アメリカ、カナダ、北欧...成蹊中学・高等学校の多様な海外留学プログラム

Choice

成蹊中学・高等学校の国際理解教育②

名前
仙田 直人
お仕事
成蹊中学・高等学校 校長
Info
取材・文/小嶋 美樹
URL1
成蹊中学・高等学校

「本物に触れる」国際交流~成蹊中学・高等学校の国際理解教育
加速度的に変化をする多様な現代を生き抜くためには、"子どもの個性"を軸に国際感覚を育てることが大切である、とブライトチョイスは考えます。一方で、「子どもには語学や文化の違いを乗り越え、広い世界で活躍できる人間になって欲しい」と願っても、英語力や留学費用など、まだまだハードルが高いのも実情でしょう。

しかし昨今、インターナショナルスクールに限らず、日本の学校においても、国際バカロレアやオールイングリッシュの国際クラス、留学プログラムや海外進学支援など、国際人を育てるためのグローバル教育の選択肢が増えているのです。(参考記事:クラス全員が海外留学!カリキュラムに長期留学がある中高一貫校

そこで今回は、「日本の国際教育の先駆け」といっても過言ではない歴史を持つ、成蹊中学・高等学校の多種多様な海外留学プログラムの内容や、リベラルアーツの一環として行われる現地での授業に関してなど、成蹊中学・高等学校の仙田直人校長にお話を伺っていきます。

「中学・高校と合わせて約150名ほどが参加する本校の留学プログラムは、中学2年生から高校3年生まで参加することができ、語学レベルも、留学期間もさまざまです。そのため、高校から入学してくる生徒や途中編入の生徒など、誰もが参加できる点も特徴のひとつといえるでしょう」

2022年からは、留学先として人気となっているカナダへのターム留学もスタートしました。

「高校1年、2年の生徒が募集対象で、1月からの9週間をカナダで過ごすプログラムとなっています。最初の3週間はバンクーバーの語学学校で研修を行い、その後、郊外の現地校に通います。2023年度には21名の生徒が参加し、1人1家庭のホームステイ先に滞在をしながら、公立校と私立校の5校に分かれて通学しました。

カナダの学校はスポーツアート、テクノロジーなど、選択科目に多様性があることが特徴のひとつですが、本校の生徒たちも、興味関心のある分野を自分で選んで学びます。実際に私が現地の高校を訪問した際にも、本校の生徒がスキーの授業を選択して校内におらず、顔を見ることができなかった、なんてこともありましたよ」

イギリスケンブリッジ大学での3週間にわたるサマースクールのプログラムでは、英国の社会・文化・建築を中心とした視覚芸術などの体験学習も用意されています。

「リベラルアーツの一環として、『その国ならではの体験』ができるよう、このような授業が組み込まれています。もともとケンブリッジの街並みや建築に興味があって参加する生徒もいますが、そうではない子がほとんどです。しかし本校では、受験や将来の進路に直結することだけに目を向けるのではなく、本物の体験を通して、広く教養を学ぶことこそが重要だと考えているのです」

成蹊高校を卒業後、海外の大学や芸術系の学校へ進む生徒も少なくないそう。この進路の幅広さも、多様性と広い教養を大切にする成蹊ならではの特徴ではないでしょうか。また、隔年で実施されている、高校生を対象とした北欧への夏期短期留学プログラムも近年、注目を集めています。

「デンマークとスウェーデンで各1週間、ホームステイをしながら、現地校に通うプログラムです。バスで両国を移動中に絵画を鑑賞する時間も設けています。また、どちらの国も税金が非常に高いのですが、その代わり福利厚生が手厚い国として有名ですよね。そんな国の在り方を体感したり、NATOとロシアの狭間に身を置く同世代の考えを聞ける機会は大変貴重です。さまざまな価値観に触れることで真の多様性を理解することも、留学の意義のひとつではないでしょうか」

さらに成蹊中学・高等学校では、高校生を対象に、全米テンスクールズに名を連ねる「セント・ポールズ校」「チョート・ローズマリー・ホール校」への1年間の長期留学も用意されています。

「『セント・ポールズ校』と『チョート・ローズマリー・ホール校』に関しては、1年の留学期間が終わると、そのまま海外の学校に残って勉強を続けるのか、成蹊高校に復学をするのかを選択することができます。ただ、そのまま残って海外大学への進学を希望する生徒が大半ですね。過去には、そこからスタンフォード大学やドイツの音楽大学に進学した生徒もいました」

上記2校への留学は、募集定員が毎年各1名となっており、希望者には選考が行われます。

「留学先の学校によってはTOEFLの点数基準がある場合があるので、まずはそれを満たしていることが条件です。また、留学先では現地の生徒と同様の授業を受けることになるので、本校での英語の成績も加味しつつ、面接で選考を行っていきます。

ただし、ターム留学や短期留学のプログラムに関しては、できる限り学内の成績基準を低めに設定しています。というのも、日常の生活習慣がきちんと身に付いている生徒で、ある程度の成績基準と面接がクリアできれば、できる限り希望のプログラムに参加させたいと思っているからです。

たとえ英会話が初心者レベルでも、チャレンジしてみようという気持ちが大切です。英語に苦手意識がある生徒でも、自分の意志で一歩外に出てみたことで見違えるように成長して帰ってくることも多いんですよ」

それでも英語力に不安を抱える生徒には、事前に国内における国際理解教育のプログラムに参加して英語力を強化するなどのフォローも手厚くなっています。そのため留学に参加する生徒は、帰国生に限らず、一般生の割合も多いのだそうです。

次回は、成蹊中学・高等学校ならではの海外進学支援や国内留学プログラムに関して伺っていきます。

〈連載概要〉
「本物に触れる」国際交流~成蹊中学・高等学校の国際理解教育
第1回:ボーディングスクールへの留学も! 成蹊中学・高等学校の国際交流
第2回:アメリカ、カナダ、北欧...成蹊中学・高等学校の多様な海外留学プログラム(本記事)
第3回:「中学生・高校生が積極的に挑戦できる」成蹊中学・高等学校の海外留学、進学支援

       
  • カナダの語学学校

  • ケンブリッジ大学で

  • 北欧留学

          
  • ターム留学先のカナダの語学学校での1枚。現地校に通う前の最初の3週間、まずはバンクーバーの語学学校で研修が行われるので、初めて海外留学に挑戦する生徒も安心です。

  • ケンブリッジ大学での夏期短期留学では、同大の大学生・大学院生がPA(Programme Assistants)として同カレッジの宿舎に同宿し、カレッジライフを共に送ってくれます。最も生徒たちの心に残る思い出は、このPAたちとの交流のようです。

  • 北欧への夏期短期留学では、デンマークの首都・コペンハーゲン郊外の私立伝統校「ルンステッド高校」と、スウェーデンの古都・カルマル市にある私立の新設校「カルマーレ国際高校」に通います。こちらはデンマークの生徒との別れを惜しんでいる1枚。