息子たちの後姿が遠ざかる、新入学。新しい世界の扉が開くまで

ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース
- 名前
- 秋元玲奈 / Rena Akimoto
- 所在地
- ロンドン
- お仕事
- フリーアナウンサー
- URL
- 秋元玲奈(@rena_akimoto)Instagram
- URL1
- Rena Akimoto Official Website
【ロンドン発、アナウンサー秋元玲奈の海外子育てニュース】
以前のコラムで、双子の小学校入学をめぐる"ウェイティングリスト騒動"について書きました。
双子は、長男と同じカトリック系小学校に併設されたナーサリーに通っていました。親としては、そのまま兄と同じ学校のレセプションに上がれるものとどこかで思っていたのですが、イギリスではナーサリーに在籍していても、小学校への入学が保証されているわけではありません。
結果は、まさかのウェイティングリスト。 春が過ぎ、夏休みに入っても第一志望からオファーは来ませんでした。
さすがにもう難しいだろうと腹をくくり、双子には長男とは別の学校に通ってもらうことにしました。新しい学校に通いやすい場所へ引っ越し、制服も一式そろえ、先生方の家庭訪問も受けました。
家族全員の気持ちがようやく「新しい学校」へと切り替わったのは、入学直前のことです。
ところが、いよいよ来週から小学生という、その3日前。諦めかけていた第一志望から、双子2人分のオファーが届きました。
待ち望んでいた連絡だったはずなのに、最初に浮かんだのは「今ですか?」という言葉でした。
そこからは大慌てです。
入学予定だった学校に辞退の連絡を入れ、最後の望みを捨てきれず箱から出していなかった新品の制服を返品。今度は長男と同じ学校の制服をそろえ直し、入学準備を一気にやり直しました。
数カ月かけて準備した進学先が、わずか数日で変わる。
日本の小学校入学を思い浮かべると、なかなか想像しにくい展開かもしれません。けれど、学校の空き状況によって直前まで人が動くことのあるイギリスでは、こうした"最後まで分からない"出来事が時折あります。
なんともイギリスらしい、と苦笑しつつも、今回いちばん印象に残ったのは、子どもたちの反応でした。
「お兄ちゃんと同じ学校に行ける!」
双子は飛び上がるほど喜び、長男も、弟たちが自分と同じ制服を着て学校に通うことをとても楽しみにしていました。
親が学校を選ぶときは、教育方針や学力、通学距離、学校の評判など、ついさまざまな条件を比較します。 でも、4歳の彼らにとって一番大きかったのは、「お兄ちゃんがいる学校」ということだったのです。
同じ制服を着て、同じ朝の道を歩き、同じ校門をくぐる。学校の中のどこかに兄がいる。
大人から見れば些細なことでも、これから家の外に広がる大きな世界へ踏み出す彼らにとって、それは何より心強いことだったのでしょう。 そんなドタバタを経て、双子は4歳で無事に希望通りの小学校に入学しました。
イギリスでは4〜5歳になる年にReceptionに入り、小学校生活が始まります。日本の感覚からすると、「もう小学生なの?」と思うほどまだ幼く見えます。
ところが、入学してみると、その小さな4歳児たちにも早速変化が現れました。
少し前までナーサリーの入り口で、
「ママも来て」
と私の手を離さず、泣いていたこともあった2人です。 それが今では、学校のゲートまで来ると、
「もうレセプションだから、ママは入ってこないで」
と言います。 自分でスクーターを駐車場所に置き、リュックを背負い直して、2人並んで堂々と校門をくぐっていきます。
その背中を見ていると、「本当に小学生になったんだな」と、毎朝少し胸が熱くなります。2人が着ているブレザーは、まだ少し大きめです。袖も長く、肩も余っています。でも、きっとこのブレザーも、驚くほど早くぴったりになってしまうのでしょう。
子どもの成長は毎日見ていると気づきにくいものですが、制服や校門といった節目の風景は、ときどき時間の流れを目に見える形にしてくれます。そして面白いことに、子どもたちが少しずつ私の手を離れ始めた一方で、私は再び学校との関わりを深めることになりました。
ナーサリー時代に続き、今回も双子のクラスの副Repを務めることになったのです。Repは、保護者同士の連絡をつないだり、学校行事やPTA活動をサポートしたりする役割です。
子どもたちは「ママはここまで」と私との境界線を少しずつ広げていくのに、母親の私は、今度は別の形で学校生活へ参加していく。
その対照が、なんだかおかしくも感じます。
でも考えてみれば、子どもが小学校に入るというのは、子どもだけに新しい世界が始まることではないのでしょう。 親にも新しい人間関係ができ、役割が生まれます。特に海外での子育てでは、学校を通じて知り合いが増え、情報を交換し、ときには助けてもらい、ときには自分が誰かを助けます。
今回、兄弟3人が同じ学校に通えることになって、私がうれしかった理由も、単に送迎が楽だからだけではなかったのだと思います。
そこはすでに長男を通じて知っている場所であり、双子もナーサリー時代から親しんできた場所。そして私自身にも、人とのつながりがある場所でした。
学校は、子どもが勉強するだけの場所ではありません。
子どもにとっても親にとっても、少しずつ自分の居場所になっていく場所なのだと、今回改めて感じました。
「もうレセプションだから、ママは入ってこないで」
そう言って、少し大きなブレザー姿で校門をくぐる双子を今日も見送ります。
ほんの少し寂しさを覚えながら、私はスマートフォンを開き、副Repとして保護者グループのメッセージを確認します。
子どもたちは、自分たちの学校生活へ。
そして私もまた、少し違う形で、新しい学校生活を始めています。
〈秋元玲奈さん連載〉
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