ネイビーが「好き」だから。自分らしさを磨くファッションの自由

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て
- 名前
- 佐久間麗安 / Rena Sakuma
- 家族
- 4人 (12歳男の子と11歳女の子)
- 所在地
- 東京都
- お仕事
- Bright Choice編集長
- URL
- Rena Sakuma (@renanarena0513) Instagram
【「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て】
"美しさは、あなたがあなたらしくいると決めた時に始まる"
"この世でいちばん素晴らしい色は、あなた自身を輝かせる色"
── VOGUE JAPAN (2022年8月19日)
『ココ・シャネル──新境地を開いた女の人生を輝かす30の言葉。』より
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ママになってからでしょうか、いつしかネイビーをよく着るようになりました。
ネイビーはママにとってはコンサバカラーの定番、子どもの送迎コーディネートの鉄板カラーですね。
でも、わたしがネイビーを着るのは、ただ「好き」だから。
インターナショナルスクールに子どもを入学させたので、ママになっても、ファッションに我慢は必要ありませんでした。かといって、奇抜なモードではなくて、いつも「ほどよい」ファッションを好んだものです。
ネイビーブルーの、白黒ほど主張しない、中立的でちょっと知的な印象が好き。セリーヌやサンローランのコレクション見られるような、黒に近いネイビーが、わたしにとってのベーシック。アジア人には肌なじみもよく、赤・黄・緑・白・黒・・・など、合わせるカラーによって多様な楽しみがある。コーディネート次第で、エレガントにも、カジュアルにも着ることができる。ネイビーを原点にあれこれコーディネートすることで、おしゃれの訓練にもなると思っています。わたしにとってのネイビーは、決してコンサバではありません。
インターナショナルスクールでは、子どもたちも自由にファッションを楽しみます。制服のある学校でも、肌の色、髪の色、身長、体格の異なる、多様な子どもたちが集まる環境では、スカートの長さや髪色などは問われません。
女の子の間ではメッシュが流行り、小学生からピアスを身に着けてアクセサリー使いを楽しんでいます。
男の子の間では、かっこよいツーブロックスタイルの子がいたり、学校の寄付プロジェクトで販売したミサンガをみんなで着用していたり。
一人ひとりが「好き」なファッションを楽しめる環境では、多様な「個性」が現れる。お互いを認め合う素地にもなります。
「好き嫌い」というのは、「自分らしさ」という感性を育てる第一歩。だから、子どもたちには、ファッションという自己表現を通して、日常から自分の「好き」という感覚に正直にいてもらいたいものです。
髪型を変えた日は、校長先生が "Wow! I love your new hair!" なんて声をかけてくれます。子どもにも、親にも、です。そんな風に一人ひとりのセンスを褒めてくれる自由な校風には、本当に感謝しています。
大量消費の時代、ファッションに難しさがあるのも事実。
ファストファッションが一般的になって、子どももファッションを身近に感じられるようになりました。娘も大好きなZARAに一緒にいけば、トレンドアイテムがあれもこれもあって、つい目移りしてしまいそう。でも、どんなに可愛いアイテムでも、似合ってないとなんだか心地悪いし、おしゃれに見えない。流行に「着せられる」ことのないように、いつも「自分らしい」ファッションをチョイスすることは、意外と難しいものです。
陳列棚に並ぶ大量の商材の中から、「好き嫌い」の感性でもって、「本当に自分らしいもの」を選ぶ。
そうやって「自分に正直なおしゃれ」をすることが、ファッショナブルでタイムレス。(いまの時代、サステナビリティの観点からも、大切そうですね。)
何事も、自分次第で「美しさ」が決まる、ということなのでしょう。
子どもも大人も、そうやって自己表現力を磨きながら、自己肯定感を高められるのではないでしょうか。
ファストファッションの買い物体験は、「自分らしさ」という美しさが視覚的にわかるから、自己表現のよい訓練。モノや情報の溢れるこの時代に、「自分にとって本当に必要なもの」を見極める力にも、どこか通ずるものがあるような気がするのは、わたしだけでしょうか??
「自分らしい」ぶれない生き方を追求するなら、まずファッションで「自分らしいカラー」や、「自分らしいシルエット」などを指標にしておくと、良いのかもしれません。そのためには、ファッションに個性の自由を認める余白が必要でしょう。
ネイビーの話に戻って、インターナショナルスクールの受験を控えるママさんに、
「面接に何を着ていったらいい?」
と、よく聞かれます。
実は、わたしは、ネイビーを着ていきましたが、それは敢えて伝えないことにしています。
なぜなら・・日本のお受験を想像させることで、誤解を生みそうだから。
日本のお受験では、試験対策や面接対策などの決まった慣習やルールがあって、面接では親子でネイビーを着て、こう答えるべきという「正解」や、これは言わない方がいいという「NG」があるようですね。
また、日本のお受験経験者には、テストや面接で「~ができなかったから、落ちた」、と聞くことがありますが、インターナショナルスクールや、海外の学校の受験では、「できないこと」によって不合格になる、という概念が薄いように思います。
一定の技能試験や面接での評価基準を主軸にした日本のお受験と違って、わたしたちの経験したインターナショナルスクール受験では、選考基準よりも、「個人の秀でたところ」、「入学してほしい理由」を見つけることに重きが置かれているように感じます。ですから、何かアピールできるもの(=個性)があれば、一つくらい「できない」ことがあっても大勢に影響がないことが多いのです。もちろん、一定の英語力の査定もありますし、そのためにある程度対策は必要なものの、それ自体が合否を左右することはありません。(例えば、アメリカのボーディングスクールのTEN SCHOOLSの一つに合格された学生さんに、共通試験SSATのスコアがトップ校受験者の平均点より低かったという話を聞いたことがあります。)
海外進学でも同じですが、多様性を重視するインターナショナルスクールの受験では好印象を残すことが大切です。ですから、生真面目にお受験ネイビーを着ていかなくてもよいのです。
面談する先生方はビジネスカジュアルよりもカジュアルなスタイルですし、タトゥを隠すこともありません。受験する子どもの家族がどんな人たちであるかを引き出すために、リラックスして会話したいのです。ですから、面接では決まりきったことが聞かれますが、回答内容に制約はなく、本当に自由。
ちなみに、わたしたちは当時、
"So..., what is he/she like??" 「(息子/娘は)どんな子なの?」
"How do you spend the weekends?" 「週末は家族でどのように過ごしているの?」
と、とってもカジュアルな雰囲気で聞かれました。
そんなリラックスしたシーンで(もちろん、わたしたち夫婦は内心緊張していましたが〈笑〉)、子どものこと、家族のこと、いかに学校の文化が子どもに合っていると思うかなど、言いたいことは漏れなく全てアピールし、自己表現したものです。
服装は、仕事の合間の面接だったこともあって、夫はスーツに、シャツの裾にはお気に入りのカフス。私は、お気に入りのネイビーのパンツスタイルにつるんとしたブラックのセリーヌバッグを合わせました。
TPOに自分の「好き」を掛け合わせたファッションで自己表現すれば、どんなシーンでも、「自分らしく」あれる。それが大切なシーンであれば、自己肯定感が高まってパフォーマンスも上がりそうです。
それを大事にできていれば、面接で何を着ていけばいいか、いえ、「何を着ていきたいか」、自然とわかるはず。
人によっては清楚な白ブレザーでも好印象かもしれない。女性らしく見せたかったら、ワンピースでシルエットを楽しむのもありです。お仕事がファッションやアート系だったら、面接での会話に紐づけられそうな、センスの光る小物を合わせてもよいかもしれませんよね。あなたのファッションが、相手に印象つけるような、「個性を光らせる一ネタ」になるかもしれません。受験だからといって怖がらなくても大丈夫。「自分らしい」ファッションで臨めばよいのだと思います。
最近、子どもの海外ボーディングスクール受験で改めて感じたのは、海外の学習環境や選考プロセスというのは、つくづく「自己表現力」勝負だということ。一定の技能試験に捕らわれない、願書やエッセイ、面談での会話の内容など、受験生一人ひとりの魅力を多面的に見出そうとする選考では、「正解」というものは存在しない。だからこそ、「自分らしさ」が大切になってきます。例えば、「ボランティア活動」はやっていた方がアピールできる、という説があるのですが、本気で頑張っている課外活動が他にあるのなら、そちらをアピールした方がいいそう。受験対策として、ボランティア活動を数回やっただけであれば、逆効果なのだそうです。みんなそれぞれ、他にはない魅力を持っています。そうやって、学習環境に多様性がもたらされ、活気あふれる学びが実践されるのだと思ったものです。
また、アメリカの大学受験について、とあるボーディングスクール生に聞いたのですが、ここ数年、成績優秀なアジア人が第一志望に受からないそうで、ハーバードはますます難関校になっているようです。
「英語ができる賢いアジア人」から、もう一歩踏み出したユニークさが必要なのだそうです。
しかし、「自分らしさ」を体現する「自己表現力」というのは、一朝一夕にして身につけられるものではありません。まずは、毎日を「自分らしく」生きていないと始まらないのです。
"Why is fashion so important in this movie?"
――「なぜ、この映画を描く上で、ファッションがこんなにも大事なのでしょうか?」
わたしの大好きな映画 『プラダを着た悪魔』のインタビューで、メリル・ストリープが最後に聞かれていた質問が印象的でした。
それは、わたしたち一人ひとりの尊厳というものを、「自分らしい」ファッションという自己表現を通して、自他ともに認め合えるからなのかもしれません。学校、職場、その他どんなシーンにおいても、女性であっても男性であってもそのどちらでもなくても、年上でも年下でも・・。それは、多様性への対応が求められるいまの社会で、とても大切なことだと思うのです。
新しいアイディアや創造力、決断力や問題解決能力が必要とされる時代。
自分の「好き」を通して自分らしく自由闊達に生きる姿勢こそ、何よりも大事な教養なのかもしれません。毎日、わたしたち一人ひとりがその大切な感性を味わって、自己表現し、認め合えるのが、ファッションなのでしょう。
Chat GPTが人の感性に訴えるような提案もできてしまう、これからの時代。
国際バカロレアのカリキュラムではアートの比重が高かったりするなど、アカデミックの分野でもアートの重要性が高まっています。これまで「嗜好品」とされていたファッションやアートの社会的地位が上がってくるかもしれませんね。子どもたちが大人になるころには、アート系のお仕事がもっと増えているかもしれません。
そんなことを想像しながら・・
朝クローゼットを開けたら、その日の気分のものを選ぶ自由を持っていたい。
今日着るものが、その一日を「自分らしく」過ごせるかどうかを測れる、大切なバロメーターなのですから。
〈佐久間麗安連載〉
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て