子育てと気候変動の基礎知識。親が知っておくべき「1.5度」のキーワード

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子育て世代に知って欲しい「環境問題」①

名前
小野 りりあん / Lillian Ono
お仕事
環境活動家 / モデル
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小野りりあんインスタグラム
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Lit.Link by Lillian Ono

子どものための気候変動アクションプラン!小野りりあんさんインタビュー
子育てのなかで大切にしたいことはいくつもありますが、今、なによりも関心を向けたいことのひとつに、「子どもたちが生きる未来の地球環境を守ること」があります。子育て世代こそ、この瞬間に起こっている気候変動のことを"自分事"として捉えて欲しいのです。

そこで今回は、環境活動家でありモデルとしても活躍する小野りりあんさんにインタビュー。気候変動の実態や、私たちができることについて伺いました。

「世界の平均気温は現在、1850年から1900年までの産業革命前と比べ、すでに1度以上も上昇していることをご存じでしょうか。このままの生活を続けていると、気温はますます上昇し、近い未来に人間の力ではもうどうしようもできない事態に陥ることが予想されています。そうなる前に、気温上昇をなんとしても1.5度以内に抑えなくてはいけません。この"1.5度"というキーワードを、まず多くの人に知っていただきたいなと思っています」(小野さん、以下同)

18世紀の産業革命以降、人間はエネルギーを得るために、石炭や石油などの化石燃料を大量に使用してきました。その結果、大気中に排出される二酸化炭素が急激に増加し、気温はぐんぐん上昇。世界の平均気温が上昇したことによって、自然災害の増加や農作物への被害など、すでに甚大な影響が出始めているのです。

「今後、さらなる気温上昇が進み、おおよその数値で+1.5度以上に達してしまうと、地球の暴走が始まり、人間の手では二度と気温上昇を止めることができない事態が起こる、という警鐘も科学的理論に基づき鳴らされているのです。

+1.5度以内に抑えるためには、世界の国々がCO2の排出削減目標として掲げている数値では不十分で、2010年と比べて2030年時点でCO2の排出量を半分、2050年までにゼロにする必要があります(※1)」

そのためには、2020年から10年間のスパンで考えた場合、毎年7.6%のCO2削減が必要だと言います。

「それが2025年からの5年間のスパンになると、毎年15.4%の削減が必要です。ただ、"15.4%の削減"という数値は、科学的にはほぼ不可能だと言われているんです。(※2)つまり、5年後から動くのではもう手遅れなのです。気温上昇を1.5度以内に抑えるために残された時間は、あとわずか4年ほどなのです」

今すぐに実現させなければならない「7.6%のCO2削減」と聞いても、削減規模がすぐにピンとくる人は少ないのではないでしょうか。小野さんに伺うと、「2020年に新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の人や経済活動が止まった期間に減ったCO2が約6%」だと教えてくれました。(※3)

「コロナのパンデミックによって、飛行機移動が急激に減り、世界中の大規模工場がストップしたことで、ようやく約6%の削減が実現したのです。そう聞くと大変な目標のように感じますが、残された時間は少なく、地球の危機的な状況を多くの人に知ってもらうことで、"よしやろう"と多くの人が思えば、不可能なことではないと信じています」

まず私たちにできる対策は、パワーシフトやコンポストを導入するなど、日々の生活を見直すこと。ただ、残念ながら個人のライフスタイルを変える努力だけでは、目標達成には届かないという難しい一面も。

「気候変動を止めるには、もっと大きな変化が必要です。でも、その大きな変化を作るのも、結局は個人の思いやアクションなのです。まずは、世界中の科学者や専門家が出しているレポートや数値など、正しい情報源を自分自身の目でたしかめ、知ることから始めて欲しい。そして、ひとり一人が大きな変化の一部である重要性を、より多くの日本の皆さんに知って欲しいなと思っています」

次回は小野さんが環境活動を始めたきっかけや、2021年に行われたCOP26に参加した経緯などをお伝えします。


〈連載概要〉子どものための気候変動アクションプラン!小野りりあんさんインタビュー
第1回:子育てと気候変動の基礎知識。親が知っておくべき「1.5度」のキーワード(本記事)
第2回:「COP26」にも参加!原点はデンマーク「フォルケホイスコーレ」への留学
第3回:家庭で実践できる「気候変動対策」パワーシフトから食事まで!
第4回:学校では教えてくれない気候変動「子どもと学べるコンテンツ~書籍編」
第5回:学校では教えてくれない気候変動「子どもと学べるコンテンツ~動画編」

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  • 飛行機に乗らない世界旅行

  • 毎週金曜日にSNSに投稿

  • 自転車でアクション

          
  • 移動方法のなかで飛行機がもっともCO2の排出があると知り「その事実を知らせるきっかけになったら」との思いと冒険心から、2019年秋に飛行機に乗らないで世界の環境活動家に会いに行く旅をし、cop25を目指した時の写真。旅の始まりはフェリーで韓国まで渡り、そこからシベリア鉄道でモスクワまで行ったそうです。

  • 「2020年1月から、毎週金曜日に気候に関する情報をホワイトボードに書いてSNSに投稿していました。10ヶ月ほど続けたのですが、これは第一回目の写真です」。気温上昇を1.5度以内に抑えないといけない必要性を訴えました。

  • 「人間が住むことのできる地球環境なくしては利益の話もできません。政治や社会を変えていくには、声を可視化すること以外にはないと思い、2021年夏には自転車に乗ってメッセージを届けるアクションを起こしました」