浅間山が噴火したら? 子どもと自然災害について日頃から話し合って

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子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし

名前
川上ミホ / Miho Kawakami
家族
3人(7歳の女の子)
所在地
長野県軽井沢
お仕事
料理家、エッセイスト
URL
川上ミホ オフィシャルHP
URL1
miho.kawakami.5
URL2
miho.kawakami.works

子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし

このたびの能登半島地震により被災されたみなさま、そのご家族のみなさまに心よりお見舞い申し上げます。

私も石川県の風景や能登の文化が好きで、幾度となく足を運びました。輪島の朝市や宿で出会った穏やかであたたかい笑顔や、ひたむきに伝統を守りその中で挑戦を重ねていく実直なものづくりなど、厳しい自然環境の中でもたくましく前向きに生きる人々の姿が目に焼きついています。

大切なものを失われたり、これからの暮らしの見通しの立たない方も多くいらっしゃるでしょう。穏やかなお正月に起きた突然の大きな災害に、被災された方々を思うと胸が苦しいです。

友人の中にはいちはやく避難生活をサポートするために現地の料理人の方々とともに炊き出しなどに携わる人や、福祉の面で高齢の方の健康を守ろうと奮闘している人もいます。 大きな災害が起きるたびにすぐに行動できる彼らをまぶしく尊敬の気持ちで眺める反面、そこ に加われない自分の無力さを恥じる気持ちがわいてしまうのですが、さまざまな形でサポートできることを知って以来、自分にできることを大切にしていこうと決めました。

春以降、私がフードディレクターとして立ち上げに携わった軽井沢public食堂で、食堂がお休みの日に場所をお借りして能登支援のためのイベントを開催予定で、スケジュールが決まり次第私のinstagramで告知いたします。もし軽井沢にお越しになるタイミングと合いましたら、お心を寄せていただけますと幸いです。

実は、浅間山という活火山を擁する北佐久・小諸エリア(軽井沢はその東端に位置します)にとって自然災害という言葉は身近です。地域住民にとって浅間山は親しみと畏敬の対象であるシンボリックな存在であると同時に、近年だけでも2008、2009年には火砕物が降下する小規模レベルの噴火が、2015、2019年にはごく小規模ながら1800メートルも噴煙が上がるような噴火が起きているのをみると、常に噴火する危険性のある山であることを実感します。
浅間山の噴火警戒レベルが変更になると必ず話題になるし、子どもたちの学校では火災や地震、 不審者からの避難訓練に加えて、保護者も参加しての浅間山噴火時の緊急引き渡し訓練が行われています。
わが家は、大規模な噴火が起きたら15分以内に空振(編集部注:火山噴火などにより発生した空気の急激な圧力変化が、大気中に伝わる現象。強力な空振では窓ガラスが破損するなどの被害が発生)や火砕サージ(火山灰や土砂、ガスを含む数百度以上・時速60-100キロの高温の爆風)が到達する可能性のあるエリアに位置しているため、何かあった場合、とにかくすぐに逃げ出せるように避難グッズは常に車に積み込んでいるし、娘とも何かあったときにどう行動するか、何を優先するかについて具体的に話し合っていて、想定外のことが起きてもできるだけ自分で安全を確保するための準備をしています。

ここだけご覧いただくと、「なぜ、そんな危険なところに住んでいるの?」と言われてしまいそうなのですが、ここは過去の大規模噴火による消失と200余年の時を経て再生してきた自然のエネルギーと生命の営みを感じられる土地。日常の中に、厳しい環境の中で育まれる生命の輝きに感動する機会があります。短いサイクルの中にも力強く生き、生命や世代をつないでいく動植物の儚さと力強さに感動や学びがあり、私たちもその一部であることを感じざるを得ません。


軽井沢にやってきてもうすぐ5年目に入りますが、数年前から娘の興味の対象は「森」になりました。学校で小さなプロジェクトを立ち上げたり、「森」に携わる方のお話を聞きにいったり、 興味を起点に少しずつ行動を起こし始めています。


今年は「そもそも森ってどんなもの?」という 基本にたちかえって、"感じる"から"学ぶ"への一歩を踏み出しました。森をはじめとする生き物たち生命のいとなみは、単なる弱肉強食や生存競争だけではなく、種を超えた複雑な依存・助け合いのシステムや支え合い、コミュニケーションがあること、生理的最適生活域だけでなく生態的最適生活域で群落をつくって生きていく動植物がいることを知り、「ひとも一緒だねー」と感想を漏らしています。

春のイベントでは娘も「私も何かできることを」とボランティア活動を考えているようなので、どうぞよろしくお願いいたします。


〈川上ミホさん連載〉
子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし

       
  • わが家の避難グッズ

  • 暖冬でも雪の多かったこの冬の軽井沢

  • 家族で冬の屋久島へ

          
  • 屋久島の大自然に触れて

  • 非常用リュックには携帯トイレ、サバイバル浄水器、太陽光充電器、羊羹などが入っています。箱には3人×7日分の非常食、水、野菜ジュースのペットボトル。そのほか毛布などもいつも積んであるので、緊急時には車ですぐに避難できます。

  • わが家があるエリアは、自治体主導の雪かきチームが来るのも最後。日頃から「自分たちで助け合ってなんとかする」の精神が育まれるなぁと思っています。能登半島の震災をきっかけにオフグリッドについても模索を始めました。

  • 去年に続き今年も早々に屋久島を再訪しました。森に興味がある娘は、今回も森についてのいろいろなお話を聞くことができ、大きな収穫を得たようです。

  • 森について学んだ旅となりました。