AI時代を生き抜く"起業家精神"の育て方

Choice

ジョンズ・ホプキンズ大学院修了|起業家として子ども達に伝

名前
Kira Bella(キラ・ベラ)
年齢
25
所在地
広島県北広島町
お仕事
地域活性化事業「Kirameki(煌めき)」創業者 兼 CEO
Info
取材・文/島谷美奈子
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【世界が教室だった少女が語る、ダイバーシティを"当たり前"に育てる方法】
子どもの頃から世界40ヵ国以上を巡り、広島で起業。経営の傍ら、2026年5月にジョンズ・ホプキンズ大学の持続可能エネルギー修士課程を修了したばかりです。多様性への理解、国際水準の確かな学力と、起業家精神を併せ持つキラさんに、Bright Choice読者に向けて、これからの時代を生きる子どもたちへのヒントを伺いました。
用意されたレールをなぞるのではなく、目の前の「好き」と「問題意識」から、自分だけの道をデザインしていく。"ひとまず始めて、走りながら直す"----そんなしなやかでたくましい生き方は、AI時代・グローバル社会を生きる子どもたちが身につけたい「じぶんで幸せをつくり出す力」の、最高のお手本です。全3回の連載で、その源泉をひもときます。

広島の里山で会社を経営しながら、2026年5月にジョンズ・ホプキンズ大学で持続可能エネルギーの修士課程を修了したばかりのキラさん。実は彼女、25年間「国連で働く」という夢を描き続けていました。その計画を手放してまで起業に踏み切ったのは、なぜか。AI時代を生き抜く「起業家精神(アントレプレナーシップ)」を、家庭でどう育てるか、ヒントを伺いました。
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第3回|起業家精神編
【25年間の夢を手放して、起業家になった理由】
bright choice(以下B): もともとは起業家志望ではなかったとか。

Kira(以下K): そうなんです。国連職員の父を見て育ったので、自分も当然、国連で働くものだと思っていました。専攻もそのために選んで、「応募すれば務まる」という自信もあった。25年間、ずっと抱き続けた人生計画でした。でも、世界を旅して、地政学や国際情勢を深く学ぶうちに、その確信が揺らいでいったんです。「国連は、本当に世界を良くできているのだろうか」、たとえ高給を得ても、待っているのはオフィスの一画でのデスクワーク。誰かの役に直接立てる実感は得られない----その現実に、失望していきました。

B: 大きな方向転換ですね。

K: 2023年から24年にかけて、25年間抱き続けた計画が崩れたんです。正直、怖かった。でも、そのとき気づいたんです。唯一信じられるのは、自分の手でつくるものだけだ、と。アイデアを語るだけでは、夢のまま。登記して、顧客がついて、お金が動いたとき、初めて現実になる。完璧な準備を待っていたら、その市場は消えてしまう。それが私の出した答えでした。

【「橋になる」――地域にお金を循環させるビジネス】
B: 立ち上げたのが、地域活性化事業「Kirameki(煌めき)」ですね。

K: はい。事業の核にあるのは、「橋になる」という理念です。自分でゲストハウスをたくさん作るのではなく、空き家や既存の宿、地域の資源を活かして、旅行者と地域の暮らしをつなぐ役割に徹する。私は「トラベルデザイナー」を名乗っていますが、地域のゲストハウスには当初の提示額より多く支払い、自分は旅の企画や手配を担う対価を受け取る仕組みにしています。使うお金は、ぜんぶ町に落ちる。経済の活性化につながるんです。国連が達成したかった影響力を、もっと直接的に、もっと倫理的に実現できると手応えを感じています。

B: 「持続可能な国際社会」を、足元の地域から実践している。

K: そう言っていただけると嬉しいです。透明性を倫理の軸に据えて、町で唯一の英語ネイティブとして、マーケティングから案内、伝統行事の語り部まで、全て自分で担っています。

【14歳からの貯金が、起業の扉を開いた】
B: 起業の元手は、ご自身で?

K: 14歳から働き続けて貯めた、約500万円です。これが、当時の経営・管理ビザに必要な資本金とちょうど一致していました(その後、法改正で要件は引き上げられています)。日本での会社設立は、日本人でも「めんどくさい」と感じるほど煩雑で、第二言語で挑む私には最大の難関でした。でも「正しいことをしていれば、日本は寛容だ」と信じて、貫いたんです。

B: そして、すぐに動き出した。

K: 私の考え方は「ひとまず始めて、フィードバック(もらった声)から修正していけば良い」。2025年2月に合同会社を立ち上げて、わずか10日後の2月10日には、もう最初のお客さんを迎えていたんです(笑)。料金も固まらないうちから、来る人みんなを受け入れて学びに変えて、翌年にはプロとしてきちんと整った形まで、一気に育てていきました。最初の目標は「3年で500万円」でしたが、実際には1年で1000万円を売り上げました。お金に集中しすぎると本質を見失う可能性があるので、あくまで「これは私の赤ちゃん」という気持ちで、外部資本に頼らず自分でオーナーシップを握り続けています。

B: お子さんに「起業家精神」を育てたい親は、何から始めればいいでしょう?

K: 完璧主義を、少しだけ手放すことだと思います。「ちゃんと準備できてから」ではなく、「ひとまずやってみて、うまくいかなかったら直す」。この小さな試行錯誤の繰り返しこそが、AI時代にいちばん必要な力です。AIが答えを出してくれる時代だからこそ、「自分で問いを立てて、行動して、修正する」人間の力が際立つ。失敗を責めずに、「次はどうすすめる?」と一緒に考える。それが家庭でできる、最高の起業家精神を育てる教育だと思います。

【肩書きが扉を開き、学び続ける姿勢が信頼をつくる】
B: ジョンズ・ホプキンズ大学では、持続可能エネルギーを学ばれていたそうですね。

K: はい、修士課程を2026年5月に修了したばかりです。経営をしながらの学業はハードでしたが、走り抜けました(笑)。起業して気づいたんですが、「CEO」や「創業者」という肩書きを持つだけで、人は"成功している"と見てくれる。それでネットワークも機会も広がるんです。億万長者じゃなくても、肩書きと、差し出せる何かを持つことは、何も持たないよりずっといい。ジョンズ・ホプキンズ大学の学位という「確かな信頼性」を、現場の実績と掛け合わせていきたい。次の目標は、TEDの舞台に立つことです。

B: 学び続けることが、信頼の土台になっている。

K: そう思います。国際水準の学力は、世界中どこでも通用する"パスポート"のようなもの。それがあるから、私は山あいの町からでも、世界とつながっていけるんです。

【めざすのは「女性が文化を継ぐ」未来】
B: これからの展望を教えてください。

K: いちばんの課題は、「自分がもう一人いてくれたら」と思うこと(笑)。日本語が話せて、コミュニティに溶け込めて、ホスピタリティがあって、物語る力があって、農業もできて、運転もできて、世界中の人を愛せる----そんな人材は、なかなかいないんです。でも、転機がありました。ハーバード大学で地方創生を学ぶ、日米ハーフの学生・ユカさんとの出会いです。ユカは、私が描いていた理想の人。彼女と一緒に、ゆっくり事業をスケールしていく計画です。文化やホスピタリティ、地域運営、ストーリーテリングを、次の世代へと受け継いでいきたいんです。

B: 最後に、子育て中の読者へメッセージをお願いします。

K: 私にとっての「豊かさ」は、お金の多寡じゃありません。北広島で自分のトマトを育てている私は、ジェフ・ベゾス(アマゾンの創業者)と同じくらい安全で豊かだと感じています。50隻目のヨットより、地域に深く愛される生き方のほうが、ずっと満ち足りている。町から深く愛されること、持続可能な暮らし、仲間が心地よく働けること----それが揃ってこそ、豊かなんです。世界全体を直そうなんて思ったら、押しつぶされてしまう。だから私は、自分の足元の小さな円から、善いことを少しずつ広げていく。お子さんにも、ぜひ伝えてあげてください。「成功は、誰かと比べるものでも、誰かを蹴落とすものでもない。自分の手の届く範囲を、少しずつ良くしていくことなんだよ」って。

【編集後記】 25年来の夢だった「国連」という安定したレールを手放し、自分の手で事業を築いたキラさん。その原動力は、"ひとまず始めて、走りながら修正していく"という起業家精神でした。AIが答えを出す時代に際立つのは、「自分で問いを立て、行動し、修正する」人間の力。失敗を責めず「次はどうすすめる?」と問いかける----家庭でできる、最高の起業家教育のヒントが、彼女の生き方には詰まっています。


【プロフィール】
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Kira Bella(キラ・ベラ) 地域活性化事業「Kirameki(煌めき)」創業者 兼 CEO。タンザニア・ダルエスサラーム生まれ、オーストラリア育ち。15歳で単身渡米し、これまでに40カ国以上を旅する。オレゴン大学で環境学を専攻、ジョンズ・ホプキンズ大学で持続可能エネルギーの修士課程を2026年5月に修了。2025年に広島県北広島町で「Kirameki」を立ち上げ、文化継承・地方創生・国際理解の分野で活動。SNSを通じて、日本の里山に息づく文化と人々の魅力を国内外へ発信している。

〈連載記事〉世界が教室だった少女が語る、ダイバーシティを"当たり前"に育てる方法
第1回|生立ち編
インターナショナルな環境で培う、これからの国際理解教育(2026.9.10)


第2回|なぜ日本、なぜ広島編
グローバル社会で"本当に大切なもの"を見抜く目の育て方 (2026.9.17)


第3回|起業家精神編:
AI時代を生き抜く"起業家精神"の育て方 (本記事)

       
  • 地域と旅人の間に、橋を架ける

  • 町に循環する、旅の仕組み

  • 志を同じくする仲間と、次へ

          
  • ”学び”が世界へのパスポートになる

  • 町でひとりの英語話者が、世界への窓になった

  • 豊かさを、自分で定義できる人へ

  • 2024年2月に立ち上げた地域活性化事業『Kirameki(煌めき)』。空き家や既存の宿を活かし、旅行者と地域をつなぐ"橋"になる事業

  • 『トラベルデザイナー』として、旅行者に地域の本物を届ける。使うお金は、すべて町に循環する仕組みを設計した

  • ハーバード大学で地方創生を学ぶユカさんと出会い、二人で事業をスケールしていく予定

  • 広島で経営しながら、ジョンズ・ホプキンズ大学の持続可能エネルギー修士課程を修了。国際水準の学力が、山あいの町から世界へつながる"パスポート"になる

  • 町唯一の英語ネイティブとして、マーケティングから案内、伝統行事の語り部まで一手に担う。透明性を倫理の軸に据えた経営

  • 『北広島で自分のトマトを育てている私は、ジェフ・ベゾスと同じくらい豊か』——彼女が定義する、新しい時代の"豊かさ"のかたち