世界で最も優れた幼児教育、レッジョ・エミリア・アプローチとは?

Choice

世界で最も優れた幼児教育レッジョ・エミリア・アプローチ①

名前
上田 佳美
所在地
目黒区
お仕事
Kodomo Edu International School 代表取締役&エデュケーション・デザイナー
URL
Kodomo Edu International School

「世界でもっとも優れた幼児教育」として近年注目を集めているレッジョ・エミリア・アプローチ(以下レッジョ・アプローチ)。'90年代初頭、米『ニューズウィーク』誌にて、この教育法を採用した北イタリアの都市レッジョ・エミリアの教育機関が取り上げられたことをきっかけに、一躍その存在が知られることとなりました。

同じくイタリア発祥のモンテッソーリ教育がメソッドを伴う「手法」であるのに対し、レッジョ・アプローチにはメソッドがありません。「子どもは100の言葉を持っている」「すべての子どもたちは一人一人異なる」という教育理念のもと、"子どもの持つ無限の可能性"を最大限に引き出すための、より自由なアプローチをひとつひとつの「プロジェクト」と呼ばれるアクティビティに取り込んでいます。

モンテッソーリ教育が年齢に応じて決められた「お仕事」に「1人で」取り組むのに対して、レッジョ・アプローチはグループワークを重視し、答えのない「オープンエンド」アクティビティによって創造力、コミュニケーション能力、自ら考え抜く力や主体性を育てることを目的としています。また、AIに代替されない「非認知能力」を必要とする"AI・デジタル時代"に合った教育法としても期待されています。

ブライトチョイスではこれまでも、STEAM教育アート教育など、"デザイン思考"や"創造性""想像力"を育むことに重点を置いた次世代教育を取り上げてきました。今回取材した「世界でもっとも優れた幼児教育の実践法」といわれるレッジョ・アプローチとは。その教育法と哲学について、Kodomo Edu International School(以下Kodomo Edu)代表の上田佳美さんにお話を伺いました。

Kodomo Edu では現在、2歳〜5歳児を対象とした全日または半日制のプリスクール、ならびに年少〜小3を対象としたアフタースクールやサタデースクールを開講しています。インターナショナルスクールとしたのは、「英語で伝える力」がこれからを生きる子どもたちにとって必要不可欠だから。上田さんがアメリカで出会ったレッジョ・アプローチは、グーグルやディズニー本社が社内幼稚園で取り入れられたことで、海外で広く認知されるようになりました。

レッジョ・アプローチは非常に幅が広く哲学的な部分が大きいので、人によって捉え方も違います。Kodomo Eduがアメリカで出会ったレッジョ・アプローチでは、探求心や自発的な力、そして忍耐力と継続する力を身につけることで、本場イタリアに比べ、より"実用的"な思考力、問題解決力を育むことを重視しています」

「いちばん大切なのは、まず子どもたちをじっくり観察すること。オープンエンドマテリアルと呼ばれる、答えのない素材を用意し、環境を整えます。これが『プロボケーション』、すなわち"学びへの誘い"となるのです。観察する時間を充分に取ることで、子ども一人一人の興味の対象を把握し、そこから子どもたちの自主性を高めるプロジェクトを考えます。アイデアを見つけて周囲と共有し、想像しながら試行錯誤を繰り返す思考のスパイラルによって、創造力が生み出されるのです」

Kodomo Eduで目指す生徒像は、"Voice (ボイス)"のある子ども。自分の意見が言えて、人の意見を聞くことのできる子どもです。そして"Responsible Citizen(責任ある市民)"として、自分が今いる環境や社会を変えていこうと考え、行動に移すことのできる子どもを目指しています」

AI時代に必要な21世紀型のスキルとはすなわち、学び続ける力、社会性、感情コントロール、自尊心、自立心、共感性、コミュニケーション能力を包括した非認知能力。こうしたライフスキルを育てるのが、Kodomo Eduレッジョ・アプローチなのです。

次回の記事では、Kodomo Eduの日本人の子どもたちのためのプログラムについてお伝えします。

〈連載概要〉
第1回: 世界で最も優れた幼児教育、レッジョ・エミリア・アプローチとは?(本記事)
第2回: 日本の子どもだってクリエイティブになれる、レッジョ・アプローチ!
第3回: 英語とアートでクリエイティブになるKodomo Eduの英語学童

       
  • 「プロボケーション」が子どもの創造力を呼び起こします。

  • 創造性はグループワークによって生み出されます。

  • 「Makers=メーカーズ」を育てることが教育者としてのミッション。

          
  • 子どもたちの発想を広げられる、オープンエンドマテリアル。

  • 子どもが主体になってアクティビティが発展していきます。

  • AI時代を生き抜く力を育むレッジョ・アプローチの哲学。

  • 明るい日差しが降り注ぐKodomo Eduの教室には、プロボケーション、すなわち「学びへの誘い」となる色とりどりのマテリアルが並びます。知覚・感覚を刺激する粘土や水粘土から季節の植物まで、インスピレーションを引き出す素材によって、子どもたちを思考や創造へと誘います。

  • Kodomo Eduでは、グループワークを重視。子どもたちの共同作業や会話からも、プロジェクトが生まれるのです。ひとりひとりのアイデアが互いを刺激し、触発しあって創造性を養います。仲間との協力、そして年長の子どもが年下の子どもに教えることでも、お互いを高め合っています。

  • シリコンバレーでも注目のワードとなっている「Makers」を育てることが、Kodomo Eduのミッション。自分の意見を発信し、他者の意見を受信することで「Voice」を持つ子どもから、仲間たちと協力し、新しいものを創造する「Makers」へと成長を遂げていきます。

  • レッジョ・アプローチでは、知覚/感覚素材と呼ばれるマテリアルを用います。粘土やワイヤー、糸や棒などどんなものにも形を変えることのできるオープンエンドマテリアルに触れることで、子どもは試行錯誤し、思考を深め、発想力や創造性を育んでいきます。

  • オープンエンドマテリアルで遊ぶ子どもを先生方がじっくり観察し、ひとりひとりの興味の対象を捉えるところからプロジェクトが始まります。1日の活動は、子どものアイデア次第で柔軟に変化します。子どもの主体性こそがアクティビティを作っていくのです。

  • これからのAI時代に必要な、非認知能力——すなわち、学び続ける力や自尊心、自立心、そして社会性。レッジョ・アプローチでは、こうしたライフスキルを持つことで、「Responsible Citizen(責任ある市民)」として、自ら社会を変えてみようと行動する人材を育てます。