イギリスで話題の「アドレセンス」を観て考えるネット時代の子どもたち

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ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース

名前
秋元玲奈 / Rena Akimoto
家族
5人(7歳の男の子、3歳の双子の男の子)
所在地
ロンドン
お仕事
フリーアナウンサー
URL
秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
URL1
Rena Akimoto Official Website

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース

Netflixの『アドレセンス』、 観た?」

そんなひと言から、春先のママ友ランチ会が始まりました。イギリスに住む私の周りでは、少し前からこの話題でもちきりです。

私は作品の存在は知っていたけれど、何となく後回しにしていました。ところが、集まったママたちは、「観たよ、すごかった」「しばらく頭から離れなかった」と次々に話し出し、完全に話題に乗り遅れてしまった私。

「え、そんなに話題なの?」と驚く私に、「あれ、まだ観てない?スターマー首相までコメントしてたんだよ」と言われて、ますます気になることに。イギリスの首相が「オンライン上のリスクを考えるうえで意義のある作品だ」として、高校での上映を提案するほどだったのです。

どれどれ、とさっそく観てみた「アドレセンス」は、スマホとSNSのある世界で育つ若者たちの姿を追ったフィクション。不安や孤独、自分自身の見え方へのこだわり、そして思いがけない行動に至るまでの過程が描かれていて、見終わったあともしばらく胸の奥がざわざわしていました。

私が思春期を過ごしたのは、まだ携帯電話が出始めた頃。SNSもなければ、ネットで誰かとつながるという感覚もありませんでした。だからこそ、この作品に出てきた若者たちが直面している複雑な状況や心理には、正直、驚かされました。

SNS上での評価がすべてのように思い込んだり、過剰に自分を演出してしまったり、とんでもない行動に出てしまったり。親世代には想像もつかないスピードで、SNSなどを通じ、価値観が形成され、拡散されていくこの時代に、子どもたちは確かに生きているのだと、改めて思い知らされたのです。

わが家の長男はまだ7歳で、スマホはもちろん持っていません。でも、「この先、いつかは与えることになるだろうな」「SNSに興味を持ち始めるんだろうな」と思うと、自然と考え込んでしまいます。

何歳になったら?どんな使い方なら安心なの?

そんなとき、もう一つ気になっていた本をようやく読み始めました。こちらもイギリスのママ友に勧められた、ジョナサン・ハイトの『The Anxious Generation(不安の世代)』。

子どもたちの不安や抑うつの増加が、スマホやSNSの普及と深く関係しているという指摘は、とても考えさせられるものでした。そして彼の「思春期まではスマホを与えるべきではない」という提案も、理にかなっているように感じました。

でも、現実の子育ては理屈どおりにはいかないことばかり。長男のクラスにはさすがにまだスマホを持っている子はいませんが、タブレットやゲーム機を使ってメッセージのやり取りをしているという話はたまに耳にします。周りが始めていると、「うちはまだ早いかな」と思いつつも、いよいよその時期が迫っているのを感じて、内心ドキドキしています。

一方で、子どもたちの学校では「オンライン・セーフティ」の講座があり、保護者向けの学びの機会も定期的に用意されています。子どもたちにも、ネットの使い方について考える授業があるようで、長男も「オンライン上で知らない人から話しかけられても軽々しく交流してはいけない」としっかり心得ています。まだスマホを持っていない今からこうした基本的な教育をしてくれるのはありがたく思います。

我が家では今できることを!と思い、できる限りテレビやタブレットを見る時間を一緒に決めたり、YouTubeで観た動画について「それって本当かな?」と一緒に調べるようにしてます。オンライン上に散りばめられた情報はすべて真実とは限らない。そして情報はただ受け取るものではなく、自分で考えて向き合うもの。その姿勢を少しずつでも身につけてくれたら、、。そんな願いを込めながら、試行錯誤の日々です。

ネットやスマホとのつき合い方に、「これが正解」というものはきっとありません。だからこそ、親としても答えを急がず、その時々で立ち止まりながら考えていくしかないのだと思います。

スクリーンの向こう側にある世界が、子どもにとってできるだけ安心できる場であるように。そんな願いを胸に、画面のこちら側では、親としてできる限りの準備をしていたい。

ネット時代の親として、私自身も、「アドレセンス」をきっかけに、気持ちを新たにして備えを始めています。


〈秋元玲奈さん連載〉
ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース


       
  • ママ友のおすすめで読んだ本

  • ロンドンでのイースターホリデー

  • 大人気のマインクラフト映画!

          
  • STEM Weekのコスチューム

  • ママ友は、このジョナサン・ハイトの『The Anxious Generation』を読んで、タブレットやテレビをいっさい禁止にしたとか。私はそこまではできませんでしたが、天気の良い日はできる限り出かけて、デジタルのものと接する時間が短くなるように心がけています。

  • 4月下旬、イギリスはイースターホリデーでした。お友だちのプライベートガーデンでピクニックやエッグハントをさせてもらい、イースター気分を満喫しました。

  • 長男のクラスではマインクラフトが大ブーム。公開中の映画を長男は2回も観に行きました!

  • 学校のSTEM Weekに双子はBBCでお馴染みのアニメ、Numberblocks(ナンバーブロックス)の1になりました! 長男はナンバーブロックスを観て一気に算数好きになったので、おすすめです!