友人家族と訪れた石巻の浜で子どもと感じた自然や人とのつながりの「ありがたさ」。

子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし
- 名前
- 川上ミホ / Miho Kawakami
- 家族
- 3人(6歳の女の子)
- 所在地
- 長野県軽井沢
- お仕事
- 料理家、エッセイスト
- URL
- 川上ミホ オフィシャルHP
- URL1
- miho.kawakami.5
- URL2
- miho.kawakami.works
【子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし】
先日、友人家族の案内で宮城県・石巻に行ってきました。 実は私、軽井沢を拠点に長野が好きになりすぎて、ここ2、3年すっかり山の人に。物理的に海が遠くなったというのもあり、完全に関心が薄れておりました。もともと都市派の夫もそんな私を引っ張って行くほどには海好きな訳でもなく、必然的にわが家のフィールドは山、森、時々都会。
友人は数年前から石巻の復興支援関連のプロジェクトを手伝っているそうで、帰ってくるたびに興奮気味に話をし、今回も「いいところだから、みんなを連れて行きたい!」と旅を企画してくれたのでした。
石巻はいうまでもなく海の町です。 複雑に入り組んだ湾、それぞれに魅力のある浜を備え、世界三大漁場に数えられる三陸金華山沖を抱えています。牡蠣やホタテなどの養殖、沿岸漁業、そして古くから遠洋漁業の港でもあり、その豊かさとともに栄えてきた土地です。
今回お世話になった「浜の暮らしの はまぐり堂」さんは、石巻の市街地から車で20分ほどの橋をひとつ渡った牡鹿半島のはまぐり浜にあります。あの震災で壊滅的な被害を受けた石巻ですが、はまぐり浜も例外ではなく10世帯ほどの小さな集落のうち、残ったのは高台の数軒のみ。
8年以上の時間をかけて浜の復興工事は完了したものの超限界集落となってしまった浜の暮らしをなんとか維持しようと、人の交流やものづくりの拠点として、この浜で生まれ育った亀山さんが立ち上げたのが「浜の暮らしの はまぐり堂」だそうです。
「浜へ行きましょう」という亀山さんについて浜へ行くと、タコを捕まえるための仕掛けが! 子どもたちが ロープをひくとカゴの中にはタコにカニにヒトデ!!!
生きているタコなんて水族館でしか見たことのない子どもたち(大人も)は、大騒ぎ&大喜びです! 娘が素手でむんずとつかんでバケツに入れると、亀山さんはタコのしめ方を教えてくれました。その場でさばいて、食べられないところは海へ。それは海の生き物たちの食べ物になる無駄にならないやり方。慣れた手つきに、浜の人には当たり前のことなのだとわかりました。
はまぐり堂に戻ってのお昼ごはんは、つやつやのおむすびに、かぼちゃの煮物、海藻たっぷりのお味噌汁、浜のお母さん直伝の茎わかめのサラダ、鯖の唐揚げ南蛮などなどテーブルいっぱいに並べられたごちそうと、さっきのタコを使った「タコぽっきん」。 ムギュッと程よく弾力があって、噛みしめるほどに旨みが広がります。 子どもも大人も「おいしい! おいしい!」と言いながら、あっという間に平らげてしまったのでした。
楽しい浜での時間に後ろ髪をひかれながら帰宅して3日後。 おみやげに持たせてくれたタコをぽっきんにして、夕食にいただいているときに娘が言いました。 「ありがたいね。おいしいね」 。「ありがたい」の意図を追求はしなかったけれど、それは浜で過ごした1日に娘が何か大切なものを受け取った証のような気がしたのでした。
いろいろあって、今「浜の暮らしの はまぐり堂」は日にちを限定した予約制でカフェ運営をしていらっしゃいます。基本的にお客さんは大人のみです。 けれど、亀山さんがおっしゃっていたように、浜の豊かな恵みをいただくカフェだけでなく、いつかこの浜の暮らしそのものの豊かさを大人も子どもも受け取れる機会ができたらいいなと願っています。
こちらの記事にはには、亀山さんが取材でお話しなさった「浜の暮らしの はまぐり堂」の成り立ちや、奥さんの理子さんのnoteで綴っていらっしゃる浜の暮らしと「ネイティブ・ジャパニーズ」としての生き方など、シェアしたいことがたくさん。
読んでみて、私が今憧れて目指そうとしているもの、それから子どもに身につけてほしい生きる力のことって 「ネイティブ・ジャパニーズ」に通じるものがあると思いました。子どもに自然を経験させることは自然派教育と呼ばれることも多いけれど、教育と構えなくても、その環境に身をおくことで子どもたちは何かを感じ、何かを学ぶのかもしれません。自然はもちろんのこと幅広い年齢・地域、人とのつながりの中で感じること、育つことを大切にしたいと改めて感じました。
追伸、 はまぐり堂の亀山さん、理子さん、しょうこさん、本当にお世話になりました。また季節の折々に浜に伺います。 そして、この旅に誘ってくれた大山家と窪川家、あたたかく迎えてくれた石巻のみなさん(芦沢さん、今村さん、亨子さんなどなど)、ありがとうございました。 コロナ禍に再確認した「人と人とのつながりのありがたさ」を石巻で改めて感じました。 世界を広げてくれる友の存在に、心から感謝を。
〈川上ミホさん連載〉
子どもが教えてくれる軽井沢森のくらし