ロンドンの母校を30年ぶりに訪問|過去の自分と双子の姿が重なって

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 家族
- 5人(7歳の男の子、3歳の双子の男の子)
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
双子がナーサリーに通い始め、ようやく訪れた「自分時間」。その貴重な時間をどう使おうかと考えたとき、すぐに思い浮かんだのは、30年前に通っていたロンドンの小学校を訪れることでした。
私がロンドンに引っ越したのは6歳のとき。父の仕事の都合で家族とともに渡英し、2歳上の姉と一緒に通ったのは、ハムステッドの閑静な住宅街にある小学校でした。普段は記憶が曖昧なほうなのに、この学校での出来事だけは驚くほど鮮明に覚えています。
突然の異国での暮らし。英語もまったく分からないまま、日本の幼稚園からいきなり現地校に飛び込んだのですから、その衝撃は相当なものだったはず。
それでも、初めて教室のドアを開けたときの胸の高鳴り、ホッケーなど知らなかったスポーツに触れた体育の授業のワクワク感、休み時間に響く笑い声、ランチタイムに漂うミネストローネの香り。どれもが、ロンドンで過ごしたかけがえのない日々を彩る大切な記憶です。
今回の訪問には、当時の親友ルーシーが付き添ってくれました。彼女とはFacebookを通じて日本にいる頃から連絡を取り合い、私がロンドンに戻ってから30年ぶりに再会。最近では、お互いの家を行き来するほどのママ友になりました。
そして迎えた、30年ぶりの母校訪問。
私たちが出会ったあの場所の前に、今ふたりで並んで立っている。まるで時間が折り重なったような、不思議な感覚に包まれました。
30年の時を感じさせず、思い出のまま留めてくれたのは、この街の魅力そのもの。ロンドンはまるで時が止まったかのように、景色も建物もまったく変わらないのです。
「あの非常階段で、お姫様ごっこをしたよね!」
「あなたはいつも『アラジン』のジャスミン役で、私は『美女と野獣』のベルだった!」
「放課後は、一緒に乗馬クラブへ行ったね!」
「そうそう、体育の先生と一緒に通ったよね。でも、あの乗馬クラブはもうなくなってしまったんだって」
あふれ出す思い出に、話は尽きません。
それにしても、不思議です。私は英語がまったく話せない状態でこの学校に入学したはずなのに、苦労した記憶がほとんどありません。ルーシーに聞いてみると、「あなたが英語を話せなかったなんて、まったく覚えていない」と言うのです。
確かに、初めの頃は学校の放課後に姉と英語の補習授業を受けていた記憶はあります。でも、それ以上に「言葉が通じなくて困った」という実感がないのです。
思い出すのは、入学して間もないころの出来事。姉がクラスメートから仲間外れにされていると聞きつけた私は、その子に直接、「なぜ仲間に入れないの?」と問い詰めました。驚いたその子は、翌日から姉を受け入れ、その後2人は親友に。
家族の間で語り継がれるエピソードですが、今になって不思議なのは、英語が話せなかったはずの私が、どうやってその子に気持ちを伝えたのかということです。
そんなことを考えながら、ふと我が家の3歳の双子に目をやると......。
ナーサリーに通い始めて2カ月。家では日本語だったはずの2人が、いつの間にか英語で会話をしているのです!
"This is mine. No touching, please."
"Have you seen my socks?"
次々と飛び出す英語のフレーズ。さらには、先生と生徒ごっこを始めることも。耳で聞いた先生の口調を真似して、先生になりきる姿には思わず笑みがこぼれます。
子どもの言語吸収能力には、改めて驚かされます。先生や友だちが使っている単語や表現を、自然と耳で覚え、実際の会話で試しながらどんどん定着させていく。まるで、スポンジが水を吸収するように。
おそらく、30年前の私も同じように英語を身につけていったのでしょう。気づかないうちに、そして特に苦労することなく。母校を訪れ、懐かしい記憶とともに、過去の自分と今の双子の姿が重なった一日でした。
〈秋元玲奈さん連載〉
ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース