「静岡あたらしい学校」の食育は食べるだけじゃない。"食"は万能の学習ツール。

Choice

特定非営利活動法人 静岡あたらしい学校

所在地
静岡県静岡市葵区牛妻2290
URL
静岡あたらしい学校HP

既存の学校教育とは異なる新たな学びの選択肢として注目される「オルタナティブスクール」。前回の記事でご紹介した「静岡あたらしい学校(小学部)」〈以下「あた小」〉では、子どもの内側から湧き出る学びの意欲を引き出すため、徹底して"現場・現物・現実"を重視した教育をめざしています。

あた小の日々のカリキュラムは、子どもたちが自ら考えて行動する"実践型学習"が中心。代表の酒井田愛香さんによれば、なかでも最近、特に力を入れているのが"食"を通じた学習だそう。「"食"についての学びは、幅広い学習につながります。調理や栄養に関することはもちろん、食の背景には文化や歴史がありますし、献立決めは計画性やコミュニケーション能力、計算力を養う訓練にも。2019年度は日々の昼食もひとつの学びと捉えて、献立から簡単な調理や配膳、片づけなど、子どもたちに主体的に活動してもらいました。」

その他、年に数回は特定の食材を取り上げて特別授業を実施することも。ちょうど取材日には、「お餅」をテーマにした学習が行われていました。今回は、昼食時間とお餅の授業の様子をご紹介します。

       
  • 毎日の昼食は“シェフ”がリーダー

  • みんな食べることに夢中!

  • 旧正月にはお餅つきを実施

          
  • 様々な工程を自分たちで体験

  • この日は“お餅ドーナツ”作りに挑戦!

  • 調理の後は率先してお掃除する子も

  • 昼食は、週ごとに交代する“シェフ”役の子が監督するルール。献立決めから任されますが、自分の好きなメニューを提案しながら、偏食の子のために具材を後乗せにしたり、低学年の子も食べやすいカレーを取り入れたり。みんなに喜んでもらうために意見を取りまとめる過程も、貴重な学びに。

  • この日の献立は、自分たちでついたお餅を使った力うどん。具材を取り合うこともなく「肉は何枚ずつ?」「おかわりしていい?」と疑問点はシェフに尋ねます。おかわり希望者が多い時は「じゃあ1年生に譲ろうか」という上級生の呼びかけも。マナーのよさや思いやりも自然と育まれていました。

  • 旧正月には、ゲストティーチャーを招いてお餅つきを実施。事前学習では江戸時代の旧正月の過ごし方を学び、静岡名物・安倍川餅の工場見学にも。お餅にまつわる歴史や文化を勉強した他、お餅つきの手順や味つけのバリエーションを習ったそう。お餅の学習はこの後も数回に分けて行われました。

  • お餅つきは、全員分のもち米の分量を計算して買い物に行くところからスタート。さらにもち米を浸水させて蒸し、お餅をついて丸めるところまで、みんなで様々なプロセスを体験したそうです。

  • お餅の学習では“姿を変える食材”という特徴にもクローズアップ。米から餅への変化とともに、焼く・茹でる以外の調理法を研究していました。取材日には、お料理上手なひかりちゃんが提案した、お餅ドーナツの調理実習が。ひかりちゃんは、得意分野を通してリーダーシップも学んでいました。

  • 調理の時間が終わると誰に言われるでもなく掃除を始める子どもたちも。掃除当番はありませんが、“きれいな部屋で勉強すると気持ちいい”と気づいた子たちが自主的に行っているそう。テキパキ掃き掃除をする様子は、楽しそうにも見え、下級生も自然と真似したくなるようです。