小学校のクリスマスガラでイギリスの寄付文化や地域社会との絆を実感
ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 家族
- 5人(7歳の男の子、2歳の双子の男の子)
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
クリスマスシーズンのロンドンは、街全体がきらびやかなイルミネーションに包まれ、まるで絵本の中に迷い込んだような幻想的な景色が広がります。でも、イギリスにおけるクリスマスは、単なるお祭り騒ぎではありません。この時期は、寄付や慈善活動が最も盛んに行われる季節でもあり、地域社会全体が支え合いの精神に満ちています。特に学校を中心としたチャリティー活動はとても活発で、地域の文化として深く根付いています。
長男が通う学校でも、クリスマスを迎えるこの時期に、教育環境を支えるためのチャリティーイベントが次々と開催されます。例えば、伝統的な聖劇やクリスマスキャロルの公演では、保護者を招き入場料や寄付を募ります。また、子どもたちに大人気の「Santa's Grotto」(サンタクロースに会える小屋)を設置し、その参加費を寄付に充てる仕組みも一般的です。
こうしたイベントは、学校のPTAが中心となり、運営から寄付の調達まで手際よく進められています。なかでも特に印象的なのが、「クリスマスガラ」と呼ばれる保護者向けのチャリティーパーティー。
日本の学校ではあまり馴染みのないこのイベントは、ドレスコードのあるフォーマルなパーティーで、子どもたちはナニーに預け、夫婦で出席するのが一般的です。普段とは異なる華やかな装いの先生や保護者が集い、シャンパンやワインを片手に会話を楽しむ光景は、送迎時とはまったく違った雰囲気を醸し出し、自然と会話も弾みます。
このガラの目玉となっているのが、チャリティーオークション。ここでは、保護者や地元企業が提供した商品が競りにかけられます。ワインやギフトバウチャーといった定番品から、「校長先生と1対1でチェス対決をする権利」や「1日校長先生になる権利」といったユニークな体験型アイテムまで、バリエーションは実に多彩。保護者たちの競り合いが白熱する中、値段がぐんぐん跳ね上がり、最後には何百ポンドにもなることも珍しくありません。 特に「1日校長先生」の権利が600ポンド(約12万円)で落札されたときには、会場中が驚きと笑いに包まれ、大盛り上がりでした。
こうしたイベントの成功を支えるのは、地域社会の協力です。寄付品を集める際には、保護者たちが馴染みの店や地元のビジネスに自分たちで声をかけます。私もPTAの友人に頼まれ、最近知り合ったソフトプレイ施設のオーナーに協力をお願いしたところ、快く入場無料券を提供してくれました。
イギリスでは、学校や福祉施設への寄付が文化として根付いており、多くの人が積極的に協力するのが当たり前。その自然な連帯感が、このような華やかなイベントを支えているのです。
面白いのはこうしたチャリティーイベントが単なる資金調達にとどまらない点です。子どもたちはイベントの準備や運営をする親の姿を通して、「与えることの大切さ」を学び、 保護者も地域社会とのつながりを再確認します。寄付という行為が「楽しみ」と結びつき、 学校全体が一体感を持つ仕組みになっているのです。
我々夫婦にとっても、2人だけで夜外出するいい機会となりましたし、華やかな会場の雰囲気に身を置き、保護者同士の交流やオークションの賑わいを楽しみ、心に残るとても素敵な時間となりました。夫が落札したロゼワインを週末に開けながら、イベントを支える地域の温かさや、みんなで力を合わせる素晴らしさを改めて感じました。
イギリスの学校が開催するクリスマスガラは、華やかな楽しさの中に自然と「支え合い」が組み込まれていて、「楽しむこと」と「与えること」が無理なく結びついているからこそ、 寄付が義務感ではなく、参加者にとって心弾む体験になるのだと思います。
イベントや活動において、どちらかというと教育的な側面が重視され、チャリティー活動は通常、学校の運営とは直接的に結びついていないことが多い日本では難しいかもしれませんが、もし日本でもこのような文化が広まれば、地域全体で支え合い、温かなコミュニティの形成に繋がり、さらに子どもたちの間にもチャリティー精神が根付くきっかけになるかもしれません、このクリスマスガラの体験を通して、そんなことを改めて感じました。