IB全科目満点の学習法と未来を拓くグローバルキャリアの道

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IB全科目満点の学習法とグローバルキャリアの道

名前
oliviaさん
お仕事
マギル大学卒業生
Info
取材・文/秋山藍乃
URL
Instagram @oliviarouxd

世界各地のブリティッシュスクールを経て、国際バカロレア(IB)のディプロマ・プログラム(DP)において全科目で満点(スコア45)という驚異的な成績を収めたオリビアさん。カナダのマギル大学でビジネスを専攻し、MarketingとEntrepreneurshipを学んだ後、現在は日本で新たなキャリアの可能性を模索しています。そんな彼女に、IBでの過酷ながらも充実した学びや、海外大学での学生生活、そして多文化の中で生き抜くための「思考の軸」についてお話を伺いました。

【「どこへ行っても変わらない」教育スタイルが支えに】

----パリ、イギリス、東京、シカゴ、ギリシャ、カナダ......と、非常に多くの国で過ごされていますね。幼少期、言語はどうやって身につけたのですか?

環境は常に変化していましたが、どの国でも一貫してブリティッシュ・スクールに通っていたので、カリキュラムや教育スタイルが同じだったことは大きな助けになりました。
言語については、家庭内でのルールが大きかったです。英語圏にいても、家では母が根気強く日本語で話しかけてくれました。東京にいた頃は日本語の作文教室にも通いました。当時は書くことが苦手でしたが、そこで「自分の意見を論理的に構築して書く」という基礎を日本語で学べたことは、その後のIBや大学での学びにおいて、本当にやっておいて良かったと感じる経験の一つです。


【なぜ「IB(国際バカロレア)」だったのか】

----全科目満点という成績を支えたのは、どんな学習スタンスだったのでしょうか?

意外に思われるかもしれませんが、両親から「勉強しなさい」と言われたことは一度もありません。受験シーズンには逆に「もう遅いから寝なさい」と止められるほどでした。家庭教師もつけたことがありません。
そんな環境で満点を取れたのは、親からのプレッシャーではなく、自分の中に「もっと深く知りたい」というモチベーションがあったからです。AレベルではなくIBを選択したのも、好奇心が旺盛な私にとって、多角的なアングルから物事を考える力が養えるIBが適していたからです。暗記中心の学習とは異なり、「なぜそう思うのか?」を徹底的に言語化するプロセスは、私にとって受験勉強というよりは、知的な冒険でした。


IB学習のリアル。TOK、EEとCAS】

----IBの核となるTOK(知の理論)やEE(課題論文)にはどう取り組みましたか?

TOKは、「私たちが当たり前に『知っている』と断言できる根拠は一体どこにあるのか?」を探求する哲学的な授業です。歴史やアーツなど様々な「知の領域」からアプローチし、頭がモヤっとするような哲学的な議論を繰り返しました。でも、この「正解のない問い」を議論する体験こそが、IBが重視する多角的な視点の基礎になっています。
EE(課題論文)では、興味のあったラグジュアリー・ビジネスをテーマに、カプリ・ホールディングスの買収劇についてリサーチしました。膨大な文献を読み解き、先生との対話を重ねて何度もドラフトを書き直す......。最初は厳しいフィードバックにショックを受けることもありましたが、それを「改善のためのプロセス」と捉え直すことで、IBで求められるアジリティ(柔軟性)を磨くことができました。


----IBで高得点を取るためのコツや、学習の工夫はありましたか?

IBはとにかくタフです。1年目からデッドラインが重なるため、タイムマネジメントは必須スキルです。私はその日のコンディションに合わせて、「今日はこの科目を集中的にやる」と自分でスケジュールを組んでいました。

また、「学習環境の作り方」も重要です。私は部屋にこもってドアを閉めるよりも、あえてダイニングテーブルのような「家族や犬がいて、周囲の気配がある環境」で勉強する方が集中できました。自分にとって何が心地よい学習環境かを知ることは、長丁場を乗り切るための重要なスキルです。

そして、CAS(創造性・活動・奉仕)も、単位のためではなくライフスタイルの一部にしました。例えば、私は料理が好きだったので、自作の料理をインスタグラムで継続的にシェアし続けました。まわりには、スポーツをする子も多かったですね。大きな賞を狙うことよりも、一つのプロジェクトを「2年間継続する」というハビット(習慣)を作ることこそが、人生におけるポテンシャルを伸ばすことに繋がります。


----これからIBを目指すとしたら、特にどんな学生におすすめしたいですか?

「いろんな科目を深く広く学びたい学生」や「海外の大学に行きたい学生」には最適です。IBで鍛えられるタイムマネジメントやエッセイの書き方は、大学入学後の学習と地続きだからです。
DP(ディプロマ・プログラム)で試験を受けるメリットは、大学が求める「学術的な準備ができていること」を証明できる点です。確かに大変ですが、そこで得られる思考のスタミナは一生の財産になります。


【マギル大学を選んだ決め手と、ネットワーキングの極意】

----なぜカナダのマギル大学を選び、何を専攻したのですか?

マギルを選んだ理由は、非常にオープンで多様性に富んでいたからです。実際にキャンパスに足を運び、学生の雰囲気を見て「ここなら自分らしくいられる」と直感しました。
大学ではビジネスを専攻し、MarketingとEntrepreneurshipを学びました。
カナダの大学の良さは、様々なバックグラウンドが混ざり合っているため非常にオープンであること、そして世界中への扉が開かれている点だと思います。


----インターンシップも精力的にされていますが、コツは?

マギルには「Your network is your net worth(ネットワークが価値を決める)」という言葉があり、人との繋がりを重視する文化があります。
私のインターン経験は、大学1年目の夏にパリのカルティエで行ったセールスアシスタントから始まり、翌年にはニューヨークのカルティエでPRのインターン、さらに翌年にはパリのロレアルでの6ヶ月間にわたるマーケティング・インターンにも挑戦しました。ここでは、ロレアル・パリのメイクアップ製品におけるeコマースキャンペーンや、製品開発の現場にも携わりました。
こうしたチャンスを掴むネットワーキングのコツは、「まずは人とのコミュニケーションから始めること」に尽きます。大学主催のイベントには積極的に参加していました。それ以外にも、興味のある方に自分から連絡したり(cold outreach)、次のご縁を紹介していただくことも多かったです。インターンも、すべてこうしたコネクションから繋がったものです。相手を「競合」ではなく「共に高め合う仲間」として捉え、オープンにアドバイスを求め合う姿勢が、私の大学生活を支えてくれました。


【思い描くグローバルなキャリア】

----同世代にはどんな職業が人気ですか?また、オリビアさんのキャリアは?
友人たちの間では、やはりファイナンス、コンサルティング、そしてテック系が依然として人気です。ただ、みんなそれぞれに違った夢を持っていて、スタートアップに挑戦したいという声も聞きます。

私自身のキャリアについては、まだ模索中です。マーケティングやラグジュアリー・ビジネスの世界には深く興味がありますが、特定の国や仕事に定住するというよりは、グローバルな視点を持ち、異なるカルチャーを繋ぐような仕事をしていきたい。今は日本での環境を楽しみつつ、新しいワクワク感を持ってキャリアを広げている最中です。


IB全科目満点という結果を持ちながらも、「まだあまり決めていない」と語る彼女の瞳からは、自らの手で柔軟に未来を切り拓く自信が感じられました。誰かに強要されるのではなく、自ら本に親しみ、マネジメント力と環境作りを味方につけ、人との縁を大切にする。オリビアさんの姿勢は、これからのグローバル人材の理想像そのものと言えるかもしれません。

       
  • 世界を飛び回るオリビアさん一家

  • 家庭内では日本語を徹底

  • ギリシャの高校に転入

          
  • CASでの取り組み

  • マギル大学の友人たち

  • 自らの可能性を広げるインターン経験

  • フランス人の父と日本人の母のもと、世界を飛び回って育ったオリビアさん一家。ホテルビジネスに携わる父、近年アーティストとしても活躍する母、そしてNYUを卒業後テック業界で働きながらアートの分野でも活動する姉という環境で、多様な価値観を吸収したそう。

  • 多忙な海外生活の中でも、家庭内では母が根気強く日本語で語りかけ、日々の会話を大切にしました。英語が公用語となる環境下で、オリビアさんは作文教室にも通い、読み書きの基礎を習得。この家庭での「二重言語教育」が、彼女の論理的な思考力を育む原点となりました。

  • ギリシャのブリティッシュスクールに転入した当初、インターナショナルな学校でありながら生徒の多くがギリシャ人という環境に戸惑ったオリビアさん。休み時間になるとギリシャ語が飛び交う輪の中にいることは、それまでと異なる新しい刺激でした。持ち前の順応性で、次第に溶け込んでいったそう。

  • IBの必須活動であるCAS。オリビアさんは、自身の「料理」という趣味を形にしようと、インスタグラムで創作料理を発信し続けました。単なる単位取得と捉えず、継続的に活動をアウトプットした経験は、社会で生きるために不可欠なプロジェクト遂行のハビットを築くことに繋がりました。

  • ビジネスの研鑽だけでなく、映像制作や写真、絵画などそれぞれにクリエイティブな時間を大切にする個性豊かな面々。互いに本を薦め合い、最近はSubstackで人生の学びを綴るなど、知的な刺激を共有してきたそう。競い合うのではなく、共に高め合う仲間でした。

  • パリのカルティエでのセールスや、ニューヨークでのPRインターン、そしてロレアルでの製品開発。大学時代、オリビアさんは自らコネクションを辿り経験を積み上げました。現在は日本のロレアルでもインターンを継続し、新製品発売に向けたプロジェクトマネジメントを担っています。