グローバル社会で"本当に大切なもの"を見抜く目の育て方

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グローバル社会で"本当に大切なもの"を見抜く目の育て方

名前
Kira Bella(キラ・ベラ)
年齢
25
所在地
広島県北広島町
お仕事
地域活性化事業「Kirameki(煌めき)」創業者 兼 CEO
Info
取材・文/島谷美奈子
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【世界が教室だった少女が語る、ダイバーシティを"当たり前"に育てる方法】
子どもの頃から世界40ヵ国以上を巡り、広島で起業。経営の傍ら、2026年5月にジョンズ・ホプキンズ大学の持続可能エネルギー修士課程を修了したばかりです。多様性への理解、国際水準の確かな学力と、起業家精神を併せ持つキラさんに、Bright Choice読者に向けて、これからの時代を生きる子どもたちへのヒントを伺いました。
用意されたレールをなぞるのではなく、目の前の「好き」と「問題意識」から、自分だけの道をデザインしていく。"ひとまず始めて、走りながら直す"----そんなしなやかでたくましい生き方は、AI時代・グローバル社会を生きる子どもたちが身につけたい「じぶんで幸せをつくり出す力」の、最高のお手本です。全3回の連載で、その源泉をひもときます。

世界40カ国以上を旅したキラさんが、人生の拠点に選んだのは、華やかな大都市ではなく、広島県北広島町という山あいの小さな町でした。「持続可能な国際社会」を考え続けてきた彼女の目に、日本の、そして広島の何が映ったのか。子どもが将来、世界中の選択肢のなかから「本当に大切なもの」を選び取る目をどう育てるか、ヒントを伺いました。
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第2回|なぜ日本、なぜ広島編
【自然と人の中で生きる――アマゾンでの原体験】
bright choice(以下B): 日本にたどり着く前に、人生を決定づけた場所があったそうですね。

Kira(以下K): 17〜18歳の頃に行った、ペルー(アマゾン)です。熱帯雨林への留学プログラムに一人で参加して、その後3カ月間、ペルーを一人旅しました。現地では、教授が営むジャングルの保全プロジェクトに加わって、植林や研究にたずさわったんです。研究者たちが行き交うなかで暮らしながら、「いつか自分も、こういう保全(コンザベーション)を持ちたい。美しい場所で、自然と人の中で生きるのが最高の人生だ」と思ったんです。

B: その感覚が、のちの日本につながっていく。

K: そうなんです。西洋の影響が少なくて、自然との距離が近い土地。その感覚は、のちに日本で出会ったものと驚くほど重なっていました。不思議なものですね。アマゾンで思い描いた「保全」は、形を変えて日本で実を結んだ。私は結局、「文化のコンザベーション(文化の保全)」を生み出していたんだと思います。子どもの頃の原体験って、形を変えて、後の人生にきちんと帰ってくるんですよね。

【「働きながら旅する」18カ月、25都道府県】
B: 日本にゆかりはあったのですか?

K: 血縁も特別な縁も、まったくありませんでした。それでも飛び込めたのは、幼い頃から世界を転々としてきた日々が、新しいことへ踏み出す自信を授けてくれていたからだと思います。2023年6月にワーキングホリデーで来日して、語学学校に通ったあと、18カ月かけて25もの都道府県を「働きながら」旅しました。ベビーシッター、旅館のスタッフ、アイスクリーム作り、果物の収穫、猫の世話......。現場で手を動かしながら、その土地の本当の姿を確かめていったんです。

B: 実際に住んでみて、日本のどこに惹かれましたか?

K: これまで暮らしたなかで、いちばん安全で、食べ物が美味しくて、人が素敵で、言葉が美しくて、自然が豊かで、コミュニティが素晴らしい。ミャンマー出身の母のもとで仏教に親しんで育ったこともあって、日本の仏教や神道にもすんなりとなじみを感じました。何より惹かれたのは、どんな小さなことにも最大の努力を注ぐ、その姿勢です。20代をここで過ごしたら、自分のいちばん良いところを引き出せると思ったんです。だって、みんなが努力を応援してくれて、人の成功まで喜んでくれるんですよ。オーストラリアともアメリカとも違う、その空気が大好きなんです。

【ひょんな縁が、運命の町へと導いた】
B: 広島県北広島町との出会いは?

K: きっかけは、頼まれた「2カ月間の猫の世話」でした(笑)。その町を訪れたら、地域の人たちが私を"養子"みたいに温かく迎え入れてくれて。島根県まで車で10分という山あいの町は、四季がはっきりしていて、スキー場があって、里山に神話が息づいている。観光協会や町長、県の移住・持続可能性を考える担当者と話すうちに、人口減少や過疎への危機感が、私の問題意識とぴったり重なっていることに気づいたんです。同じ課題を、同じ思いで見つめている、と感じたんです。

B: 「神楽(かぐら)」との出会いも大きかったとか。

K: はい。3000年の伝統を持つともいわれる、地域に受け継がれてきた舞です。私はこの神楽に強く惹かれて、地域の活動に積極的に飛び込んでいきました。それ以外のユネスコのイベントやダンスの発表など、招かれたら迷わず参加したんです。受け身で待つんじゃなく、自分から積極的に出向くことで、輪のなかに入れた。よそ者がコミュニティに溶け込む秘訣は、待つことじゃなく、自分から扉を叩くことだと思います。

【広島は「再生の理想形」――子どもに見せたい希望】
B: 広島という土地には、特別な思いがあるそうですね。

K: 世界で唯一、原爆で破壊された場所として、世界中がその名を知っています。多くの人が最初に思い浮かべるのは「とても悲しい」こと。でも、今の広島を訪れると、桜の下で人々がくつろぐ、信じられないほど美しい街になっている。私が深く心を打たれたのは、広島の人たちが憎しみではなく平和を願う姿勢でした。「アメリカ人が嫌いじゃないの?」と聞いたら、「二度と起きないでほしい」と言うんです。

B: まさに、持続可能な国際社会の縮図のようですね。

K: そうですね。すべてが灰になっても、自然と人にはもう一度美しくしていく力がある。地方創生に取り組む私にとって、広島はまさに「再生」の理想形なんです。どんなに酷い状況でも、良くなる可能性は必ずある。それを体感できる場所。子どもたちにこそ、この「希望の実例」を見てほしいと思っています。

B: 子育て中の読者に、メッセージをお願いします。

K: 世界には、ガイドブックの一番上に載るような有名な場所だけが価値あるわけじゃありません。私が40カ国を見て学んだのは、「本当に大切なものは、自分の目で確かめて、自分で選ぶ」ということ。みんなが東京へ行くなかで、私は北広島にいる。でも、ここでしかできない役割があると感じています。だからお子さんにも、たくさんの本物に触れさせて、「あなたはどう感じた?」と問いかけてあげてほしい。みんなが行く方向ではなく、自分が心から「ここだ」と思える場所を選ぶ力こそ、グローバル社会を生きる軸になりますから。

【編集後記】 40カ国を旅した末に、彼女が選んだのは大都市ではなく、広島の小さな里山でした。「みんなが東京へ行くなかで、私は北広島にいる」----その選択は、情報や評判ではなく、自分の五感で「本当に大切なもの」を見抜いた結果です。たくさんの本物に触れ、「あなたはどう感じた?」と問いかける。それが、持続可能な国際社会を生きる子どもの「選ぶ力」を育てるのだと、キラさんは教えてくれます。

▼次回(最終回)は、いよいよ起業の話。AI時代を生き抜く「企業家精神」を、わが子にどう育てるかに迫ります。

【プロフィール】
Kira Bella(キラ・ベラ) 地域活性化事業「Kirameki(煌めき)」創業者 兼 CEO。タンザニア・ダルエスサラーム生まれ、オーストラリア育ち。15歳で単身渡米し、これまでに40カ国以上を旅する。オレゴン大学で環境学を専攻、ジョンズ・ホプキンズ大学で持続可能エネルギーの修士課程を2026年5月に修了。2025年に広島県北広島町で「Kirameki」を立ち上げ、文化継承・地方創生・国際理解の分野で活動。SNSを通じて、日本の里山に息づく文化と人々の魅力を国内外へ発信している。

〈連載記事〉世界が教室だった少女が語る、ダイバーシティを"当たり前"に育てる方法
第1回|生立ち編
インターナショナルな環境で培う、これからの国際理解教育(2026.9.10)


第2回|なぜ日本、なぜ広島編
グローバル社会で"本当に大切なもの"を見抜く目の育て方(本記事)

第3回|起業家精神編:
AI時代を生き抜く"起業家精神"の育て方 (2026.9.24)

       
  • 自然と人の中で生きることが、最高の人生だと知った

  • 手を動かしながら、土地を知っていった

  • 里山に神話が息づく、運命の町

          
  • 神楽が、地域への扉を開いた

  • 志が重なった場所に、居場所ができた

  • 広島が教えてくれた、再生の意味

  • 「17歳で参加した、ペルー・アマゾンの保全プロジェクト。『自然と人の中で生きるのが最高の人生だ』——のちの日本での活動につながる、原体験となった3カ月」

  • 2023年6月に来日。18カ月かけて25都道府県を『働きながら』旅した。手を動かしながら、日本の本当の姿を確かめていく

  • 島根県まで車で10分の山あいの町・北広島町。四季がはっきりし、里山に神話が息づく、彼女が『運命』を感じた場所

  • 3000年の伝統を持つ伝統芸能『神楽(かぐら)』。招かれた場には迷わず参加し、自分から地域に飛び込んだことで、コミュニティの一員に

  • 『抱いている問題意識が私とまったく同じ』——地域の人々が彼女を"養子"のように迎え入れた

  • 『再生』の理想形——どんな状況からでも、良くなる可能性は必ずあると教えてくれる場所