海外進学を見据えた日本の全寮制小学校、JINISのバイリンガル教育

Choice

「世界で生きる力を育てる」全寮制小学校という選択

名前
末松 弥奈子
お仕事
学校法人神石高原学園 理事長
Info
取材・文/小嶋美樹 
URL
神石インターナショナルスクール

「世界で生きる力を育てる」全寮制小学校という選択
「国際社会で主体的に活躍できる力を、いかに育むか」が、子育てにおける重要なテーマとして注目される近年、グローバル教育やインターナショナルスクールへの関心がますます高まりをみせています。2020年4月に日本初の全寮制の小学校として、広島県神石高原町に開校した神石インターナショナルスクール(以下、JINIS)は、英語と日本語で学ぶイマージョン教育を通して「真の国際感覚」を身に付けるだけでなく、日本人としてのアイデンティティを育む情操教育も大切にしているのが特徴のひとつです。

今回は、創立者であり、JINISを運営する学校法人神石高原学園の理事長である末松弥奈子さんにお話を伺っていきます。

「JINISは、海外進学を見据えたプレップスクールとしてのバイリンガル教育を目的としています。スイスやイギリスの名門校で校長を務めた経験を持つ2名のアドバイザーと共に、開校の数年前から議論を重ね、準備を進めてきました。そのなかで私たちは、JINISが『文部科学省の学習指導要領をベースとする、一条校であること』に強くこだわりました。なぜなら、小学校の6年間で母国語としての日本語や日本文化の基礎をしっかりと学ぶことが、将来、海外を拠点にする際に非常に重要だと考えているからです」(末松さん、以下同)

この確固たる信念は、末松さんご自身の子育て経験から生まれたものだそうです。

「すでに成人している息子は、小学3年生の頃から、スイスのボーディングスクール『ル・ロゼ学院』で学びました。そちらでの経験は、私たち親子にとって素晴らしいものとなりました。ですが一方で、早い段階から海外に出たことで、彼が日本の学校に通っていれば自然に身に付いたであろう一般的な知識を知らずに育ってしまったことに、少し後悔も感じたのです」

海外で生活していると、日本人として、自国の歴史や文化について意見を求められる場面も少なくありません。グローバルに活躍するためには、英語を流暢に話せるだけでなく、「日本人としての教養を身につけ、アイデンティティを確立すること」が重要だと、末松さんはご自身の子育てを通して実感したそうです。

そこでJINISでは、国際社会で必要とされる知識やスキルを習得し、探究心が養われるよう工夫されているイギリス発のカリキュラムIPC(International Primary Curriculum)と日本の学習指導要領を融合させた独自のカリキュラムを採用。

「授業における日本語と英語の比率は、おおむね半分ずつです。道徳や保健といった科目は主に日本語で学びを深めます。算数などは、低学年のうちに日本語で概念をしっかり定着させた上で、段階的に英語での学習へと移行していきます」

JINISの生徒たちはまた、敷地内にある本格的な茶室で茶道も学びます。

「低学年は座禅や餅つき、田植えなど、高学年の生徒は、年間を通して茶道の稽古に取り組むなど、日本の伝統文化を体験するプログラムも取り入れています。卒業後に海外の学校へ進学した際、現地で求められるのは『自国について、どれだけ語ることができるか』という点。日本の文化や価値観について自分自身の言葉で伝えられることは、多様性のあるコミュニティにおいて大きな価値となるはずです」

開校から6年が経ち、JINISの卒業生は20名を超えました。卒業生たちは全員が海外に進学。イギリスをはじめ、スイス、アメリカ、カナダ、マレーシア、オーストラリアなどの学校へと進んでいます。

「本校では日本の中学受験への対応は行っておりません。小学生のうちは、学びも遊びも全力で取り組むことを大切にし、在学中に無理なく海外進学に備えられるようサポート。海外校への進学支援の専門チームを設け、担任と連携しながら、出願書類の準備や推薦状の作成、現地校のアドミッションとのやり取りなど、すべてのプロセスを支援します」

それだけでなく、JINISの生徒たちに適した学校を独自に選定。イギリスだけでも約500校あるボーディングスクールの中から、アクティビティの充実度や留学生対応などを踏まえ、リスト化しているそうです。

「個別相談を通じて進学先の検討を進め、4年生以降、生徒たちはリストの中から興味ある学校を訪問し、自分に合った進学先を絞り込んでいくのです。他にも、イギリスの名門校などからギャップイヤーの学生をインターンとして受け入れ、日常的に身近なロールモデルに触れられる機会を設けています」

こうした交流の中で、JINISの生徒たちは「自分もあの学校に進みたい」と自然に目標を持つようになるそうです。IPCをベースに日常的に英語で探究学習を行っているため、IB(国際バカロレア)やAレベルといったカリキュラムへの移行も心配ありません。JINISで培った知識と経験、日本人としてのアイデンティを胸に、卒業生たちは自信を持って世界へと羽ばたいていくのでしょう。

次回は、日本初の全寮制の小学校としても注目を集めるJINISの、自立心を育て、親子関係にも変化をもたらす真の魅力に関して伺っていきます。

〈連載概要〉
第1回 海外進学を見据えた日本の全寮制小学校、JINISのバイリンガル教育(本記事)
第2回 全寮制小学校がもたらす「自立」と「国際感覚」、「親子関係」の変化

       
  • 季節を感じる日本庭園

  • 茶室で茶道のお稽古

  • 1年生の授業風景

          
  • 社会科見学の風景

  • 乗馬のプライベートレッスン

  • ライブラリーも充実

  • 敷地内には四季折々の変化をみせる約1万坪の日本庭園も。生徒たちは季節の移ろいを肌で感じながら日々を過ごします。

  • 敷地内にある4棟の茶室で日常的に茶道の稽古に励むことで、日本の伝統文化に慣れ親しむ生活を送ります。

  • 少人数制のクラスで、きめ細やかなサポートや指導が行われます。

  • 地元の電力会社で電気の仕組みやSDGsについて学びました。

  • 放課後の課外活動として近隣のホースクラブで乗馬のプライベートレッスンも行われています。

  • 多彩な本が取り揃えられた図書エリアは生徒たちの憩いの場。JINISでは本に親しむ時間も大切にしています。