【港区議やなざわ亜紀さんが港区在住ママエディターと対談。港区グローバル人育成教育の最新事情】
（前編）

インターナショナルスクールに限らず、今、日本の教育現場でも、国際バカロレアやオールイングリッシュの国際学級、留学プログラムや海外進学支援など、国際人を育てるためのグローバル教育の選択肢が増えています。（参考記事：クラス全員が海外留学！カリキュラムに長期留学がある中高一貫校）
ブライトチョイスでは、多様性を生きる子どもたちにとって、国際感覚を育てることが大切であると考えます。
しかし、文化の壁や英語力、留学費用など、日本人の子育て層にはハードルが高いと感じる方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、区立小中学校への国際科や国際学級の設置、海外修学旅行や海外派遣などの国際理解教育プログラムを導入する港区の国際人材育成事業について、港区議会議員やなざわ亜紀さんにインタビュー。区議として、また2児の母親として、子ども・子育て支援や教育に取り組んできたやなざわさんと、ブライトチョイスの港区在住ママエディターたちが、港区の国際理解教育の今とこれからについて対談しました。


エディターS（以下S）：
港区の国際理解教育の1つに、国際科による英語の授業がありますね。子ども達の英語力向上の成果はいかがでしょうか。

やなざわさん（以下敬称略）：
港区の公立校は、文部科学省から教育過程特例校として指定を受けており、英語の教育に力を入れています。平成18年度から小学校8校で、平成19年からは全校で、教育課程に「国際科」が導入され、小学校1年生からネイティブティーチャーによる英語の授業が行われています。令和5年度には、区立中学校の３年生の生徒向けに、大学受験のスピーキングテストに対応するための『放課後オンライン英会話教室』が始まりました。毎年行われる全国学力テストでは、港区の子どもたちの成績は全国でもトップレベルで、平均より10ポイント上回るなどの成果が出ています。さらに令和6年度からは、区立幼稚園へのネイティブティーチャーの派遣も始まりました。今後は、保育園にも導入されていくと思います。

ブライトチョイス エディターA（以下エディターA）：
港区は、英語教育に熱心なご家庭が多い印象があります。英語教育の実践の場としては、区立小中学生が応募できるオーストラリアへの海外派遣制度がありますね。娘は私立の小学校に通っているので、羨ましいと思いました。

やなざわ：
小中学生海外派遣制度は、平成19年に開始されました。夏休みを利用して、小学生40名がオーストラリアのシドニー、中学生40名がパースに約10日間ホームステイし、現地の学校に体験入学しています。英語ができるできないに関わらず、論文や自己PR動画による選考を経て、意欲のある子ども達が選ばれて参加しています。旅費等の経費は港区が負担するため、私費留学と比べてかなり費用が抑えられるということもあり、大変人気のプログラムです。私立やインターに通う子ども達も公平に応募できるようになると良いのですが、学校の先生方が引率する事情で、今は公立生のみの募集です。

ブライトチョイス エディターS（以下エディターS）：
実際に海外に出て、現地の方々の生活や文化に触れると子どもたちの世界はぐんと広がりますからね。区立中学校のシンガポール修学旅行も、ニュースに取り上げられ話題になりましたね。

やなざわ：
オーストラリアへの海外派遣制度が大変人気で、参加できない子ども達が増えてきてしまったという背景もあり、区立中学校のシンガポール修学旅行が始まりました。海外旅行が初めてという生徒も多く、生きた英語に触れることで、『もっと英語を話せるようになりたい』、『もっと色々な国に行ってみたい』等、ポジティブな意見が多く聞かれました。

エディターA：
平成24年度には東町小学校に国際学級が開設され、公立小学校でもインターナショナルスクールのような環境で学校生活が送れるということで、越境希望者が殺到した時期もありました。現在は、東町小学校と南山小学校に導入されていますが、10年経って学校の様子はいかがでしょうか。

やなざわ：
東町小学校や南山小学校の国際学級は、各学年に1クラスずつ設置され、国算以外の教科は日本人の先生とネイティブの先生の2人体制で授業を行っています。現在、東町小学校の国際学級には12名、南山小学校には24名の子どもたちが通っていて、国籍はアメリカ、オーストラリア、メキシコ、中国、イラン、シリア、ウクライナ等、様々です。元々は区内の外国人在住者のニーズに応えるために始まった施策ですが、結果として日本人の子ども達にとっても、英語に触れる機会が増えたり、多国籍な環境で過ごせるというメリットが生まれています。他にも、笄小学校や麻布小学校、六本木中学校には日本語学級を導入しており、在日外国人の子どもたちも安心して学校生活が送れるような支援をしています。運動会や学芸会等のイベントも、国際色豊かな雰囲気で楽しそうですよ。

エディターA：
国際学級に在籍している娘のお友達（日本人）が、ロシア人とウクライナ人が同じクラスに在籍していた時の印象的なエピソードを聞かせてくれました。ロシアとウクライナの戦争が始まったとき、２人の仲が少し悪くなってしまったそうなのです。その様子を見て、戦争は遠いどこかの国の無関係な話ではなく、今自分たちが生きているこの世界で起きているのだと実感したと言っていました。子どもの頃に、その感覚を肌で感じているかどうかというのは、その後の子どもの行動力に大きく影響するでしょうね。

やなざわ：
他に、港区らしいことと言えば、給食に色々な国の料理が出るんですよ。ワールドカップやオリンピックがあると、対戦国のメニューが出ることもあります。給食だよりにその国の風土や食文化の説明が書いてあって、親子で楽しめますよ。

エディターS：
給食のように「楽しい」ことを入り口に、海外の文化に興味が持てるのは良いことですね。大使館が多く、国際色豊かな港区らしい公立小学校の特徴だと思います。

やなざわ：
区内の大使館を訪問して、各国の大使の方と触れ合う学習活動も行っています。大使の方に来ていただいてお話を伺ったり、また大使館を訪問して茶道や独楽などの日本文化を紹介する機会を年に数回全校で設けています。

エディターS：
港区なら国際交流の機会は、持とうと思えばいくらでも持つことができますね。区のスポーツの大会に行くと、外国人の子どもたちが多いチームもいくつか参加してますよね。日本人の子どもたちのきちっとしたチームとは全然雰囲気が違うので、見ていて面白いです。バックグラウンドが違ういろいろな国の子どもたちと触れ合うことができるのは、港区ならでは。その経験は、多様化する社会を生きる子どもたちの大きな糧になりそうですね。

（後編に続きます）

【港区議やなざわ亜紀さんが港区在住ママエディターと対談。港区グローバル人育成教育の最新事情】
（後編）日本の子どもたちに必要な国際理解教育とは？港区だからできること