ボーディングスクールへの留学も! 成蹊中学・高等学校の国際交流

Choice

成蹊学園の国際理解教育①

名前
仙田 直人
お仕事
成蹊中学・高等学校 校長
Info
取材・文/小嶋 美樹 
URL1
成蹊中学・高等学校

「本物に触れる」国際交流~成蹊中学・高等学校の国際理解教育
インターナショナルスクールに限らず、今、日本の教育現場でも、国際バカロレアやオールイングリッシュの国際クラス、留学プログラムや海外進学支援など、国際人を育てるためのグローバル教育の選択肢が増えています。(参考記事:クラス全員が海外留学!カリキュラムに長期留学がある中高一貫校

ブライトチョイスでも、変化著しい多様なボーダレス社会を生き抜くためには、"子どもの個性"を軸に、国際感覚を育てることが大切であると考えます。しかし一方で、「未来を担う子どもには、広い世界で活躍してほしい」と願っても、文化の壁や英語力、留学費用など、超えるべき壁の高さに戸惑いを隠せない声が多いのも事実です。

そこで今回は、大正時代より続く帰国生の受入れや戦後間もなく始まった海外留学プログラムなど、「日本の国際教育の先駆け」といっても過言ではない成蹊学園の、歴史ある国際理解教育の実情に関して、成蹊中学・高等学校の仙田直人校長にお話を伺っていきます。

「創立者・中村春二が開いた学生塾をきっかけに1912年に創立された成蹊実務学校を前身とする成蹊学園ですが、帰国生の受け入れの歴史も古く、大正時代から行われてきました。実は私自身も成蹊中学・高等学校の卒業生の1人なのですが、私が在籍した50年前にもすでに帰国生の同級生が何人もいたので、それが当たり前の環境としてありましたね」

国際学級入試を経て成蹊中学校に入学した帰国生の生徒たちは、1年生の間は「国際学級」に在籍します。2年生以降は一般クラスに移りますが、英語の授業で「帰国生英語特設クラス」を選択することもでき、高い英語力を維持することが可能です。

「国際学級のクラス担任はネイティブの教員が担当します。日本と異なる教育環境で育った帰国生は、こうした1年間の適応期間を経て、徐々に日本の教育に馴染んでいくことができるのです。また、90年にわたり帰国生を受け入れてきた本校には、帰国生だからといって特別な目で見られることのない、多様性を認めるダイバーシティの文化が根付いています。そこに居心地の良さを感じる生徒も少なくないようです」

「真の国際人としての感覚と教養を身に付けて欲しい」との願いから、留学制度や国際理解プログラムが充実している点も成蹊中学・高等学校の特徴といえるでしょう。中学2年生から高校3年生までが参加できる留学プログラムには、2週間の短期留学から1年にわたる交換留学まで、さまざまなプログラムが用意されています。

また、留学先の提携校として、アメリカでも有数のボーディングスクールセント・ポールズ校」「チョート・ローズマリー・ホール校」「フィリップス・エクセター・アカデミー校」や、「カリフォルニア大学デービス校(UCD)」「ケンブリッジ大学」といった世界的名門校が名を連ねていることにも驚かされます。

「本校と『セント・ポールズ校』との交流には、今年で75年にもなる歴史があります。アメリカの、いわゆるテンスクールズのひとつに数えられる『セント・ポールズ校』と長きにわたり交流を続けている実績から、10年ほど前に、同じくテンスクールズの『チョート・ローズマリー・ホール校』や『フィリップス・エクセター・アカデミー校』とのプログラムも開始することができたのです。また、UCDへの短期留学がスタートしたのは2014年。こちらは、本校からUCDに進学した生徒が懸け橋となって働きかけてくれたことで実現したプログラムです」

中学3年生から高校3年生までが参加できるUCDへの短期留学は、春休み期間中の2週間、ホームステイをしながらUCD に通うプログラムとなっています。近隣のスタンフォード大学や現地のスタートアップ企業への訪問の他にも、在学中の成蹊卒業生がキャンパスを案内してくれる時間なども設けられているそう。

ただ、成蹊中学・高等学校の国際理解教育の魅力は、こうした世界の名門校への留学プログラムが充実している点だけに限りません。最大のポイントは、本物に触れながら論理的思考を養う「リベラルアーツ」を重視している点にあるといえるでしょう。

「本校の留学プログラムは、単に語学を習得する目的だけにとどまらず、『自分はそこに行き、何をしたいのか』という目的意識を大切にしています。異文化に身を置き、本物に触れる体験を通して、生徒たちの興味関心の幅が広がり、将来のキャリアについて考えるきっかけになるような目的意識が生まれることに重点を置いているのです」

その一環として、外部の留学プロジェクトに関してもできるだけ学内から情報発信をし、場合によっては公欠での参加を認めるなど、生徒たちの好奇心やチャレンジを応援するようにしているそうです。

「昨年度は、文部科学省主催の海外留学促進キャンペーン『トビタテ!留学JAPAN』に応募して採用された本校の高校1年の生徒が、アフリカのガーナに3週間の留学に行ってきました。現地では医療チームと共に支援活動を行い、帰国後にその経験を校内で発表してくれたその生徒は今、『将来は医療の道に進みたい』との夢を、私に語ってくれています」

毎年、年度終わりに開催される留学報告会では、実際に各プログラムに参加した生徒たちの口から直接、体験談が語られるそう。

また、成蹊中学・高等学校では、海外へ生徒を送り出すだけでなく、さまざまな国からの留学生を毎年30名ほど受け入れています。授業やクラブ活動、体育祭から文化祭まで、留学生たちと日々を共に過ごすことで、日常的に国際交流の機会に恵まれる点も、成蹊中学・高等学校の特徴ではないでしょうか。

次回は、長期から短期留学まで、成蹊中学・高等学校の充実の留学プログラムの内容に関して伺っていきます。

〈連載概要〉
「本物に触れる」国際交流~成蹊中学・高等学校の国際理解教育
第1回:ボーディングスクールへの留学も! 成蹊中学・高等学校の国際交流(本記事)
第2回:アメリカ、カナダ、北欧...成蹊中学・高等学校の多様な海外留学プログラム
第3回:「中学生・高校生が積極的に挑戦できる」成蹊中学・高等学校の海外留学、進学支援

       
  • セント・ポールズ校での集合写真

  • UCDでの授業風景

  • トビタテ!留学JAPAN」に参加した生徒も

          
  • 国際学級

  • アメリカのニューハンプシャー州にある世界屈指の全寮制プレップスクールである「セント・ポールズ校」には成蹊高校から毎年、1名の生徒が留学をしています。

  • 中学3年生から高校3年生までが応募できる「カリフォルニア大学デービス校(UCD)」での2週間の春期留学。滞在中には英語でのディスカッションの授業も行われ、プレゼン力を鍛えます。こちらは現地での体験学習中の1枚。

  • トビタテ!留学JAPAN」のプログラムに参加した成蹊高校の生徒は、ガーナに3週間滞在し、医療の届かない貧困地域や田舎のコミュニティで医療ボランティアに参加。マラリアやB型肝炎などの血液検査やバイタルチェックを行ったそうです。

  • 国際学級での週5時間の英語の授業はAll English。ディスカッションやプレゼンテーションを通して高い英語力を維持するだけでなく、英語日誌の課題も出されるので、ライティング力や文法力も身につくそうです。