「正解」よりも「考える力」をフランスの教育が重視する本当の理由
海外移住&教育のリアル②パリ編
- 名前
- 藤原淳/June FUJIWARA
- 家族
- フランス人の旦那、11歳の娘
- 所在地
- フランス・パリ
- お仕事
- 著作家
- URL
- June Fujiwara | 藤原淳 lit.link (リットリンク)
- URL1
- Instagram @junettejapon
子どもの未来を想うとき、選択肢は日本国内だけにとどまりません。グローバル化が進む今、世界の教育はどのような現在地にあるのでしょうか。
本連載では、シンガポール、パリ、マレーシア、カナダなど、世界各地で子育てを経験したファミリーによる「リアルな教育事情」をバトン形式でお届けします。
学校選びのこだわりや現地に通わせて初めて見えた理想と現実、そして次なる進路への決断まで。国や文化は違えども、そこにあるのは家族が真剣に子どもの学びをデザインした等身大のストーリーです。
わが子に合う教育のカタチとは?世界を巡る家族の足跡から、これからの子育てのヒントを見つけてみてください。
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【海外移住&教育のリアル②パリ編】
【vol.2:「正解」よりも「考える力」をフランスの教育が重視する本当の理由】
「それは違うと思う。」
フランスに住み始めてから、何度この言葉を聞いたことでしょう。
フランス人が「三度の飯より好き」だと言われるのが、議論です。
もはや国技と言ってもよいかもしれません。
家庭でも、学校でも、職場でも、フランス人は事あるごとに意見を交わします。
時には何時間もケンケン囂々とやり合うのですから、日本を飛び出してフランスにやって来た当初の私は、圧倒されっぱなしでした。
しかも、そんな時に必ず聞かれるのが、「あなたはどう思う?」という言葉です。
なんとか意見を述べても、「それは違うと思う」と真っ向から反論されるのですから、こちらとしてはなかなか落ち込むわけです。
場の空気を壊さないこと。相手に失礼にならないこと。
そんなことばかり気にしていた私にとって、「反論すること」はどこか「相手を否定すること」のように感じられていました。
ですから反論されると、自分自身まで否定されたような気持ちになってしまっていたのです。
長年こちらで仕事をし、子育てをしているうちに、私もだいぶ逞しくなりました。
今ではパリジェンヌとギャーギャーやり合えるほど神経も太くなりましたが(笑)、それでも娘には必ず言い負かされてしまいます。
まだ幼い娘が、なぜこんなに口達者なのだろう。
そう思っていたのですが、それは彼女が毎日学校で「意見する訓練」を受けているからに他なりません。
フランスの学校では、子どもたちは小さい頃から、「あなた自身はどう思うのか」と問いかけられ続けます。
例えば、宿題を出した時、生徒たちが嫌そうな顔をするとします。
日本なら「大事だからやりなさい」で終わる場面かもしれません。
けれどもフランスでは、「なぜ宿題が大切だと思いますか?」と、生徒側に問い返す先生が少なくありません。
さらに驚いたのは、先生たちが「間違った意見」にも、きちんと耳を傾けることでした。
つまり、ここで大切なのは、「正しい答え」を出すことだけではないのです。
「自分の意見を持つこと」、そして「自分の考えを言葉にすること」。
別の言い方をすれば、「どう考えるのか」、そして「なぜそう考えるのか」。
つまり、そこに至るまでの発想や姿勢そのものが重視されているのです。
先日、娘が「今日はグループ・ディスカッションをした」と話してくれました。
テーマを聞いてみると、「地球は丸いか、平らか」だったそうです。
クラス全員が「丸いです」と答えると、「なぜそう思うのか」をさらに問い返され、意見を交わし合うのだそうです。
つまり、「正しい答え」を覚える前に、まずは自分で考える。
そして、自分の言葉で説明する。
そこから授業が始まるのです。
さらにフランスでは、高校になると全員必修で哲学を学びます。
「知ることは信仰を捨てることか?」「未来への責任はあるか?」
そんな、一見すると答えのない問いについて論じる訓練をするのです。
哲学というと難しく聞こえますが、要するに、「正解のない問い」に向き合う練習なのだと私は感じています。
そして、自分の意見を論理的に説明する貴重な訓練の場でもあります。
正しい議論とは、単なる言い合いでも、感情的な自己主張でもありません。
多民族国家のフランスでは、異なる文化背景や宗教、思想を持った人々が共に暮らしています。「以心伝心」が通用しない国なのです。
だからこそ、相手の意見を聞きながら、自分の考えを深めていくこと。
人と違う意見を持つことを恐れないこと。
そして、自分とは異なる考え方を持つ相手とも、対話を続けていくこと。
その積み重ねがとても大切にされています。
違う世界観を持つ人間と共存するための、最も基本的で重要なツールと言ってもよいかもしれません。
〈連載概要〉海外移住&教育のリアル
①シンガポール編
第1回: インターナショナルスクール選びのラプソディ。わが家の選択の理由 (2026.05.28)
第2回: いざ入学!子どもたちがどっぷり浸かったSASでの学校生活 (2026.06.09)
第3回: 変化を恐れず、自分らしく。シンガポールでの教育と未来へのステップ
②パリ編
第1回: 私がフランスで「インター」ならぬ「バイリンガル校」を選んだ理由
第2回: 「正解」よりも「考える力」をフランスの教育が重視する本当の理由(本記事)
第3回: 海外で子育てをする私が日本語以上に娘に伝えたい「日本人らしさ」