身近でもイギリスの学校では教えない紛争問題、 子どもにどう伝える?
ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 家族
- 5人(6歳の男の子、2歳の双子の男の子)
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
3週間以上の長い冬休みが終わり、 我が家は通常モードに戻りました。
それと同時に秋から始まってほぼ毎週末ロンドン中心部で行われていたイスラエル・パレスチナ問題に関するデモも年が明け、 再び活発に行われるようになりました。 有事に備えて上空を飛ぶヘリコプターの音を聞いたり、 国旗やプラカードを持つ人を目にする度に、 まだ日常を取り戻せていない人々が世界には沢山いることを改めて考えさせられ、 胸が傷みます。
ロンドン中心街に住んでいる我が家は、 混乱に巻き込まれる可能性もあるので、 デモが行われる場所には近づかないよう気をつけてはいるのですが、 それでもその影響を避けるのは難しく、 6歳長男が初めて大規模なデモを目の当たりにするということもありました。
そんな時、 「なんで、 旗を持っているの?」 や、プラカードに書かれた言葉を読んで 「どうして自由になれないの?」 など、思いつくまま疑問を次々とぶつけてきます。 親としては、 この複雑な問題をどのように説明すべきか悩ましいところです。 ロンドンでは、 様々なバックグラウンドを持つ人々が共存していて、 イスラエル、 パレスチナに限らず、 紛争地域を祖国とする子どもたちも長男の学校に何人か在籍しています。
そのため、 こうしたデモ活動や紛争についてより一層身近なことと感じる一方、 子どもに対してはバイアスのかからない説明が求められます。
しかし、 意外なことにイギリスの教育現場では紛争問題に触れることが今はほとんどないようです。 長男に聞いてみると、 これだけ大規模なデモが頻繁にあるにも関わらず、 先生方が紛争の話に触れることは一切ないそうです。
小学校に限らず、 イギリスの大手メディアによると、 多くの中学高校ではこれまで歴史で習っていたはずのイスラエル・パレスチナ問題を今はとてもセンシティブなトピックであるために避ける傾向があるとのこと。
ある学校では、 両親がガザ出身の子どもがコートの腕にパレスチナの国旗のワッペンを貼って登校したところ、 外すよう親に要求した学校側に対し、 他の保護者による抗議活動に発展するという事態に至ったことがあったそう。 そんなことも起こり得る状況なので、 国際問題を授業で扱うのは避けたいと言う学校側の考えは理解できます。
身近な問題である一方、 学校で触れられることがほぼなくなってしまったイスラエル・パレスチナ地域の問題。我が家ではどのように伝えるべきか模索していたところ、 長男のクラスで歴史の授業が本格的に始まりました。
私も30年前に住んでいた頃に習ったイギリスの歴史の授業の一番最初の章、 ヘースティングスの戦いについて習ったようで、 嬉しそうにその概要を教えてくれました。 ノルマンディー公ウィリアムが当時イングランドを支配していたハロルド王を倒し、 イングランドを征服したという史実。
「土地を巡る戦いで沢山の人が死んでしまうと言うのは何千年経った今も変わらないね」 と長男に話してみると、「今もあるの?」 と少し驚いた様子。
「この間、 国旗を持って歩いてる人を見たでしょ? あの人たちはそういう戦争をもうやめよう。 と言っている人たちなのよ」
歴史の中で習った出来事と現代の争いに通じる共通点に気づいた長男。
すると、 正義感が人一倍強い彼のスイッチが急に入りました。
「じゃあ僕は将来歴史の先生になって、 歴史をもっと勉強するように子どもたちに教える!」
「それかじいじみたいに世界を飛び回って喧嘩をやめさせるんだ!」 (私の父が外交官だったことを最近話したので)と鼻息荒く宣言。
おぉ、 、 、 なんだか親の予想を遥かに超える反応が返ってきたなと、 若干とまどいつつも、 子どもの持つ純粋な心にほっこりさせられました。
ロンドンで生活することでより一層身近に感じることになった世界の紛争問題。 ニュースなどを通じて知る現実は目を覆いたくなるものばかりですが、 親子の対話を通じて、 子どもの純粋な信念が、 平和な未来を築く手助けになることへの期待が膨らみ、 小さな希望の光が見えた感慨深い瞬間となりました。
<秋元玲奈さん連載>
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