アメリカでの出産で見落とされがちな、産後の食事の大切さ

パリからLAへ移住、EMIKOのティーンガール子育て
- 名前
- EMIKO
- 家族
- 16歳と14歳の女の子、フォトグラファーの夫と4人家族
- 所在地
- アメリカ・ロサンゼルス
- お仕事
- モデル、「nanamina」バイヤー、プライベートシェフ
- URL
- nanamina
以前も書かせていただきましたが、私の今のメインの仕事は、産後の食事を専門とした、プライベートシェフです。
クライアントから聞いた話によると、アメリカでは、「産後の食事」という概念はないそうです。産後は赤ちゃんのお世話に忙しく、自分のご飯を作る時間もない為、ピザやハンバーガーなどのテイクアウトやデリバリーに頼っているそうです。ピザやハンバーガーは、必要なカロリーは接種できても、栄養は偏っていますよね。授乳で身体の栄養素をどんどん奪われて、その上、睡眠まで奪われるのにそんな食事では精神的にも参ってしまいそうです。実際、ストレスから産後鬱になる人も多いようです。
私が食事のお世話をするクライアントに就くのは、大抵3週間から4週間。その間に赤ちゃんはもちろん、家族も、お母さん自身もどんどん成長していく様子が見られます。私を雇っているクライアントは金銭的に余裕がある人ばかりなので、私(シェフ)以外にもデューラと呼ばれる赤ちゃんのお世話をしてくれる人がいます。デューラは夜専門の人もおり、その家で寝泊まりをしてくれ、夜にお母さんがまとまった睡眠を取れるように、赤ちゃんが起きたらミルクをあげたりおしめを変えたりと、お世話をしてくれる人です。
こうして書くとアメリカの出産はなんて恵まれているんだ、と思われがちですが、実は正反対です。私のようなプライベートシェフやデューラへの支払いには一切保険も効かず、すべて自腹です。デューラは一晩約400ドルだそうで、私の報酬も普段のプライベートシェフの仕事より割高になります。計算するとかかる予算は1日約1000ドルにも上がるため、クライアントの方は、女優さんのような美と健康にお金をかけられる人ばかりなのかもしれません。
アメリカの病院では、出産後は特に問題がない限りすぐに自宅に帰されます。今のクライアントは帝王切開をしたにも関わらず、すぐに退院して翌日には自宅に戻っていました。出産したママ達がそこに不満を言わないのは、病院での対応がとても心地の悪いものだからなのかもしれません。まずい食事を出され、薬攻めなので、病院にいる方が余計に弱ってしまいそうです。日本の産婦人科の食事やケアは、夢のようです。だけど日本の産婦人科も最近では豪華を競い合っていて、本末転倒のカロリーの高すぎる食事を提供しているところもあるようなので要注意です。
産後は、汁物を中心に粗食がいちばん良いのです。私はまず一日、二日目は汁物と消化しやすい食事を作り、段々回復するとともに根菜を増やしたり、お魚を加えたりします。まずは出産という大きな戦いを終えた体を休めてあげられる食事が重要です。消化にエネルギーを取りすぎるようなものも、乳腺を詰まらせてしまうような高カロリーな乳製品もダメです。
1ヶ月くらい私が作る栄養バランスのとれた和食中心の食事をしていると、それまで西洋の食事ばかりだったクライアントも好みが変わってくるようで、身体が回復してから料理を教えることも増えてきました。もうピザ、バーガー、パスタの生活には戻れない、と言います。
私の今の夢は、産後の食事をデリバリーのシステムとして提供することです。そうすれば私が直接通わずとも、もっと多くの人に低予算で栄養バランスの良い食事を提供できます。セレブだけではなくより多くの女性とその家族にも、和食の素晴らしさとともに、より良い食が身体と心を左右することを伝えていけたらと思っています。
〈EMIKOさん連載〉
パリからLAへ移住、EMIKOのティーンガール子育て