移住から1年|多民族が入り混じるロンドンで親も学ぶダイバーシティ社会の掟

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ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース

名前
秋元玲奈 / Rena Akimoto
家族
5人(5歳の男の子、1歳の双子の男の子)
所在地
ロンドン
お仕事
フリーアナウンサー
URL
秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
URL1
Rena Akimoto Official Website

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
チャールズ国王の戴冠式が終わり、ロンドンは初夏の訪れを迎えています。

日中の時間が長くなり、夜8時を過ぎても明るい光景が広がっていると、なんだか得した気分に浸ることができるのはヨーロッパならではのことかもしれません。ロンドンはこれから短い期間ではありますが、雨も少なく、暑過ぎない、爽やかな季節に突入します。

私たち家族も移住してから7月で約1年を迎えます。

こちらの生活に溶け込むのが早かった長男は、学校生活を謳歌しています。日本のインターナショナルスクール仕込みで、アメリカ寄りだった英語のアクセントも少しずつキングズイングリッシュに。放課後は、スイミング、ドラマスクール、ピアノに加え、最近新たに柔道と学校の数学クラブも始めました。5歳児にとってはなかなかのハードスケジュールですが、文句ひとつ言わず、それらをすべて彼なりに思いっきり楽しんでいるから、親としては嬉しい限り。日々の成長に目を細めています。

そして私自身も、この1年で友だちがたくさんでき、平日は子どもを送った後、他のママたちとお茶を楽しんだり、週末、家族何組かで集まってピクニックをしたり、日本にいる時よりも人と会う機会やイベ ントに恵まれていると感じる、充実した日々を過ごしています。

この1年で感じたロンドン生活における一番の収穫を聞かれたら、迷わず、「多民族社会に身を置いているということ」と答えるでしょう。私たちが住むロンドン中心部は人種のるつぼと言えます。さまざまなバックグラウンドや文化を持つ人々の中に飛び込み、日々の生活の中で今まで出 会ったことのない価値観や考え方に触れることは、子どもたちのみならず、大人の私にとっても沢山の学びや刺激に溢れています。

移住して少し経った頃、こうした環境に身を置くことで、とても勉強になったと感じる出来事がありました。

長男の友だちの誕生会に出席した際、お迎えの時などによく話をするお母さんが会話の流れの中で、 「日本の人は生きてるものをそのまま食べるんでしょ? あと亀も食べるのよね?」と尋ねてきたのです。 局アナ時代、海外スポーツ選手から日本の食についての質問を受けることが多かったことを思い出しました。 この人も日本の食に興味があるのだろう、わざわざ日本の話を聞いてくれるなんてありがたいなと思い、「タコの踊り食いやスッポン鍋のことですね」なんて普通に答えていたのですが、 一連の会話を隣で聞いていた別のお母さんが急に私の手を引いて、質問をしたお母さんから少し離れたところに連れて行きました。


何事かと思って彼女に話を聞くと、

「あんなことを聞いて、彼女はレイシスト(人種差別主義者)よ!」とすごい剣幕で怒っているのです。

その時、ハッとさせられました。

日本のことを尋ねてきたお母さんはいつも礼儀正しく、その人がレイシストだと私は思いません。 しかし、後日この出来事を他の友人たちに話してみると、ほぼ全員が「ロンドンではそのような発言は許されない」と口を揃えました。

メディアの世界で働く人間として、偏見や差別的な発言について敏感でいるよう、日本にいる時から常にアンテナを張りめぐらせているつもりでした。しかし、私自身が彼女の質問に対して、それほど違和感を感じなかったということは、ロンドンのスタンダードに比べ、まだまだその感度が低いということを意味しているのかもしれません。

おそらく質問をした彼女も差別をする意図などまったくなかったと思います。ですが、多民族が入り混じる都市においては、自分が考えているその何倍も発言に注意をしないと、思わぬ誤解を生んでしまうということをまざまざと感じさせられる出来事で、私自身も身が引き締まる思いでした。

すべての国際社会においてこの質問が共通でNGとは言えないかもしれません。しかし、少なくともロンドン社会におけるスタンダードではNGであり、これを早い段階で学ぶ機会があったことをとてもありがたく思います。多民族が共生するロンドンでの生活は、さまざまな文化や宗教、考え方を持つ人々との交流の機会を提供し、国際的な視野を持った個人としての成長を促してくれます。


貴重な環境での生活を楽しみながらも、多様性社会を生きるひとりとしての感覚をより研ぎ澄ませ、子どもたちと一緒に自己も成長させていきたいと強く感じた、ロンドンでの最初の1年となりました。



<秋元玲奈さん連載>
ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース

       
  • 初夏のロンドンでは、毎週のようにピクニック

  • 学校の課外授業に参加

  • ロンドンで出会ったママ友たち

          
  • 長男は多様性社会にすっかり溶け込んで

  • ここ最近のロンドンは晴天続きで、ほぼ毎週ピクニックをしています。芝生のある広場が沢山あるので、子連れにはありがたいです。

  • 5月には学校の課外授業に参加しました。こうした機会も親にとっては学びが多くあるので、積極的に参加するようにしています。

  • 育ってきた環境や文化、何もかも違うけれど、それらをお互いに認め合い、尊重する関係性。素晴らしい出会いに感謝です。

  • 東京からロンドンへと、突然の環境の変化にも関わらず、多様性社会を自然と受け入れている長男。日本にいた時と同じように、分け隔てなく、誰とでもすぐに友だちになる姿からも学ぶことが沢山あります。