STEAM、ギフテッド教育も充実。個性を伸ばすアメリカの公立学校

Choice

アメリカ公立学校に見る、教育の多様性①

名前
小山達樹
家族
4人 (15歳と12歳の男の子)
所在地
テネシー州ウィリアムソン・カウンティ
お仕事
ヴァンダービルト大学教授(医療統計学)

【連載: アメリカ公立学校に見る、教育の多様性①】
世界の大学ランキング・トップ100校のうち、大多数をアメリカの大学が占めています。STEAM教育など時代のニーズに合った先端教育が実施された結果、ビジネス界に於いても数々のイノベーションが生まれ、私たちのライフスタイルに大きな変化をもたらしました。

これまでブライトチョイスでは、主にシリコンバレーの教育に注目し、STEAM教育を取り入れた私立学校や、ホームスクーリング事情について紹介してきました。
プログラミングアートスポーツといったアメリカ個性豊かで新しい教育観にばかり目が行きがちですが、実はアメリカ社会の根底にあるのは、根強い学歴主義と格差社会です。

子どもの将来にとって教育が非常に重要なファクターであることはもちろんですが、アメリカの公教育の場合、各州で学区が細かく細分化され、学区ごとに独立した予算やカリキュラムを元に公立学校が運営されているため、地域によって教育水準に大きな隔たりがあるのです。また、それによって深刻な学力格差が生まれていることも無視できません。

優良学区では、サイエンスやロボティクスを始めとするSTEAM教育のクラスや、学力の高い生徒に向けた特別教育プログラムが充実しています。日本の公立学校では、公平性や平等な機会を設けることに重きが置かれますが、アメリカの公立学校では、特に優良学区の学校ほど、子どもそれぞれの個性や得意を伸ばすような選択制の教育プログラムが充実しているようです。

コロナ禍をきっかけに、いま日本の公教育でも、1クラス40人規模の一斉授業の教育スタイルから学生1人1人の学力ニーズへの対応が求められています。

そこで今回ブライトチョイスでは、アメリカの中でも教育の多様性に富んだ公立高校に通い、特に数学で優秀な成績を修める日本人生徒のご家庭を紹介します。

テネシー州ブレントウッド市の公立学校Brentwood Middle Schoolを今年5月に優秀な成績で卒業した小山泰河くんは、今学期からは隣接するBrentwood High Schoolに通っています。STEAM教育プログラミング、ロボティクスなど、AI時代を生きる子どもたちにとって数学はリベラルアーツの中でも非常に重要な教科ですが、泰河くんは特にこの数学で学年トップの成績を修め、卒業時となる8年生の年度末には7つもの賞を受賞、表彰されています。

中でも、全米数学コンテスト8(AMC8)では25問全問正解という、学校内で最も良い成績を修めたことで表彰されました。その他、学年で一番成績が良かった生徒に贈られるトップ・スカラー、学年トップ10、総合点が93パーセント以上の生徒に贈られる賞、ロボティクスの授業と科学の教科の成績優秀者に贈られる賞、皆勤賞も受賞し、数学以外の分野でも大変優秀だったことが伺えます。

ナッシュビルのヴァンダービルト大学で医療統計学の教鞭を執られている父親の小山達樹さんも高校生の頃に渡米し、カリフォルニア大学バークレー校を卒業しています。意外なことに、ご家庭で数学の英才教育を施したということはないと言います。

「本人も数学は好きなようですが、特に家庭で勉学のサポートをしたことは特にありません。幸いなことに泰河は子どもの頃から周りに比べて勉強が出来たので、本人が良い成績を取ってくることに強いこだわりを持っているのだと思います。テストはすべて満点でなければならない、という完璧主義者なんです」

「決して教育熱心な家庭ではない」と謙遜される小山さんですが、家を建てられる際、テネシー州でも教育水準がトップレベルとされるウィリアムソン・カウンティにあるブレントウッド市を選ばれました。この学区はいわゆる富裕層エリアで、泰河くんの通うBrentwood Middle School & High Schoolの生徒も、生徒の9割が白人で多様性に欠ける部分もあります。しかしながら、公立学校の中ではアメリカ国内でも珍しい、アカデミックな教育を重視する進学校スタイルの学校ということで高い評価を得ているのです。

「宿題を含む、日常の学習から全てを100点満点の点数ベースで評価されます。その点数で学期末の成績が決まるのですが、先生が全ての点数を細かくオンラインに入力してくれるので、保護者は子どもの成績を全て把握することが出来るんです」

そう小山さんが仰る通り、優良学区の公立学校の場合、家庭での学習サポートや塾通いをせずとも学力が高まるシステムがしっかりと構築されています。

Brentwood Middle Schoolで泰河くんは、IEPコース(Individual Educational Plan: 特別教育)やAPコース(アメリカ式高大接続の早期履修プログラム)、数学の飛び級授業等を受講しています。アメリカの優良学区の公教育に於いては、日本のインターナショナルスクールや私立学校顔負けの教育プログラムを享受することが出来ます。更に、子どもの長所を伸ばすギフテッドや特別支援教育、アート教育など、多様な教育ニーズに応じているのも大きな特長です。

次回記事では、泰河くんが受講されたコースやプログラムの履修内容と共に、成績を伸ばしてこられたライフスタイルについて紹介します。

〈連載概要〉STEAM教育、ギフテッド教育、特別支援、飛び級コースなど、子どもの多様なニーズに応えるアメリカの公教育の実態をお伝えする、小山さんファミリーの体験記はこちらより
アメリカ公立学校に見る、教育の多様性

       
  • アメリカで子育てされてきた小山さんファミリー

  • ITやアプリの充実した学習環境が子どもを伸ばす

  • 自分のチカラで手に入れた、数々のトロフィー

          
  • 全米クラスのコンテストでの実績も

  • ご家族で外食された時の小山さんご一家。右から泰河くん、お母様の真理さん、次男の慶悟くん、お父様の達樹さん。ご家庭では日本語で会話されているそうですが、兄弟間では主に英語でコミュニケーションを取っているそうです。

  • ご両親が子どもの成績を確認できるアプリが導入されており、宿題の提出状況から内容の完成度、試験の結果や内申まで保護者が細かく把握することが可能です。

  • ミドルスクールの卒表時に学校から表彰された数々の賞の楯に加え、アメリカ数学協会(MAA)主宰の大会で1位を獲得した際のトロフィーや賞状が、泰河くんの優秀な成績と輝かしい受賞歴を誇っています。

  • 数々の証書が、泰河くんがミドルスクールで学年1位の成績を修めたことや、アメリカ数学コンテストでも1位を獲得したことを示しています。