シリコンバレーのホームスクーリング事情:子どもを伸ばす「解き放つ力」

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シリコンバレーのホームスクーリングファミリー

名前
マリア・ベラルディ
家族
3人(7歳男の子)
所在地
カリフォルニア州

子どもの将来が心配なあまり、"最低限のスタート地点に着かせなければ"と、躍起になってはいませんか? 特に、得手不得手がハッキリした子どもには「苦手科目があってはダメ」と、焦って無理強いをしがち。でも、子どもは、ひとりひとり違います。同じ環境で教育を受けても、その効果もまた、ひとりひとり違うのです。子どもの個性が多様であるなら、教育にも多様性があっていいはず。前回記事でお伝えしたように、アメリカでは3%前後の子どもが、既存の学校には通わず、家庭学習=ホームスクーリングを実施しているといわれていて、中にはギフテッド(先天的に突出した様々な能力・才能を持つ人)も少なくありません。教育の最前線をいくシリコンバレーの自宅でホームスクーリングを実践するロベルト君も、そんな子どもの1人。ギフテッドである一方で学習障がいも抱えているため、ママのマリアさんは「個性の強い息子をどう導いたらいいか......。悩みましたが、必要なのは、既成概念に捉われず、個性を解き放つことでした」と、ホームスクーリングの体験を語ります。

〈連載概要〉シリコンバレーのホームスクーリング事情
1. 学校に行かない教育法とは?アメリカのホームスクーリング最新事情を解説
2. シリコンバレーのホームスクーリング事情:子どもを伸ばす「解き放つ力」(本記事)

       
  • ボードゲームで“勉強中”のロベルト君

  • 大好きなコミックスも教材に

  • 時間割には化学やラテン語のオンライン授業も

          
  • 両親と歴史博物館を訪れるロベルト君

  • マシュマロを使って原子構造を学ぶ

  • ピクニックでも、大好きなコミックスを読む

  • 3歳から日本に滞在し、インターナショナルスクールに通っていたロベルト君。しかし帰国の際、ギフテットである一方で「ステルスディスレクシア」(読めるけれど書くのが難しい)という学習障がいがあると診断されます。そこで、地元の学校には行かず、ホームスクーリングを選択することに。

  • ホームスクーリングをする上でマリアさんが重視したのは、弱点を克服することよりも、自分で選び、自分で学習する力をつけること。実際にロベルト君の教材は、彼が自分で選んだコミックス(グラフィックノベル)だったり、ボードゲームだったり。好きなことを、好きな方法で学ばせます。

  • ロベルト君の“学校”は朝8時、好きな本を読む「朝ご飯と本の時間」からスタート。続いて、数学や作文などのオンラインや家庭教師の授業。その後はちょっとした遠足に行ったり、実際の授業に参加したり。「子ども自身に選ばせ、その後はある程度“放っておく”のがポイント」とマリアさん。

  • 勉強法は実に多様。たとえば、ロベルト君が一番好きな歴史は、週に1度、スタンフォード大学に通って先生と討論するクラスに参加しています。お題は「この週に勉強した中で一番興味深かったこと」から、ロベルト君自らがチョイス。問題集はやらないし、教材は自分で選んだ本や動画です。

  • 化学のオンラインクラスでは、自宅のマシュマロを使って原子構造についての実験をしたことも。まだ7歳ですが、中学校レベルの内容の化学も楽しく勉強しています。これは「スパイラル学習」と呼ばれる方法。成長過程で同じ項目に何度も出会うことで、“本物の知識”の体得を目指します。

  • 「ホームスクーリングには“既成概念に捉われずに子どもを解き放つ”という、親の努力が必要。集中出来ることなら、子どもは自由に伸びていきます」とマリアさん。実際、ロベルト君はコミックスを通じて得た知識で、全米歴史コンテストの出場資格を得るまでに。自分で学ぶ力、ついています!