産後ケアの仕事から学ぶ、愛にあふれた人生の大切さ
パリからLAへ移住、EMIKOのティーンガール子育て
- 名前
- EMIKO
- 家族
- 16歳と14歳の女の子、フォトグラファーの夫と4人家族
- 所在地
- アメリカ・ロサンゼルス
- お仕事
- モデル、「nanamina」バイヤー、プライベートシェフ
- URL
- nanamina
私はいま、プライベートシェフの仕事をしています。セレブの多いロスでは結構いるのですが、レストランの食事に飽き飽きしていたり、家でゆっくりと食事したいと願う家族と契約して、毎日食事を作りに行きます。モデルの仕事があるときはそっちを優先させてもらっていますが、今年からは、産後の食事提供のサービスも始めました。
新しいクライアントからお産の前後に和食が食べたいとリクエストされたことがきっかけでした。パリ時代に学んだヨーロッパ薬膳の知識や日本の本なども読み返し、お産に良い食事を提供したところとても好評で、私自身彼女の回復ぶりに「食がいかに大切か」を見直す機会にもなりました。彼女のお産を担当した助産婦さんを紹介してもらったところ、意気投合して、彼女が担当するクライアントを紹介してもらえるようになったのです。
アメリカには「産後の食事」という概念がなく、病院ではまずいご飯が出され、自宅に帰っても赤ちゃんの面倒に忙しく、自分でゆっくりご飯を作る時間なんてありません。産後の1ヶ月は母体の回復にとって大切な時期なので、忙しく動き回ったり、バランスの悪い食事ばかり食べていたりすると回復が遅れます。母乳の出にも影響するし、本来、出産を終えたお母さんは赤ちゃんにお乳を上げることに集中すべきなのです。
出産を終えた女性には、母乳に良い食事、お通じを助ける食事、パワーの出る食事を用意できるよう心がけています。しかしクライアントのほとんどが女優さんなので、カロリーが高すぎてもいけません。お昼前に彼女の自宅に行って、和食中心のランチとディナーを用意します。彼女の家族にも作るので、給食のおばちゃん気分です。本人、旦那さんと、住み込みのデューラ(注)分の食事を作ります。約1ヶ月通い、母体が回復したらサービスの終了となります。
(注:デューラ=お母さんの代わりに赤ちゃんの面倒を見る人。アメリカに来てはじめてその存在を知りました。夜中に赤ちゃんが起きると取っておいた母乳をあげたりしてくれます。そのおかげでお母さんは朝までゆっくり眠れるという、羨ましい限りのサービス)
この仕事のいちばんの魅力は、何と言っても赤ちゃんに毎日会えること。生まれたての赤ちゃんの成長を日々見られるってなかなかないですよね! 初日は目も開けていなかった赤ちゃんが、どんどん呼吸をする度に強く美しく成長していく。自然界の持つ強い力に感動します。そして、赤ちゃんを迎えた家族は、その赤ちゃんを無条件に愛します。赤ちゃんがそこにいてくれるだけでみんながハッピー。会いに来る人達も赤ちゃんを見ると一瞬で笑顔になり、何もしない赤ちゃんがこの世でいちばんパワフルな力を持った神様のように感じます。
そんな経験から改めて思うのは、ひとりひとりがみんな愛される存在として生まれてきたということ。いまはこんなに成長しましたが(苦笑)、私たちもみんな最初は愛されていた赤ちゃんでした。ただいるだけで、両親も祖父母も親戚も、家族みんなが幸せでした。だからこそ、自分を粗末に扱うことはいままで自分を愛してくれた人たちにとても失礼なのではないかと思うのです。
二人の娘をもつ母としても、娘たちが自分自身を嫌っているととても悲しく感じます。こんなに愛しているのに、こんなにも愛されて育ったのに、その自分を嫌うってどういうこと?って。
「誰にでも親はいる」と思うと、誰も嫌えなくなります。私がその人を嫌うと、その人の親に申し訳なくて、他人の悪口さえも言えなくなってしまいます。親とはそういう存在です。無条件に自分の子どもを愛しています。成績がどうだとか、どんな才能があるとか、関係なく。元気にこの世に存在してくれているだけで、それだけでいいと。
赤ちゃんの側で働く仕事を通じて、この世に命を授かったのは愛持って人生を楽しむためだと、再認識できる機会に恵まれました。人を愛し、愛され、楽しんだ分だけ、産んでくれた両親にも親孝行ができるような気がします。
人生を終える時、どのくらい社会で成功したとかではなく、どれだけ愛し、愛され、人生を楽しんだか、この3つに満足できれば、それこそがとても素敵な人生のように思います。
まずは自分自身を丸ごと愛していきましょう!