仕事づくしの毎日に生まれた"余白"と、息子との宝物のような日常

自分らしく働き、育てる。暮らしの中で見つける“心の余白”
- 名前
- 山脇道子 / Michiko Yamawaki
- 家族
- 3人家族(夫、6歳の息子)
- 所在地
- 東京
- お仕事
- スタイリスト・クリエイティブディレクター
- URL
- 山脇道子(@MICHIKO YAMAWAKI)Instagram
はじめまして、山脇道子です。東京で、夫と6歳の息子と3人で暮らしています。普段はスタイリストやクリエイティブディレクターとして、ブランドづくりやデザインのお仕事をしています。
1980年生まれの私は、大学卒業後に上海へ留学するつもりでしたが、当時SARSが流行し計画は白紙に。ぽっかりと空いた1年の中で始めたアルバイト先で、人生を変える出会いがありました。
そこで初めて知ったのは「スタイリスト」というお仕事でした。それまでもファッション誌を読むことはありましたが、クレジットまで目を通す習慣はありませんでした。ところがアルバイト中にクレジットに注目して見ていると、いつも心ひかれるページのスタイリングをされているのが、同じ方だと気づいたのです。
そのスタイリストさんにアポイントをして、"好き"の気持ちをお伝えし、24歳の頃アシスタントにしていただきました。その2年後には独立し、雑誌、広告、ブランドのディレクターなど、気づけば夢中で走り続ける日々が始まりました。
結婚したのは37歳です。結婚式の前日まで海外ロケを入れてしまうほど仕事一色だった私ですが、その後に始めた不妊治療で、初めて大きく立ち止まることになります。治療のリズムとこれまでの生活ペースはどうしても両立できず、覚悟を持って仕事量をゆるめることにしました。
そこで生まれた"余白"が、暮らしも働き方も、少しずつやわらかく整えてくれた気がします。
そして息子を妊娠・出産。とにかく嬉しくて、息子が4歳になる頃までは、頭の中に小さなお花畑が広がっているような(笑)、モンシロチョウが舞うあたたかい景色の中で毎日を過ごしていました。
社会復帰はゆっくり、できる範囲で少しずつ......と思っていた頃、2020年にヴィーガンフルーツサンド店の内装ディレクションのお話をいただきました。内装だけだったはずのお仕事が、撮影、PRアドバイス、ブランドの方向性づくりへと自然に広がり、気づけばディレクターとして関わることに。その経験をきっかけに、「SO TARTE」「POSH」など、別のプロジェクトにも立ち上げから携わるようになり、新しい世界がひらけました。
振り返ると、私の仕事はいつもご縁に導かれてきたように感じます。自分の意志だけでは見えなかった景色や、誰かとの出会いがそっと背中を押してくれる。そんな流れの中で、今のキャリアが育ってきた気がします。
そして2025年11月からは、紗栄子さんが運営される栃木県大田原市の観光牧場「NASU FARM VILLAGE」のディレクターを務めることに。
ここでは、保護馬・保護猫・保護犬をはじめとした保護動物の活動と、季節ごとの農業が日々営まれています。動物たちの暮らしを守りながら畑を育て、自然とともに循環していく......そんなやさしい営みが広がる場所です。ここでは、遊びに来てくださる皆さまの入場料や、レストランでのお食事代が、そのまま保護動物たちの生活を支える力にもなっています。"楽しむことが、優しさの循環につながる"その仕組みを、私自身とても大切に感じています。
私の暮らしの中心には、いつも息子がいます。
妊娠中、近所に住んでいた姉が娘の小学校受験に励む姿を見て、わが家でも幼稚園や小学校のことを考え始めたのが懐かしい記憶です。
幼稚園受験のために通っていたお教室では、むしろ私自身が子育てを学んでいたように思います。とくに「待つこと」を教わったのが印象的でした。つい、片付けや食事など親がやってしまった方が早い場面でも、子どもが自分の力でやり切るまで見守ること。
そのうえで、できた結果ではなくできるようになるまでの過程を褒める。その積み重ねが、子どもの自信を育てていく。そう実感させてくれました。息子もまだ小さかったので、負担に感じることなく、むしろ親子が楽しみながら幼稚園受験に向き合いました。
そんな息子はいま、都内の私立幼稚園に通っています。朝の送り迎えや、週末ののんびりしたひとときは、出産前の忙しかった時期には想像もできなかった、宝物のような日常です。
母になってから気づいたことがあります。
「仕事」と「家族」と「自分らしさ」のバランスは、ゆるやかに姿を変えていくものだということ。その変化を楽しみながら、家族の時間も、仕事の時間も、どちらも大切にできるちょうどいいバランスを保てたらいいなと思っています。
これからこの連載では、私の働き方のこと、子どもとの時間、そして暮らしの中でふと感じたことについて、少しずつ綴っていけたらと思います。