び、のびのび平和に暮らせる世界を残せるように生活することは、結局自分のためでもあり。今後も暮らしの中で、自然との繋がりを感じながら、私も子ども達と一緒に楽しく学んでいきたいと思います。

〈浅倉利衣さん連載〉
「わたしはわたし」自尊心を育む子育て

       
  • 土壌菌と触れ合うことは、腸活にも繋がります。

  • 旬の野菜を育てて、小さな自給自足生活。

  • 直接的な体験は、子どもにもしっかり刻み込まれる。

          
  • おすすめの一冊。『気候変動の時代を生きる』

  • ダディーの誕生日に娘達が作ったカレーライス。

  • 美しい日本の文化を繋ぐ。

  • コンポストで出来上がった堆肥と赤玉土などを混ぜて、プランターにいれる土作り。土に触れる生活が心身の健康に繋がるという研究結果(注2)もありますが、本当にそれを感じますね。人は土から離れてはいけないなと改めて思います。

  • 自粛期間中に痛感したことの一つに、都会に住んでいると消費ばかりだなということ。自分たちで食べるものは少しでも自分たちで作れるようになりたいという思いから、ベランダ菜園も始めることに。体験すると、改めて農家さんへの感謝の気持ちも生まれ、食育ってこういうことだなと思います。

  • 「家庭で行っている地球にとって良いアクションは?」というような課題があり、長女が学校から持ち帰ってきたプリントの一部。ベランダで行っているコンポストを描いており、自然と理解してくれていたんだなぁと、しばらくしみじみしながらプリントを見つめていました。

  • 本文の中でご紹介した本。気候変動とは何から、個人・学校・地域・職場でできるアクション、日本ではあまり知られていない世界の動きなどをわかりやすく紹介してくれています。

  • 子どもの発想は本当にクリエイティブで愛おしい。ダディーは黒髪だからと海苔で黒色にし、ひげも再現。具はよそられず、ダディーはライスと海苔とルーを嬉しそうに食べていました(笑)

  • 先日長女の七五三のお祝いをしました。国際結婚をしたことで、改めて日本の文化や芸術って美しいなと感じるようになりました。日本の文化を教えられるのは母親の私なので、本を参考にしながら季節の行事なども親子で楽しんでいます。