愛されでもない、トゲトゲでもない。みどりなす野に子を導くこと

Choice

子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て

名前
三浦瑠麗 / Lully Miura
家族
3人(10歳女の子)
所在地
東京都
お仕事
国際政治学者
URL
三浦瑠麗(@lullymiura) Instagram

子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て

久しぶりに穏やかな週末の一日を過ごしました。家族だけで食事をしたり、静かにテラスで本を読んで過ごしたり。こんがり焼けたベーコンとブルーベリーを添えたパンケーキの朝ごはんのあとは、星野温泉のあたりから伸びている小瀬林道を何キロも行って、1万歩以上も歩いて帰ってきました。

みんなのための水筒を入れた重いリュックサックを一生懸命背負って、「交代するよ」と言っても首を横に振って歩いていく娘。先ほど言われたちょっとした小言を根に持っているようで、意地でもなんでも荷物なんか持ってもらわないぞというそぶりです。

さっさと林道の先を行く娘を目の端に、妹に「こんなの覚えある?」というと、「覚えありすぎだよ」と、笑います。そうだったかしら。たしかに話しかけてもなかなか返事をしないことはあったけれど。妹曰く、黙ってリュックサックを背負って不機嫌にしているのはプライドのなせるわざだそう。次の楽しいことを見つけて機嫌を直すまで放っておくのが一番だけれど、あんまり構わないでおくのも機嫌を直すタイミングを見つけられないので良くないらしく、ほどほどに放っておいたら、とのことでした。妹の言う通り、林道の帰り道には甘えん坊に戻ってママの腕に絡まってくっついて歩くように。自分の着たい和服の小紋の柄行きを話したりして、疲れる足を励まして。それでも、荷物はとうとう一人で運びきりました。

行軍のあとのご褒美の温泉とサウナは、身体から疲労物質が洗い流されるようで、湯上りの冷たいお水と伊予柑の「ちゅうちゅうゼリー」ですっかりリフレッシュしたわたしたち。何度も水風呂に入るわたしに、「おお嫌だ、なんでそんなところに入れるのかしら」といいながら、妹と娘がサウナの前の木の腰掛のところで足首の柔らかさを比べっこしたり、こんなことが幸せだなと思ったのでした。

ちいさいころは自称気難し屋さんだった、五人兄弟の末っ子で9つ下の妹も、今では立派に大人になり、結婚してさっさと海外にわたってしまい、起業して頑張っています。放っておけばこれほどよく育つのであれば、親っていったい何をすればいいんでしょうかね。ただひたすら愛情を注いだり、叱ったりなだめたりしながらうまく加減していくしかないのでしょうか。

思春期特有の気難しさは、自分の感情をコントロールできないイライラから生じます。すべてをぶち壊してしまいたいほどの強い衝動が生まれなかったら、大人になっていくこともできないでしょう。いわゆる「いい子」が他人からの承認を求めすぎて、のちに誰か別な人への依存度を深めたり爆発したりすることがあるように、人生どこかで帳尻は合っているものなのです。愛されキャラであることとは、すなわちどこか別のところに負の部分を抱えることになりますから、親であるわたしとしては、そこまでいい子になってほしいとも、愛想を振りまいてほしいとも思いません。

けれども、相手の立場に立つことができずにトゲトゲとしたハリネズミになると、人は自分自身のことさえ傷つけてしまう場合もあります。時折活動家の人と共演したりするときに、一生懸命毛を逆立てて、こちらを睨んで身構えている様子を見ることがあります。そんなときわたしは、ああ、遅く来た反抗期をやっているんだなと思います。それ自体は結構なことだと思います。世に出ている人の中には、正義感に満ち溢れているタイプもいれば、社会に対する怒りを抱えている人もいますが、そのエネルギーはたいていその人自身が抱えている何かと切り離して論じることはできない。

なぜこうじゃないの?と叫ぶようにいうとき、それはその人自身が背負っている人間の業にも似た何かを受け渡されているような気がします。わたしは母親ですし、そして妹や弟のこともみてきた人生の経緯から、そんなハリネズミさんのことを嫌だとは思いません。むしろ、機会があればよく言うことを聞いてあげ、受け止めつつ距離をもって見守る以上にやれることはないと思って生きているのですね。ただ、相手の立場に立つことを人間はいつか覚えなくてはならない。おそらく、30過ぎになるまでに。

獅子は子どもを谷に蹴落とす、といいます。わたしは母ライオンとして子どもを谷には蹴落としません。しかし、わたしが究極的には問題を解決してやれない以上、自覚を促し、ある程度距離をもって見守るしかない。子どもが懸命に這い上がって、自分の棘を抜きつつ、みどりなす野について来られるように。

〈三浦瑠麗さん連載〉
子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て

       
  • 山小屋と猫

  • 山小屋の庭

  • 梅しごと

          
  • 大人の浴衣

  • 乾杯

  • 軽井沢の山小屋で、猫のジーナちゃんと。

  • 軽井沢の庭にキングサリの花が咲きました。黄色い花がチェーンのように連なる可憐な姿に、見とれてしまいます。

  • 娘は梅シロップが大好物。軽井沢の家では、2瓶もシロップ浸けしています。

  • 和服が好きな娘に、自分がはじめて買ってもらった大人の浴衣を着せました。東京の根津美術館を、パパと散歩。

  • ワイン風味のジュースを飲んで、ご満悦。