3年ぶりの一時帰国|子どもたちの目に映った日本の不思議と魅力

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 家族
- 5人(7歳の男の子、3歳の双子の男の子)
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
この夏、わが家は3年ぶりに日本へ一時帰国を果たしました。
イギリスへ移り住んだ当初、「年に一度は帰れたらいいね」などと夫婦で話していたものの、日常に追われるうちに、気づけば3年。あまりに長いブランクでしたが、3歳になった双子も長距離フライトに耐えられる年齢に達し、ようやく満を持しての帰国となりました。
日本に到着してまず驚かされたのは、長男のひとことでした。空港のゲートを抜け、人の波に囲まれながらあたりを見回し、「人生でこんなにたくさんの日本人を見たの、初めてだよ!」と大真面目に言ったのです。
思わず吹き出しそうになりました。彼は4歳まで日本で暮らしていたはず。しかし、幼い記憶はあっという間に薄れてしまうものなのですね。
双子も同様で、目に入るものすべてが新鮮に映っているようでした。とくに印象的だったのが「日傘」をさす人々に驚く様子。空は晴れ渡っているのに、道行く人たちが傘を手に歩いている光景は彼らにとって"謎" 以外の何物でもなかったようです。
イギリスでは日光を浴びるのが「喜ばしいこと」であり、陽射しを避ける文化はあまり見られません。この些細な違いこそが、文化の深さを感じさせる瞬間でもあります。
3年という歳月は、子どもたちの感覚をすっかり"外国の子" に変えていたようです。
渋谷のスクランブル交差点では、観光客のように大はしゃぎし、回転寿司では自動で運ばれてくるお皿に目を丸くして大興奮。私はその横で、まるでツアーガイドのような気持ちで日本を案内していましたが、それは同時に、私自身が母国をあらためて「外からの目」で見つめ直す機会にもなりました。
子どもたちがもっとも感動していたのは、日本の「モノの豊かさ」でした。
ポケモン、マリオ、ドンキーコングといった大好きなキャラクターたちが、文房具に、洋服に、食品パッケージにまで登場し、コンビニの一角にすらワンダーランドが広がっている。あまりの選択肢の多さに、ひとつの棚の前から離れられなくなることもしばしば。長男は滞在中、「ここに住みたい!」と何度も口にしていました。
その姿に、私は自分の子ども時代を思い出しました。私もまた小学生の頃、ロンドンに住んでいた経験があります。一時帰国のたびに日本の「便利さ」や「豊かさ」に圧倒されたものでした。あのころ感じた驚きや安心感は、今の子どもたちにも同じように伝わっているのだと、胸が熱くなりました。
今回の一時帰国は、子どもたちにとっては、自分たちのルーツを「身を持って知る」機会となり、私にとっては、母国のよさを再確認する時間となりました。
街の清潔さ、公共交通機関の正確さ、接客の丁寧さ。かつて当たり前だと思っていたことが、今では驚きとして心に残る。それこそが、異文化の中で暮らしていることの醍醐味なのかもしれません。
とはいえ、楽しい時間というのは短いもの。
2週間の滞在はあっという間に過ぎ、私たちは再びロンドンの暮らしへと戻ってきました。馴染みの公園を散歩しながら、日曜にはパブでサンデーローストを食べる。東京の喧騒とは対照的に、こちらはどこまでも静かでゆったりとした時間が流れています。
「やっぱり日本って住みやすいよね。あの忙しない感じが、私は好きだから、ちょっと寂しいな」
「でもこの静けさ、やっぱり落ち着くよね」
そんな会話を夫と交わしながら、グラスのビールを傾ける。どちらの国も、私たち家族にとって大切な場所です。
海外で暮らすというのは、一方の文化に完全に染まるわけではなく、かといってもう一方を忘れるわけでもない。「間」に生きる感覚。どちらの国にも足をかけながら、折にふれて揺れ動く、その不安定さはあるけれど、間違いなく贅沢な感覚。子どもたちには、そんな"間" を歩む人生を、面白がりながら進んでいってほしいと思います。
どちらか一方ではなく、両方を知ること。その感覚が、彼らの世界を広げ、柔軟な眼差しを育んでくれることを願っています。
「住む場所」ではなく、「生き方」としての海外生活。その豊かさを、これからも子どもたちと一緒に感じていけたらと思います。
〈秋元玲奈さん連載〉
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