国際バカロレアの成功の鍵とは? 大切な「クリティカル・シンキング」

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DP履修中の16歳が語る、国際バカロレア校のリアルな日常

名前
木村紗羅/Sara Kimura
所在地
パリ
お仕事
International School of Paris 学生
URL
International School of Paris

国際的な視野をもつ人間の育成を目指す、国際バカロレアの学習者像には、国際バカロレア認定校が価値を置く人間性を10の人物像として表しています。
その中のひとつである「考える人」は、「複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用し、率先して理性的で倫理的な判断を下す」ことを表します。英語でいう「Critical Thinking」(クリティカル・シンキング)がこの「考える人」にあたります。
現在、パリのインターナショナルスクールで学ぶ木村紗羅さんによると、これら10の学習者像のうち、「Critical Thinking」を身につけることが、国際バカロレアのプログラムを学ぶうえで、とても重要だそうです。そのことについて、今回は語っていただきます。(※ 10の学習者像については、連載第2回: 「私が国際バカロレアを選んだわけ。求められる人物像と必要な準備は?」もご覧ください。)


【DP履修中の16歳が語る、国際バカロレア校のリアルな日常⑧】国際バカロレアにおける"批判精神"=Critical Thinking(クリティカル・シンキング)とは、生徒の自立心を向上させるために必須と言われているキーコンセプトです。何事も鵜呑みにせず、「先生に言われたから」「皆がそう言うから」という理由で判断を下さない精神、それをクリティカル・シンキングと呼びます。
国際バカロレアがリーダーの育成に向いている教育システムだと謳われる理由は、このクリティカル・シンキングにあると思います。なぜなら、リーダーに必要な要素であるリスクアセスメントと的確な判断力の両方が、クリティカル・シンキングをすることによって磨かれるからです。

【国際バカロレアでのクリティカル・シンキングの鍛え方】
では、具体的にどのようにして国際バカロレアは生徒のクリティカル・シンキングを鍛えているのか。まず、そもそも国際バカロレアの授業では、単純に解答できるような問題は授業で扱いません。答えがひとつのみの問題は、数学の計算問題以外、見たことがないと言っても過言ではないくらいです。
ほとんどの国際バカロレアでの授業では、時と場合、そして考えている人の文脈によって、答えがまったく変わってくるような質問についてディスカッションを行います。
そのため、「他の考え方はないか」「このままで良いのか」などと、ある意味「批判的」な視点で問題を読み解ける生徒ならば質問の軸を見つけやすいでしょう。反対に、それができない、クリティカル・シンキング能力に欠けている生徒は、質問の深い意味をつかめないままなのです。

例を挙げてみますと、9年生の英語の授業で、「なぜ普遍的なテーマを描いている作者の本が人気なのか」を話し合ったことがありました。質問を「批判的」に分析しなければ答えは簡単で、「テーマが普遍的なため、読者の心に通じやすいから」などと答えればいいのです。
ですが、ここに国際バカロレアならではのクリティカル・シンキングが加えられると、今度は「『普遍性』の源とはそもそも何なのか」「その本の出版された年の流行が影響しているのではないか」などと、元の質問とは少しそれたディスカッションが繰り広げられるようになります。この段階的なプロセスが一番大事で、この時点で質問をよく考え直すことで、最終的な解答や解決策を的確に指定することができるようになるのです。

また、数学の問題の大半もクリティカル・シンキングを鍛えるものばかりです。
船の帆が三角形であることを仮定し、それが実際にはなぜピタゴラスの定理で正確に計算できないかをクラス全体で考えて話し合ったこともありました。「帆が巻きついているポールの厚み、余った分の布の計算なども考えねばならない」と述べたクラスメートがいて、なるほどなぁと大いに刺激されたことを覚えています。

【クリティカル・シンキングを身につけることが、どう役に立つのか】
日本語訳の"批判精神"と聞くと、少しマイナスなイメージを抱くかもしれませんが、国際バカロレアにおける「Critical Lens」=「批判的なレンズ」を通して物事を見ていくと、自然と生徒の視野は広げられ、考え方がよりオープンマインデッドなものになります。
「ひとによってはこのように考えるかもしれない」「答えはこれだけではないのかもしれない」と、物事の可能性を理解することこそが、慎重かつ正確な判断力を磨く鍵だと国際バカロレアは知っているのです。

また、クリティカル・シンキングの過程は、生徒の想像力を格段に伸ばすものだと感じます。私の場合、クリティカル・シンキングが身につくようになってから、日常においても「このような解決法はないのか」「この選択を後回しするべき理由はあるのか」などと、物事の様々な可能性を想像できるようになったと感じます。

【これから国際バカロレアを目指す学生と保護者の方へ】
これから国際バカロレアに挑戦しようという学生の方には、たくさんのひとと話し、なぜひとりひとりが異なる考え方をするのかを考えてみてほしいです。そして、自分はなぜその意見や見解に賛同できるのか(またはできないのか)を意識するようにしてください。また、そこから感じた疑問を忘れないでいると、国際バカロレアのプログラムも楽しめるはずです。
保護者の方に覚えておいていただきたいのは、学生であるお子さんの考えを最初から全否定しないでということです。代わりに「なぜそう思うのか」「別の考え方はないのか」などの質問はぜひ尋ねてください。自分の答えを考え、見つけ出す過程が、子どものクリティカル・シンキング、想像力、そして判断力を磨くはずです。

<連載概要> 「国際バカロレアの日々の学び」を実際の学習現場からお伝えする、木村紗羅さんの体験日記はこちらより
DP履修中の16歳が語る、国際バカロレア校のリアルな日常

       
  • 国際バカロレアの学習者像「考える人」とは

  • クリティカル・シンキングへの理解をさらに深める1冊

   
  • 文部科学省IB推進コンソーシアムでは「複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性的で倫理的な判断を下します」と定義されています。

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  • 中高生向けの美術の授業をベースに、自分の視点で世界を見つめ、自分なりの答えを生み出し、そこから新たな問いを導き出すという「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説。クリティカル・シンキングにも通じるものがある。『「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考』(注1

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