インフレの進むアメリカで、子ども達の教育を考える

パリからLAへ移住、EMIKOのティーンガール子育て
- 名前
- EMIKO
- 家族
- 17歳と15歳の女の子、フォトグラファーの夫と4人家族
- 所在地
- アメリカ・ロサンゼルス
- お仕事
- モデル、「nanamina」バイヤー、プライベートシェフ
- URL1
- EMIKO (@emikohanawa) Instagram
- URL2
- nanamina
【パリからLAへ移住、EMIKOのティーンガール子育て】
以前からアメリカ、特にカリフォルニアやNYでの生活費はとても高いと感じていましたが、今ほど、それを強く感じる時はありません。
まず、ガソリンの価格が2倍になりました。私は100%電気の自動車なので、それによる被害は受けていませんが、気がつくとタクシーの値段も今までの約2倍になっていました。これまで空港に行くのにタクシーを頼むと、自宅からはチップを含めても25ドルで行けたのに、先日空港から自宅まで乗ったら50ドル以上して驚きました。
そして、食料品の値上がり。日系スーパーでは品薄が続き、野菜の値段もそれぞれ1ドルずつ上がりました。だから10品買うと、これまでより10ドル高く支払っていることになります。エノキがなんと7ドルに! 日本の料理雑誌で、「エノキを使った節約レシピ」なんて載っているけれど、とんでもない。もう私たちにとってエノキは高級品です。でもシメジは3ドルのままですけどね。なぜエノキがこんなに高くなってしまったのか?は謎です。
マーケットの野菜も高くなりました。トマトは1キロで8ドル。リンゴなども同じような値段で、特にフルーツが高くなった気がします。私の周りではファーマーズマーケットは高いから行かない、という人も増えています。確かにホールフーズで買う方が安いです。
家賃も上がっています。なんせパンデミックと同時に金融が下がったので、不動産を買う人が増えて、提示した値段よりも2割多く払ってやっと家が買える、という売る方にはなんとも嬉しい状況が続きました。LA内でそこそこ治安のいい地区だと、小さなボロ屋でも1億ドル以上します。でもその家を改装しなくては住めないので、すでに改装された3部屋くらいの家は普通に2億ドルくらいします。賃貸を選んでも、家賃は2部屋で4,000ドル、3部屋だと5,000ドルくらいです。これは地域にもよりますが、うちの周りはそんな高相場です。
ただ、サンタモニカなどでは、最初に設定した家賃をあげられない「rent controle」という制度があるので、同じ物件に20年くらい住んでいる人は20年前のはるかに安い家賃でいまだに住んでいることも。引っ越すと家賃が2倍以上に上がってしまうから、みんな引っ越せないんです。逆に大家さんは出て行って欲しくてウズウズしている感じでしょうか。
と、こんな風にインフレでものすごく住みにくくなってはいるものの、企業によっては労働賃金を上げるところも増えてきました。基本的にアメリカの賃金は日本よりも高めです。アルバイトでも今最低時給15ドルはもらえるし、それにチップも加算されます。もちろん職種によって月給なども変わりますが、日本のサラリーマンに比べたらみんないいお給料をもらっています。まあ、お給料が高くないと生活できないから、比例しているのでしょうね。
私の周りはフリーランスの人が多いですが、例えば撮影の時に支払われるギャラは日本の数倍です。広告が多い、というのもありますが、1本が何千、何万ドル、という感じです。だから知り合いの日本人カメラマンは、もう日本からの仕事はできない、と言っていました。日本は小さな仕事を数多くこなす、アメリカはどーんと大きな仕事を数本、という感じでしょうか。
教育費について言えばさまざまですが、公立は無料で、私立は1ヶ月1,500ドル〜3,000ドルくらいです。我が家は私立と公立と、どちらも経験しています。お金に余裕があれば私立に行かせるのは良いと思うけれど、公立でも地区によってすごく変わってくるので、まずはその地区の学校を調べてから、子どもの性格に合った学校を選ぶのが一番いいかな、と思います。
例えば公立校で言えば、うちの娘達は、ずっとサンタモニカの学校に通っています。ロサンゼルスとは学区が違い、これまでずっとサンタモニカはマリブと同じ管轄でした。だからドネーションによる教育予算が結構ありました。ところが去年からマリブ側が離れたい、と要求してきたので、これからサンタモニカの予算は確実に減っていきます。それによってアートのクラスの先生を雇えないなど、さまざまな弊害が生まれます。実際、ロサンゼルスの公立校は、アートのクラスがない学校も多いようですから。
アメリカには、「チャータースクール」と呼ばれる学校があります。これは、90年代から増えつつある新しいタイプの公立校で、公募型研究開発校とも呼ばれるようです。親や教員、地域団体などが、州や学区の認可(チャーター)を受けて設ける初等中等学校で、公費によって運営されるものです。
面白いのは、チャータースクールは公立だけれど、一般の公立とは違い、親の協力が重要な割合を占めている学校なので個性があること。うちの子ども達が通っていた学校は、女優であり作家のジェーン・フォンダが作った学校だったので、すごくリベラルな風潮でした。また、ハリウッドに住んでいた時に通っていたチャータースクールは、親がハリウッドで働いている人が多かったので、やたらとイベントが多く、アート素材などはテレビで使ったものが流れてきて、いつも十分にありました。スターの多い学校に通っている友人の子どもは、ハロウィンにアデルの家に行ったとか、そんな話もよく聞きます。授業参観やビデオチャットなどでも知っている顔がたくさんいる、と言っていました。
現在は、長女が私立、次女が公立に通っています。私立のいいところは施設が綺麗で、生徒数が少ないこと。そして、先生と生徒の距離感が近く、学校でのイベントが多いことです。一方、公立校はマンモス校が多く、次女のマリナが通っているサンタモニカの高校はなんと3,000人。だけど、それを4つのグループに分けているので、思ったよりも先生方がしっかりと生徒を見てくれているし、クラブ活動も盛んです。
マリナはいま、高校の演劇部に所属していて、3月の公演に向けて猛練習中です。この学校はギリシャ風の屋外コンサート会場もあり、かつてカニエ・ウェストがコンサートをしにきたことが、この学校の自慢話になっています(笑)。同じ演劇部にはすでにNetflixのドラマに出てくる女の子も所属していますし、舞台装置などもハリウッドで働いている親たちがするので、結構本格的です。そう言った意味ではこの土地で演劇部に入れてよかったな、と思います。一昨年はコロナで公演がキャンセルになってしまったので、今年は公開できることになって本当に嬉しいです。
インフレで、生活スタイルも変わりつつあるアメリカですが、子ども達の教育についていえば、さまざまな道を選べるのがメリット。親がきちんとした目を持つことが、要求されているのかもしれませんね。
〈EMIKOさん連載〉
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