起業家が学校でも身近な存在に! 変わる教育現場と「動画」からの学び

Choice

創造力を育む「アントレプレナーシップ教育」③

名前
成田 修造
お仕事
起業家・エンジェル投資家
Info
取材・文/小嶋美樹 
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成田修造さんと子育て談義!子どもの創造力を育むアントレプレナーシップ教育
これからの時代を生き抜くための起業家精神を育む「アントレプレナーシップ教育」は、起業家だけでなく、すべての子どもたちに身につけてほしいライフスキルであると、ブライトチョイスは考えます。(参考記事:子どものアントレプレナーシップ教育におすすめの本6選)。自ら課題を発見して解決する能力や、リスクに立ち向かうことで社会の変化に対応して「自分らしく生きる力」を養う精神は、これからの子育てにおいて重要なファクターとなりそうです。

また、岸田内閣が2022年を「スタートアップ創出元年」とし、官民一体となってスタートアップ企業が育つための「エコシステム」の形成に努めると発表。これにより日本では今後、スタートアップが増えることが予想されます。未来を担う子どもたちには、より一層、課題を発見して解決する能力や、リスクに立ち向かうことで社会の変化に対応して「自分らしく生きる力」を養う起業家精神が求められる時代になってくるでしょう。

そこで今回は、ブライトチョイス編集長の佐久間麗安が起業家・エンジェル投資家として活躍し、2児の父でもある成田修造さんにインタビュー。成田さんの人生に影響を与えた出来事や、今後の学校教育に期待することなどに関してお話を伺います。

ブライトチョイス 佐久間:
政府が2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付けました。成田さんはこの動きをどのように感じていらっしゃいますか?

成田(敬称略):
大賛成ですね。起業することやスタートアップでチャレンジすることが、日本でもごく当たり前になる流れを政府主導で作ってくれることに期待しています。起業すること自体は、実は難しいことではなく、誰でもできることです。その先、爆発的に成功することはもちろん容易くありませんが、リスクを恐れずに挑戦する若者たちの数を増やすことが、今後の日本においては重要だと考えます。

ブライトチョイス 佐久間:
日本の学校教育もこれを機に変わっていくのでしょうか?

成田:
すぐに大きくは変わらないかもしれませんが、たとえば起業家が子どもたちの前で講演をする機会が増えたり、授業の中で起業を模したようなグループワークが行われるようになったらいいなと思っています。起業に対して早くから興味を持つ子どもが増えたらいいですよね。

ブライトチョイス 佐久間:
成田さんご自身は、いつ頃から起業に興味を持たれていたのでしょう?

成田:
僕が具体的な人生プランを描けたのは18歳になってからなので、決して早い方ではありません。慶應義塾大学に入学後、たまたま入った起業サークルを通して、さまざまな起業家や経営者の方との出会いのチャンスを得ました。起業への具合的な設計図が思い描けるようになったのは、そこで社会人の方たちから直接、お話を聞く機会が増えてからですね。

また、中国や韓国の学生たちと一緒になって同じイベントを作り上げていくプロセス自体も楽しかったんです。Skypeをつないで夜が更けても夢中で議論したり、ビジネスのプロの人たちに話をとにかくたくさん聴いたり......。そういう経験が今の自分の糧になっています。

ブライトチョイス 佐久間:
成田さんは小学生の頃に剣道や卓球、中学・高校ではバスケットボール部に所属するなどスポーツにも打ち込んでこられたそうですが、大学でも運動系のサークルに入ろうとは思わなかったのですか?

成田:
まったく思わなかったですね。経済学者をしている兄の悠輔が、昔からありとあらゆる分野の本を膨大に読んでいた影響から、僕自身も高校時代にさまざまなジャンルの本を手に取るようになったので、大学で起業サークルに入るような学生とのほうが話が合ったんです。

それに、内向的でアカデミックな兄とは違い、僕はチームスポーツが得意でコミュニケーション能力もあるほうだとの自覚が、中学生くらいの頃からありました。「学者というよりは、ビジネスの道へ進むほうが向いているだろうな」との漠然とした思いもあって、起業サークルに興味が湧いたのだと思います。

ブライトチョイス 佐久間:
自分の特性を早い段階から客観視されていたことや、お互いを高め合える仲間や人生の指針となるような大人たちの出会いが、その後のキャリア形成にプラスに働いたのかもしれませんね。他にも何か、成田さんの人生の設計図に影響を与えたものがあれば教えてください。

成田:
当時、少しずつ出始めていたYouTubeにも影響を受けたと思います。特に印象に残っているのが、米マサチューセッツ工科大学の教授で、メディアラボの副所長も務める石井裕さんが紹介されていた動画です。あまりのインパクトに「自分もこんな風になりたい」と、強く思ったことを覚えています。スティーブ・ジョブズが初代iPhoneを発表した2007年のプレゼンテーションも衝撃でしたね。今でも彼は僕の目標です。

ブライトチョイス 佐久間:
ご自身のお子さんたちとも動画を見ているそうですが、最近のおすすめはありますか?

成田:
アーティストの村上隆さんがYouTubeを始められたので、アート好きな娘には「このおじさん、すごいんだよ。見てみたら?」と伝えました。良い情報が誰の手にも届くところにいくらでも転がっているので、今の子どもたちは恵まれていますよね。

ブライトチョイス 佐久間:
その一方で、情報の取捨選択の難しさも感じます。動画を見せるにあたり、お子さんたちと決めているルールがあったら教えてください。

成田:
我が家では、子どもたち自身が動画を自由にセレクトすることはほとんどなく、僕が「この動画だったら大丈夫」と、選別したものを見せています。12歳ぐらいまではこのスタンスでいくつもりです。

動画との付き合い方の問題はあるにせよ、自宅にいながらして多くの情報を獲得できる現代においては、ある程度のソーシャル性さえ身に付ければ、学校に行かなくたって十分なんじゃないかとさえ思うんです。

ブライトチョイス 佐久間:
親や学校の先生たち以外の大人のサンプルを見せることも、大切な学びのひとつですよね。成田さんは他にも、ご自身の著書『14歳のときに教えてほしかった 起業家という冒険』の中で、「日本の多くの企業が今後、グローバル企業になることだって不可能ではない」ともおっしゃっています。その際に立ちはだかるであろう「言葉の壁」に関しては、どのようにお考えですか?

成田:
英語が流暢に話せないと世界では戦えない」という考え自体が、バイアスなんじゃないかと思っています。英語が苦手でもグローバル企業を作ることは可能なわけで。

これまでの日本企業は、国内市場が恵まれていたがゆえに、海外に打って出る必要がありませんでした。「あえて出なかった」というのが僕の理解です。日本人が最初から海外を見据えて本気でビジネスをしたら、言葉の壁が多少あったとしても、上手くいく企業がたくさん出てくるんじゃないでしょうか。

会社や組織に依存せず自立し、リスクを恐れない「起業家精神」を持った子どもたちが増え、その子たちが世界に打って出るようになれば、日本の未来は明るい、と僕は信じてやまないのです。

〈連載概要〉
成田修造さんと子育て談義!子どもの創造力を育むアントレプレナーシップ教育
第1回:子育てにとって大切なことは?「起業家精神」と「人生の設計図」について
第2回:日子どもの創造力を育むには「親子での実体験」が重要!
第3回:起業家が学校でも身近な存在に! 変わる教育現場と「動画」からの学び(本記事)

〈アントレプレナーシップ関連記事〉
子どものアントレプレナーシップ教育におすすめの本6選

       
  • 中高生におすすめの一冊

  • 子育て世代の親におすすめの一冊

  • 中高生に読んで欲しい1冊として成田さんが挙げてくれた1冊が、カール・マルクス著の『資本論』。「経済とは? 資本主義とは? 50ページ分だけでもいいので、この本を読んだ後でYouTubeなりChatGPTなりで解説を聞いてみるといいと思います。マルクスが正しいとは思えませんが、資本主義という社会構造に、これほどまでに興味と狂気を持って考えていた人がいたんだという事実に触れるだけでも価値があると思います」

  • 米国の実業家で経営学者のクレイトン・クリステンセン著の『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』。多くの人は仕事や家族、自分自身のことを分断して考えがちですが、この本は人生全体をどうマネジメントするかについて示唆をくれます。全ては連続的であり、繋がっています。何か一つに偏らず、素敵な自分らしい人生を歩むための大事な考え方を教えてくれます」