学校の環境委員に選ばれた長男の「小さな一歩」の大きな意味を考える

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 家族
- 5人(7歳の男の子、3歳の双子の男の子)
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
9月、新学期のスタートとともに、我が家の長男はYear3に進級しました。
彼の通う学校ではこの学年から、子どもたちは「委員会活動」に参加できるようになります。日本で育った私にとって「委員会」といえば、放送委員や図書委員など、学校生活を円滑に回すための分担作業というイメージが強いのですが、イギリス式は少し趣が異なります。
イギリスでの委員会は、いわば「小さな議会」。テーマは「学校をどう良くしていくか」で、子どもたちが自ら考え、意見を出し合い、実際に学校を動かしていくのです。
立候補するには、まず志望理由を書いて提出しなければなりません。その後、クラスメイトや先生の意見を経てメンバーが決まる仕組み。低学年のうちから民主主義のミニチュアを体感できるというのは、まさにイギリス教育らしいところです。
そして今回、長男が挑戦したのは Environment Team、いわゆる環境委員会。希望が通り、クラスの代表に選ばれた日。迎えに行った私に校門越しにガッツポーズを決める姿は、サッカーの決勝点を決めた少年そのものでした。週末に一緒に「志望理由」を考えたこともあり、念願の役割を得られたことに私の胸も熱くなりました。
さて、長男が参加したこのEnvironment Team、どんな活動をするのでしょうか。
イギリスの学校では「Eco-Schools エコスクール」という国際的な環境教育プログラムが広く導入されています。子どもたちも参画して学校全体で環境保護に取り組み、一定の基準を満たせば「グリーンフラッグ」という認証を受けられる仕組み。単なるお飾りの活動ではなく、学校の評価やOfstedという教育評価機関の査定にも関わるため、先生方もかなり真剣です。
長男が初めて出席した会議では、今年の目標は「グリーンフラッグ獲得」と明確に発表されたそうです。そのために「リサイクルを徹底しよう」「電気使用を減らそう」といった案が飛び交い、それに向けて、ではどうしたら学校全体を巻き込む活動ができるか、子どもたちは小さな政治家さながらにアイデアを出し合い、議論を重ねます。日本での委員会が「学校生活を支える裏方」だとすれば、こちらは「学校がどんな価値を打ち
出すか」を子どもに委ねる場なのだと感じました。
環境問題と言っても、小さな子どもには遠いテーマに思えるかもしれません。けれど「自分の学校をエコにする」という身近なミッションを通して、「大きな課題も小さな行動から変えられる」という手応えを得られるのはとてもいい仕組みです。
実際、息子は「まずは自分がお手本にならないと!」と張り切り、さっそく校庭でゴミを拾っていたと先生から報告を受けた時は思わずクスッと笑ってしまいましたが、それは同時に「環境の担い手」として小さな誇りを感じ始めた証でもありました。
社会参画の入り口は、案外こんなところにあるのかもしれません。たとえゴミを拾うだけでも、本人にとっては「自分は社会に役立っている」という実感につながりますし、イギリスの学校の環境委員会で議論を交わし、企画を通すという実戦的な取り組みは、やがてボランティアや福祉活動といったもっと広い世界への関心へと広がっていくのではないかと、親としてはひそかに期待してしまうのです。
もちろん、まだ7歳の少年に「地球を救え」とは言いません。でも、校門で見せたあの小さなガッツポーズには「自分はやれる」という確かな自信が宿っていました。その自信こそが未来へと続く燃料であり、次の挑戦へと繋がる火種なのだと思います。
新学期は、子どもの成長をいっそう感じるとともに親の気づきも多い季節。あのガッツポーズから、私自身も「小さな一歩の意味」を改めて考えさせられたのです。
〈秋元玲奈さん連載〉
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