仏留学でダブルディグリー取得|大学は自分を脱皮させるチャンスに溢れた場
慶大卒業生が語る、自分で人生をデザインする生き方
- 名前
- Louis / ルイ
- 年齢
- 23歳
- お仕事
- パリ政治学院大学院生(24年8月〜)、動画クリエイター
- Info
- 取材・文/門倉奈津子
- URL
- Instagram:Louis @louis.arwd
- URL1
- TikTok : Louisの自由研究 @louisaroundtheworld
【慶大卒業生が語る、自分で人生をデザインする生き方】
子育てにおけるアドバイスや情報は、先輩ママや専門家、もしくは同じような境遇のママ友から得ることが多いと思います。ですが、Birght Choiceは、子どもと年齢の近い若い世代の方々のリアルな経験談や想いからも学べることがたくさんあると考えています。
今回は、この春、慶應義塾大学を卒業し、現在はパリ政治学院での修士留学の準備を進めながら、旅や日常に関する動画を発信し人気を博しているLouisさん(以下ルイさん)さんに、慶應大学でのダブルディグリー・プログラムでの経験やこれからの目標などについてお話を伺いました。
◾️慶應義塾大学へ進学するまで
ルイさんはフランス人のお父様と日本人のお母様のもとに生まれ、日本で育ちました。大学2年生でパリ政治学院に留学するまでに海外で暮らしたのは、お母様の仕事の都合で小学校6年生の時に1年間、半年をフランスのボルドー、半年をニューヨーク・マンハッタンで過ごした経験のみでした。
高校は地元の進学校へ進み、進路を考えた時に慶應義塾大学経済学部がパリ政治学院とのダブルディグリー・プログラムを提供していることを知り、慶應義塾大学を目指すことに。
「それまでフランスに住んだのは半年だけだったのですが、フランス語は喋れましたし、パリ政治学院はエリート校なので、慶應がダブルディグリー・プログラムの提携をしているということに驚いたほどです。だから行けるチャンスがあるなら絶対に行きたいなと思い、慶應を志望しました。塾には模試で利用する以外は通うこともなく、学校の自習室にこもって参考書で勉強しました」とルイさん(以下同)は語ります。
◾️ダブルディグリー・プログラムへの道
慶應義塾大学経済学部に合格し、進学後はサークル活動には目もくれずダブルディグリー・プログラム採用を目指し、選考試験の準備に邁進。
「ダブルディグリー・プログラムの具体的な選考基準はTOEFLのみです。スコア90以上。もちろん暗黙の了解としてGPA3.0を切っていたらアウトです。過去には特例的なケースもあったのですが、それはその学生が他の点で抜きん出て優秀だったからだと思います。僕は大学1年生の時にTOEFLに集中して、95というスコアで提出しました。
選考は、まず慶應の学生部に願書を出し、慶應の学生部・経済学部の先生方など7名ほどの選考員が書類選考の後に面接を行い、人数を絞った後、事実上の確認としてパリ政治学院に『この学生たちを送ります』という形で行います」
選考のための試験がない分、願書の書き方も大事なポイントだったようです。
「願書には決まった形式がないので、すごくベーシックな内容で出す学生もいます。でも、慶應が求めているのはそういう人ではないと思ったので、僕は先輩・OBの方々に片っ端から連絡して、どういう風に書いたかを聞いて、自分が納得できる内容で攻めました。
願書には志望動機などを書きます。これは僕の個人的な見解ですが、パリ政治学院は大学院まで通うことが前提になっている校風なので、大学院進学を視野に入れておいた方がよいと思いました。だから僕も大学院に行って、その後はフランスにある家族単位で経営している、コンビニ的な小さなお店、エピスリーをフランチャイズ化し、ブランドとして立ち上げてフランス版コンビニを作りたいというのを、社会学的にフランス国内の経済格差などにも触れ、都市経済や地勢を大学院でも学ぶことが将来ビジネスを展開するうえで大事なのではないか、といった内容でまとめました」
◾️パリ政治学院への留学で得たメリット
ダブルディグリー・プログラムに合格し、2020年、大学2年生の後期からフランスのパリ政治学院でリベラルアーツを学び始めたルイさん。このプログラムは、慶應義塾大学在学中に2年間パリ政治学院ル・アーブル校に留学し、帰国後は慶應義塾大学の3年生に戻り、計5年をかけて慶應義塾大学経済学部とパリ政治学院のふたつの学位(学士)を取得することができるというもの。
「慶應義塾大学経済学部からの留学だったので、パリ政治学院でも経済学の履修が必須でした。とはいえ修士で深く学ぶのが前提なので、学士では幅広く、浅く学ぶという感じ。だけど単位数も多いし、コミットメント面でも慶應よりもずっと忙しかったです。一学年の人数はとても少なくて150人くらい。学士はフランス国内に6ヶ所くらいあるキャンパスに分かれて学びます。ル・アーブルは、目の前が海、泳いで行けばその先はイギリス、みたいな場所です」
パリ政治学院は、キャンパスでの言語は英語なので、フランス人学生と留学生の割合がほぼ半分ずつというのもひとつの特徴でした。TOEFLの点数もクリアしていたうえ、それまで英語の成績は優秀だったルイさんですが、やはり英語には当初苦労したそうです。
「英語は喋れなかったですね。初めは絶望しました。最初の週の授業は何もわからなくて(苦笑)。正直言うと、日本語でやっても難しい授業を英語でやっていたので。留学して授業から英語を学んだと言うよりは、交友関係から英語を身につけていったという感じです。
留学して得たもの、良かったことは、横のつながりができたこと。150人という環境での2年間って、本当に高校生活よりも密度が濃かったです。そしてそれ以上に、日本を外から見るチャンスが得られたことも大きかったです。フランスに暮らし始めた最初の頃はまだ観光客気分だからフランスのいい部分ばかり見えて、日本はなぜこうじゃないんだろうって思ったことも。だけどある程度住み慣れてくると『フランスあり得ねぇ』みたいなところも見えてきますよね。その結果日本のいいところに気づけたり。日本を外から見る機会を得たことで、日本をより広い視野で捉えることができるようになったと思います」
◾️「日本を仕事にする」という想い
この夏に再度渡仏し、パリ政治学院の大学院でCreative Industry(創造産業)を学び始めるルイさんは、自ら築き上げる将来にも想いを馳せています。
「大学院進学を決める前に、実は少し就活もしました。2年間留学もしたし、社会人になって経済的に自立した方がいいのではないかとも考えて。だけど父にはずっと『オリジナルであれ』と言われ続けていたし、就活していた時期のブレブレだった僕を見ていた母には『地に足をつけて歩きなさい』とも言われて。それに従ったわけではありませんが、就活している途中で自分の中の反骨的な部分が出てきて、『やっぱりこのまま就職するのは自分にはちょっと違うかな』って。
僕には『日本を仕事にしていきたい』という目標があります。それは必ずしも『日本で仕事』ということではなく、『日本を仕事に』なんです。SNSでの発信は日記感覚で適当に始めたものでしたが、自分が一度経験したことを書き起こして動画にすることで、理解としては二重になるんですよね。それで日本にいながら日本のいいところを噛み締めることが多くなって。
現在は旅行系の会社でインターンとして働くほか、海外の富裕層の観光客を案内することもあり、日本の良さ、コンテンツ力の高さを実感する機会が多くあります。日本人ってまだまだ日本の良さを発信するのが得意でない人が多いと思うので、『日本を仕事』にして外に出していけるハブみたいな人間になれたらなというのが直近の想いです。
大学院で学ぶのは、テレビやNetflixのようなネット配信サービスといったプラットフォームのマーケティング、コンテンツビジネスにおけるマーケティング、マネジメントがメインではありますが、大学院が個人のコンテンツ力にもある程度注力しているので、グラフィックデザインの授業もあります。スタジオなども完備されていて、僕自身も自分で何かやりたいという気持ちが強かったので、ここしかないと思って決めました」
◾️大学生活を充実したものにするには
一般的に考えれば、慶應義塾大学に進学し、ダブルディグリー・プログラムでパリ政治学院の学位も在学中に取得して卒業というルイさんの経歴は輝かしく、そのままどこにでも就職できたと思われます。ですがあえてその道は通らずに、海外の大学院へ進むルイさんの選択には、自分で人生をデザインしていくというオリジナリティが感じられます。そんなルイさんが思う、大学生活を意義あるものにするポイントについても伺いました。
「卒業して間もないですし、僕はまだ23歳なので、誰かにアドバイスできる立場にあるとは思っていないのですが...。僕は慶應大学に入学する前、大学に大きな期待を抱いていたので、実際に入学してみると、なんだか思っていたのと違ったというギャップにびっくりしたんですよね。高校生の時は偏差値やネームバリューにすごく捉われていたのかなと思います。
とはいえ、慶應は長い歴史、伝統がある大学で、素晴らしいダブルディグリー・プログラムもあり、慶應から受けた恩恵は計り知れないです。将来、きっと大活躍していくんだろうなという学生ももちろんいるので、そういう人たちと出会えるかどうかで、学生生活の4年間の方向が変わっていくと思います。だから最初が肝心。
日本の高校からそのまま大学に進学する人たちは、偏差値や受験戦争などに頭でっかちになっていて、自分の強みとか、自分は何が得意なのかというのを見つめた機会があまりないと思うんです。僕はラッキーなことに、目に見える外国語(フランス語)という、他の人があまりできないことができたから、僕の強みはやっぱり言語かなと思って、留学もしたいなと自然の流れで思えました。もちろん父親がフランス人だったのもありますが、そういう方向に自分をナビゲートできたのは良かったです。
自分の強みや自分が好きなことを理解しないで大学生活をスタートさせてしまうと、決してそれが悪いわけではないけれど『単調なルート』を進むだけになってしまうような気がします。
大学は時間も資金もコネクションもあるから、それを利用することで脱皮するチャンスに溢れている場だと思うので、それを使わないのはもったいないです。高校時代と大学入学後すぐの間に自分自身のことをもっと理解してみると、花開きやすいのかなと思います。ありきたりだけど、大学4年間、長いようで短いので、自分のやりたいことを考え続けるというのが重要なのではないでしょうか」