着るものが難しいお年ごろ。特別ないまを抱きしめて

Choice

子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て

名前
三浦瑠麗 / Lully Miura
家族
3人(11歳女の子)
所在地
東京都
お仕事
国際政治学者
URL
三浦瑠麗(@lullymiura) Instagram

子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て

子どもの背が高くなってきました。150センチを超えたあたりから、似合う服が乏しくなってきて、どこを探してもちょうど良いものがありません。子ども服といえば、デパートやセレクトショップに並んでいるものは、0歳児から3歳児までのものが一番かわいいと相場が決まっていて、あれだけ早く大きくなってサイズが合わなくなってしまうというのに、親が目に入れても痛くないほど可愛いうちに散財してしまうのが常です。

わたしが気に入ったデザインを手に、10歳、12歳のサイズを探して店員さんに尋ねると、そのサイズがもうなかったりする。はじめからたくさんは作っていないのでしょう。すぐに品切れてしまうようです。手足ばかりがどんどん伸び、ニキビが増え始めて、似合う服が少なくなってくると、親も一枚一枚の服にかけるお金をそこまで払いたくないと思うものなのでしょうか。

そんなあるとき、学校を終えて娘がオフィスにやってきて、わたしがコメントを寄せたので置いてあったファッション雑誌をしげしげと眺めているのに気づきました。20歳以上の女の子が読むような雑誌を、目を皿のようにして読んでいるのです。彼女がドッグイヤー(ページの端っこを折ること)していたのは、働く女性の一週間着回しコーデのコーナーでした。

おそらく彼女が欲しいようなアイテムが載っていたのでしょう。後で、こっそりドッグイヤーのところを読んでみると、ワンピースではなく、ジャケットのセットアップや、パンツスーツなど大人っぽいスタイルが並んでいます。小学校5年生でパンツスーツもないけれど、ジャケットへの興味は、大人の女性に対する憧れなのか。もともと娘はきれいなお姉さんに憧れるタイプで、はじめてジャケットを買ってあげたのは、小学校2年生。ミチコロンドンの、ジップがついている少しロックなデザインのピンストライプで、これもネットで注文してあげたものでした。本人が後生大事にしていたものだから、ほとんど着ないうちにちいさくなってしまいました。あれも、いま思えば背伸びしたい娘の願望だったのでしょう。ただ、小学校に着て行ったときには、男子にやいのやいの言われたせいで、ぷつっと学校には着ていかなくなりました。

「きっと格好いいと思ったから絡んできたんじゃないの?」とわたしは言ったのですが、どちらにせよあえて目立ちたくはないという気持ちだったよう。ところが、いまは娘も強くなってきて、男子に何を言われてもツンとして孤高を貫いている様子なので、買ってあげようと思い立ちました。だんだんと女性っぽくなってきた一方で、手足は棒切れのようで肩も小さく薄く、大人のものはまだ着られない。そんな年齢に着せる服は、結局売り場に大量に積まれたものになりがちです。ベーシックでジャカジャカ洗えて乾燥機にかけられて、ボロボロになるまでワンシーズン着倒せる。でも、ちょっと背伸びして買った服を大切に着てもらうというのも悪くないでしょう。

仕事の合間にネットサーフィンをして、160センチ位の子ども向けのもので、しっかりとしたカッティングのジャケットがないか調べてみました。結果的に見つけたのはラルフローレンのジャケット二点。ツイードのものと、白いさらっとした生地のもの。シンプルな三つボタンのジャケットは、ほどよく体にフィットしており、ジーンズを合わせても、ミニスカートを合わせてもかわいい。同時に、オックスフォードシャツも探したのですが、これがまたサイズがない。シンプルなスリムフィットの白いシャツを探すだけで、こんなに手間がかかるとは思いませんでした。少し悩んだのち、残り少ない在庫があるいくつかのブランドから何枚か、子ども用と大人用をサイズ違いで買うことにしました。ラルフローレンの細身の半袖シャツに、ザラの長袖シャツ。アニエスベーの大人用のシャツは、いまはダブルカフスみたいに袖を折って着てもらえば、そのうちすぐ手も伸びるでしょう。ただでも暑がりの娘には、シャツに組み合わせるセーターではなく、ベストを二枚。

いまの年齢にぴったりくるファッションを考えると、ワンパターンの制服に近づいてしまうのも不思議ですね。でも、どれもこれもかわいくて自然で、今年と来年着られるであろう素敵なワードローブが完成しました。

服が届いてからは、学校にかわるがわるシャツとベストにジーンズを着ていったのですが、ようやくジャケットを着る機会がめぐってきました。夫が週末に海外出張だったので、母娘で群馬県の高崎市に社会科見学のような日帰り旅行に行こうということになったとき、娘ははじめてジャケットを着ると言い出しました。晩秋には珍しいぽかぽかとした陽気。大人サイズのシャツの袖を折ってボタンを留め、ラルフローレンのツイードジャケットに袖を通し、ボトムにはブルージーンズ。少し高い位置でポニーテールにして、ウサギの絵柄の白いポシェットを斜めがけにし、颯爽と歩いていきます。東京駅丸の内北口に着くと、胸ポケットから子ども用Suicaを取り出し、改札にタッチする。新幹線口では、「ママ荷物もってあげようか?」と、わたしへの配慮も欠かしません。

新幹線の座席にゆったりと座って麦茶を飲み、お昼にはまだ早いね、と残りごはんと蕪の葉炒めで高菜おにぎりを真似て作ったお弁当をちらちらと横目で見ながら、他愛もないおしゃべりをします。母娘ふたり旅は楽しい。そう言うと夫が残念がりそうだけど、娘にとってママを独り占めできる機会はなかなかありません。行った先では、再会したホストに「大きくなったね」とびっくりされ、ちょっと得意げなようす。この前高崎に行ったのはコロナ前のお祭りのときですから、ぐんと成長したのは間違いありません。

いろいろと見学して学んで、ピザや焼きまんじゅうをお腹いっぱいごちそうになって、駅で改札を通る段になって、はたと「お握り食べるのを忘れてた!」と叫んだ娘。おうち帰って食べてもいいよ、と言うと安心して座席で寝落ちしました。子どもっぽさと背伸びしたい気持ちが同居している11歳。特別な時期だったな、とわたしもあとから振り返ることになるんでしょうね。今日も一日、お疲れさま。

〈三浦瑠麗さん連載〉
子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て

       
  • ジャケット

  • イベント

  • クルーザー

          
  • コーディネート

  • この日はじめて新しいジャケットを着て、母娘でデイトリップ。高崎に向かう新幹線のなかで。

  • 娘と出かけた高崎のイベントにて。本物のパンでできたミニチュアに見とれる。

  • 天気の良い日、お友だちのクルーザーで遊ぶ娘。

  • 白シャツにZARAのベスト、ボトムスにはバーバリーのジーンズをコーディネート。