オルタナティブスクールで"生きる力"を磨く。静岡あたらしい学校の取り組みをご紹介!

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特定非営利活動法人 静岡あたらしい学校

所在地
静岡県静岡市葵区牛妻2290
URL
静岡あたらしい学校HP

独自の理念とカリキュラムによる新たな教育法を実践する「オルタナティブスクール」。これまで2回に渡りご紹介してきた「静岡あたらしい学校(小学部)」〈以下「あた小」〉では、子どもの自主的な学習意欲を引き出すユニークな取り組みが行われています。


なかでも今回は、日々の時間割に組み込まれた「スコーレ・探求の時間」をご紹介します。「スコーレ・探求の時間」は、子どもたちひとりひとりが自分の興味と向き合う時間。「スコーレ(スコレー=scholē)」とは「暇」を意味する古代ギリシャ語で、「スクール」の語源にもなっている言葉。カリキュラムの名前には、生活や遊びの中で見つけた"好きなこと"を自分自身で掘り下げて"学び"の本質を体験してほしいという願いが込められています。


もちろん、子どもたちには調子の波があり、常にやる気満々とは限りません。興味の対象が見つからずフラフラと遊んでいることもありますが、代表の酒井田愛香さんは「みんなで同じ時間と空間を共有することに意味がある」と話します。「大人が急かさずに見守っていると、子どもたちはお互いに影響をおよぼし合い、最終的には蜂の羽音が広がるように学習意欲が広がっていくのです」。


自ら学習テーマを見つけることは、自立を促し目的意識を高めることにもつながります。そもそも、私たちの目の前にある文明社会は、生活の中で自然に湧き起こる好奇心や探求心を推進力にして発展してきたのです。「ブライトチョイス」では、本連載以外にもSTEAM教育アート教育など"デザイン思考"や"創造性""想像力"を育むことに重点を置いた次世代教育を取り上げていますが、それらもすべて子どもたちの内側から湧き出る"学びの源泉"があってこそ。あた小が提案する「スコーレ・探求の時間」は、まさにそんな学びの原点を体現していました。

       
  • スコーレ発表会にて、子どもたちの発表内容の書かれたホワイトボード

  • スコーレ発表の様子

  • いつきくんが制作したアルコールバーナー

          
  • メカ好きのいつきくんが昨年のスコーレ発表会で制作したジープ模型

  • 自由の認められた子どもたち

  • 月に一度のスコーレ発表会では各自が取り組みを発表。酒井田さん曰く「たとえ上手くいかなかったり何もできなかったりした場合でも、等身大の取り組みをプレゼンすることが大事。熱心に聞いてもらえた体験は、大きな自信につながります。もちろん、伝える力や聴く力を育むいい機会にも」。

  • 今回は、4年生(取材時)のいつきくんのプレゼン内容をご紹介します。パソコンでプレゼンをしたいと考えたいつきくんは、まずパソコン本体の自作に挑戦。さらには、アルファベットの知識もないところから独学でローマ字入力を覚え、パワーポイントまで学んで資料を作成したそう。

  • 今年2月の発表会では、アルコールバーナーを制作。野外料理で使うバーナーのガス缶が高価だったことから、安く抑えられる方法はないかと考えたそう。ユーチューブでアルコールバーナーの作り方を調べ、制作期間は約1ヶ月。数百円のアルコールで火を使えるようになり、満足のいく結果に。

  • 昨年10月には、ジープの模型制作も。エンジンやトランスミッションなど内部のパーツも細かくモデリング。“メカ好き”といういつきくんは、工業高校への進学を希望。次回のスコーレでは、1年生(取材時)が東京モーターショーで見たというトラックの模型を作りたいと考えているそう。

  • いつきくんのご両親によると、あた小入学後の彼は「〜をやりたい」という発言が増えたそう。“ありのまま受け容れられること”や“自分の考えを自由に行動に移せること”が叶うあた小の教育は、子どもたちに学びの楽しさを伝え、成長後も続く“生きる力”を養ってくれるに違いありません。