絵本の部屋1 どんどんどんどん 本能のままに進め!
海のある町でのびのびと暮らす、クリエイター夫婦の子育て
- 名前
- ヨシタケシンスケ & 吉竹祐子
- 家族
- 中2と小3の男の子をもつ、4人家族
- 所在地
- 神奈川県
- お仕事
- 絵本作家(夫)、クリエイター(妻)
- URL
- くりひょうたん。by吉竹祐子
【新連載:ヨシタケシンスケ邸〈絵本の部屋〉から、家族の思い出が詰まったおもしろ蔵書をご紹介。妻の祐子さんが綴ります。】
この絵本は、我が家の〈絵本の部屋〉と呼ばれている、階段の中二階にむりやり増築した小さな部屋にあったものです。亡くなった義母が生前、自宅を開放して、子どもたちのために文庫を行ったり、絵本の読み聞かせをしたりしていました。その時の絵本がこの〈絵本の部屋〉に保管されているのです。
その部屋で、たまたま見つけたこの『どんどん どんどん』は、表紙に描かれている裸の子どもが、ただただひたすら脇目も触れず、どこまでも、どこまでも、どんどん、どんどん突き進んでいくという内容。それ以外のことは何も描かれていません。しかし、そのこと以外何も描かれていないこともまた、子どもという生きものが、的確に表現されているように思います。
子どもは歩けるようになった途端、思いのままに、どこまでも、どこまでも、どんどん、どんどん、自分の足で歩き進みます。そうかと思ったら急に立ち止まってじっとしたり。そしてまた歩き出します。放っておくとどこまで行くのか?とにかく自由です。
長男は、3歳くらいの頃、2回ほど迷子になったことがあります。
1回目は、私と一緒の時。一瞬の隙をつかれ、知らない間に、勝手にエレベーターに乗ってしまい見失いましたが、無事保護できました。
2回目は、夫と一緒の時。今はなき渋谷のパルコブックセンターで。渋谷のど真ん中、人がたくさん行き交う場所で、突如行方をくらまし、夫は顔面蒼白。右往左往しながら探し回っていたその時、館内放送の迷子のお知らせで、息子の名前が流れてきたそうです。
次男は、次男で、これまた3歳くらいの頃、私がいないと勘違いして、ひとりで近所のスーパーまで、大泣きしながら探しに出かけてしまったことがありました。
我が家の子ども達の迷子の話は、どちらもとても恐ろしい話なのですが、この『どんどん どんどん』に描かれている小さな子どもは、ただただ本能のままに生きている様子が、片山健さんのダイナミックな絵と共に表現されています。
息子たちが成長した今となっては、そうだった、そうだったと、あたたかい気持ちにもなれる、とても魅力的で、大好きな絵本の1冊です。
〈連載概要〉ヨシタケシンスケ邸のおもしろ蔵書の数々を、妻の祐子さんが心温まる子育てエピソードと共に綴る、その他記事はこちらより
ヨシタケシンスケ邸絵本の部屋