イギリス文化に根付く読書週間は、子どもの学びへの第一歩!?

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 家族
- 5人(7歳の男の子、3歳の双子の男の子)
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
日本には、「読書の秋」という言葉があります。少し涼しくなり、夜が長くなる頃に本を開く。そんな季節の情緒を感じる素敵な表現ですが、イギリスでは読書を祝うタイミングが少し違います。
こちらでは多くの学校が3月に「World Book Day」をお祝いし、この時期を読書月間としている学校も少なくありません。
World Book Dayの朝は、街の風景が少し特別になります。ハロウィンの日以上に、さまざまな本のキャラクターに扮した子どもたちが学校へ向かうのです。普段は静かな朝のバスの中も、この日ばかりはちょっとしたパレード状態。魔法使い、探偵、動物のキャラクター......それぞれが物語の世界から飛び出してきたような姿でバスに乗り込んできます。イギリスの春の、なんとも楽しい風物詩です。
3人の息子が通う学校では、毎年World Book Dayには1冊の本がテーマとして選ばれます。子どもたちはその本に登場するキャラクターの衣装を身につけて登校します。そして校門をくぐると、そこからがまた面白い。
校長先生はもちろん、普段は少し厳しそうなあの先生まで、学校のスタッフ全員がそれぞれ衣装を身にまとって子どもたちを迎えてくれるのです。廊下や教室も、その本の世界観に合わせて飾り付けられ、学校全体が一日だけ「本の中の世界」に変わります。
子どもたちはその空間の中で、本にまつわるアクティビティを楽しみながら一日を過ごします。
この光景を見ていると、ふと自分の子ども時代を思い出します。私にとって学校と本と言えば、正直なところ「読書感想文」の印象が強いです。夏休みに課題として与えられ、どこか義務のように本を読み、感想を書く。本はどちらかといえば「宿題の一部」という感覚だった気がします。
それに比べて、この学校のやり方を見ていると、「ここまで徹底して本を楽しいものにしてくれるのか」と少し羨ましくなります。これだけの仕掛けがあれば、子どもたちにとって本はきっと特別なものになるでしょう。
そもそもイギリスの教育は、読書をとても大事にしています。特に小学校では、詰め込み式の勉強よりも、経験や遊びを通して考える力を育てることが重視されます。
勉強、勉強と言われない代わりに、先生が唯一言うことがあります。
それは、「毎日必ず本を読むこと」。
長男が通うYear3では、学校から本を借りてきて、平日は毎日一冊読むことが習慣になっています。ページ数にすると20ページほどの薄い本。読み終えたら、読書記録にタイトルを書き、簡単なコメントを残します。時間にすると15分ほどでしょうか。
ほんの短い時間ですが、この「毎日続ける」ということが大切なのだそうです。
イギリスではよく、こんな言葉が使われます。
"Reading is the gateway to learning."(読書は、学びへの入口)
読む力がなければ、他の教科の理解も難しくなる。だからまず読書力を育てる。とてもシンプルですが、納得のいく考え方です。
そんなことを考えていると、ふと自分の幼い頃のロンドン生活を思い出します。
私自身も、子どもの頃にロンドンで暮らしていた時期があります。2歳違いの姉と一緒でしたが、過ごした年齢は少し違いました。私は6歳から9歳まで。姉は8歳から11歳までです。
同じように海外で暮らしていたはずなのに、大人になってみると、姉の英語の方は今も高いレベルで残っています。どうしてだろう、と不思議に思うことがよくありました。もちろん語学の得意不得意や、その後の努力もあると思います。ただ最近になって思うのです。もしかすると、その時期の「読書量」が関係しているのかもしれない、と。
小学校高学年になると、読む本の量はぐっと増えます。内容も少しずつ複雑になり、物語の世界にどっぷり入り込むようになります。姉はちょうどその時期をロンドンで過ごしていました。
一方の私はというと、まだ本格的に読書習慣がつく前の年齢。英語の環境にはいたものの、読む量という意味ではそれほど多くなかった気がします。もしかすると、言葉として体の中に残るのは、そうした「読書を通して触れた英語」なのかもしれません。
そんなことを考えるようになってから、子どもたちに「本を読みなさい」と言うだけでは少し説得力がない気がしてきました。そこで最近は、私自身も英語の本を読むようにしています。
最近手に取ったのは、『The Hare with Amber Eyes』。
日本語では『琥珀の眼の兎』として知られるこの本は、陶芸家エドマンド・ドゥ・ヴァールによる回想録。彼の一族が代々受け継いできた日本の小さな工芸品「根付(ねつけ)」を手がかりに、ヨーロッパと日本、そして家族の歴史をたどっていく物語。
子どもたちが毎日15分の読書を続けている横で、私もまた1ページ、また1ページと読み進めています。
〈秋元玲奈さん連載〉
ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース