新学期が始まり学校生活とニューヨークの公教育事情について思うこと

子育ても仕事も自分らしく彩るマンハッタンの暮らし
- 名前
- 小浪良子 / Ryoko Konami
- 家族
- 3人(夫、7歳の女の子)と8歳の豆柴
- 所在地
- ニューヨーク
- お仕事
- IROHA NYC経営
- URL
- 小浪良子 / Ryoko Konami インスタグラム
- URL1
- IROHA NYC
【子育ても仕事も自分らしく彩るマンハッタンの暮らし】
長い夏休みが明け、楽しかった毎日が恋しいのか学校へ行きたくない日がちょこちょこ見受けられた娘ですが、新学期からひと月が過ぎやっと元気が出てきたようです。
マインクラフトにどハマりしてる娘、一時は学校を辞めてマイクラの世界で生きたと言うので、長い冬の間は私も家にこもりがちになるし日本で暮らすのもありかも?と呑気に考えたりしていましたが、本人からしたら「毎日行きたくない学校に行かなきゃいけない」って結構プレッシャーですよね。そして夏休み明けに活力をなくす気持ちもわかります。
ニューヨークの公立校は出席率に厳しいので、その辺りの懸念はありますが冬の間は現地校を休み日本の学校へ転入させているお子さんもいたので、できる範囲の選択肢を視野に入れておくのは良いかもしれません。朝は静かですが帰りは友だちとキャーキャー言いながら帰ってくるので、お友だちとのプレイデートで心を育む時間は大切にしたいです。
アメリカでは夏休み中の学習や体験の違いによって起こるSummer Learning Loss(*1)の問題も多く、一部の子どもの算数や読解力が大きく低下するそうです。学びの機会もお金次第で格差が拡大するといわれるアメリカですが、ニューヨーク市はSummer Risingという、夏休み中に無料でさまざまな学習や体験・食事の提供のほか、学習障害や言語に対する支援があって、共働き世帯の支援、学力格差の縮小に役立っています。
毎年夏の間はニューヨークを離れるので一度も通ったことがないのですが、ELL(*2)の子どもたちのサポートもそこで継続されていたり、質の違いはあるかもしれませんが、それはなんにせよ本人の生かし方次第、案外お金がかからないオプションも多い街です。
先日のアメリカ技術者就労ビザの制限に関するニュースを見ると、今までは移民に頼ってきた分、どうやってアメリカで理数系人材を育て、底上げしていくのかも気になります。
そして最近ちょっと話題になったニュースで、この新学期からニューヨーク州では学校内でのスマホ利用が禁止になりました(KindergardenからGrade 12thまで)。
終業時間まで専用ポーチかロッカーへ保管される仕組みで集中力アップやコミュニケーション増加を期待して実施されることになったそう。緊急時に連絡が取れないといった懸念や生徒からのクレームも出てるみたいだけど、ランチタイムがにぎやかになるなど、さっそく良い効果もあるようで、個人的には逆に孤独になる子どもがいないことを願ったりもしています。長い目で見た効果も楽しみですが、まずは試験的に取り入れるスピード感には驚かされます。
娘の学校もG&T(Gifted & Talented)のクラス定員が多すぎるということで昨年NY市へ呼びかけ、2nd Gradeからクラスがひとつ増えるなど、行動を起こしてみると決まることも少なくない、というのはニューヨークの魅力のひとつかもしれません。
もうひとついいなと思うのが多岐にわたる子どものアフタースクールプログラム。水泳やテニスなどのスポーツ系以外でも興味深いものが幾つかあって、その中でも人気なのがFarm to Table cookingです。その名の通り旬の食材を使って栽培方法や栄養や調理の仕方、食事の準備を学ぶクラスで、締めくくりにはディナーパーティを開催します。
ほかにもドラマクラブという創造的な対話やロールプレイ、即興ゲームを通して子どもたちが自分を表現する機会を設けるクラスや生徒たちが自分の興味に合わせてテーマを選びグループに分かれ議論を行うディベートクラスなんてものもあります。ここでは議論を展開し、反論して自分の主張をしっかり行いつつ、最後は皆んなで架け橋となる意見をまとめていきます。
サポートが整った環境で即興で考える力やパブリックスピーキングのスキルを磨き自信をつけるなんて、私が学びたいくらいです。アメリカの小学校ではお馴染みの「Show & Tell」も自分の好きなもの(家から持参したものなど)についてスピーチをしたり、こうして幼少期から自己表現や発表の文化が根付いているんですね。
小学校時代を振り返ると、少しずつ理解できることが増えていく一方で、自分の意思でできることはまだまだ限られ、多くのことが大人の管理下の世界。好奇心は高まるけれど自分で決められる範囲は狭いから現実とのギャップに心が揺れ動くことも多く苦しい時期だった気がします。
子どもがなるべく深刻な気持ちに傾かないように大人ができることってなんだろうと考えるこの頃ですが、今は娘が少しでも毎日を楽しめるよう見守りたいです。
*1...サマーラーニングロス(Summer Learning Loss)とは、夏休みなどの長期休暇中に子どもたちの学力や学習習慣が低下する現象で、特に読解力や数学の成績が落ちやすく、学力低下は1~2カ月分に相当するそうです。経済的に厳しい環境の家庭ほど影響が大きく、裕福な家庭はサマーキャンプや体験活動で学びを維持できるため、学力格差の拡大にもなるともいわれています。
*2...「English Language Learner」の略で、第2言語として英語を学んでいる生徒のこと
<小浪良子さん連載>
子育ても仕事も自分らしく彩るマンハッタンの暮らし