東京を離れて軽井沢での子育て日記「森のくらし11月」

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こどもが教えてくれる軽井沢森のくらし

名前
川上ミホ / Miho Kawakami
家族
3人(5歳の女の子)
所在地
長野県軽井沢
お仕事
料理家、エッセイスト
URL1
川上ミホ オフィシャルHP
URL2
miho.kawakami.5 Instagram
URL3
miho.kawakami.works Instagram

秋から冬へ移りかわる11月の軽井沢は忙しい。
森はもちろん、街路樹や庭などあらゆる樹々が色づき、紅葉を楽しむ人々で町はにぎわいます。
散る時は一瞬で、雪が降るかのようにサラサラぽたぽたと葉が落ちてきて、あっという間に庭が枯れ葉のじゅうたんに。
わが家はそれをやがて土に還すために庭の一角に山にするのだけれど、これを見つけた子どもたちは目を輝かせわき目もふらずに飛び込みます。
カサカサとして思うよりも弾力に欠ける。すると、軽い葉の束を両手で掴んで空に放り投げて遊び出す。歓声とともに何度も何度も落ち葉がひらひらと舞い上がる。
そのうちぶつけ合いになって誰かが泣きべそかいたりもするけれど、まぁよく飽きずにやるものだと感心するものです。

一昨日は、雪が降る前に山に登ろう!と急遽幼稚園で決まったという登山に行ってきました。
ちょっとした山で、子どもの足にはなかなかのもの。大人たちは「きっと、途中で泣く子が出たり、疲れて帰ってくるのではないか」と思いながら解散時間にお迎えに。
けれど、どの子も足取り軽く笑顔で戻ってきた。いや、天気がよかったとはいえ気温は最高でも10度程度、さらに強風吹きすさぶ中での登山はそれぞれドラマもあったはず。それでも、どの顔も満ち足りていて、しかも道々拾ったと思われるススキやドングリやなんだかよくわからない枝や石を手にしている。さらに、それからリュックやアウターを脱ぎ捨てて、その辺の坂をごろんごろんと転がり出した・・・!何人か集まって「一緒に転がろう!せーの!」ごろんごろん・・・ごつん!きゃー!ぎゃー!
これを大人たちも止めません。「これは帰ろうって言えないよねー。。」と、30分あまりおしゃべりしながら待つのみ。

なんの目的がなくとも、感触が楽しいとかふわふわしているとか。もう子どもしか理解できない理由で、なんでものないものが宝物になる。なんの使い道がなくとも、その子にとってステキなものであったり気になるものだったりする。なんでもない坂が、遊び場になる。
大人にとってなんでもないものでも、子どもの目には価値がある。


自然の中ではこどもの解像度に驚き感動することが、とても多いです。
その度に私は、人間にとって大切な生きるための本能や好奇心が発揮されている、と感じています。

ジャン=ジャック・ルソーによれば、自然は人を人間にするものの3本の柱のひとつなのだそう。知識や道徳の前に育つべき感性・感覚という才能。子どもには子どもの世界があり、大人のそれとはちょっと違うのです。



私にとっての森の暮らしは、私の中の常識や凝り固まっていた感覚を溶かす経験。
きっと街でも子どもは同じように見えているのかもしれないけれど、街の中では私は色々なことが気になって純粋に子どもの姿を見ることができなかったよう。大人のルールを押し付けることもあったし、子どもの目線に腰を落とす時間的・精神的な余裕もなかったと思います(今もそういうことはあります)。

子どもと一緒に見る森の景色は新しく楽しい。自分の中の生き物としての感覚を、子どもの姿が思い出させてくれる気がしています。

〈川上ミホさん連載〉
子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし

       
  • はじめて迎える秋

  • ご機嫌♪

  • 幼稚園児たちが登った山

          
  • あっという間に落ち葉がたくさん。
    最初は手伝ってくれるつもりだったらしい娘。手に持ったほうきはあっという間に遊び道具に。

  • 登山が楽しみで、朝からウキウキ。

  • 標高1100メートル超え。大人の足でも1時間以上かかるコース。