インターナショナルスクール生の習い事が"ちょっとシリアス"なわけ
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て
- 名前
- 佐久間麗安 / Rena Sakuma
- 家族
- 4人 (14歳男の子と12歳女の子)
- 所在地
- 東京都
- お仕事
- Bright Choice編集長
- URL
- Rena Sakuma (@renanarena0513) Instagram
【「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て】
"You get what you are, rather than what you want."
- Wayne Dyer, The Art of Manifestation
アメリカの自己啓発作家の故ダイアー博士は、"自己実現とは、「自分らしさ」を顕在化させること"だといいます。(著者意訳)
いいかえれば、それは、「自分らしさ」を発露させる、「インサイドアウトな自己表現力」が大切だということ。
私自身、インターナショナルスクールに通う子どもたちの習い事と進路のことで、ダイアー博士のいうところの「自分らしさ→自己実現」という"矢羽根の方向性"を、忘れてはならないなと感じています。
特に高学年になると、親がもっと子どもの「自分らしさ」にマインドフルになってあげないとなりません。
インター生にとって、習い事は"ちょっとシリアス"になることがある。
その後の進路を左右することがあるからです。特に、この9月に息子が高校プログラムをスタートしてから、我が家でも習い事と進路の関わりを意識するようになりました。
アメリカの大学が典型的で、アプリケーション(出願)に当たっては、テストのスコアや成績だけでなく、課外活動の実績を、エッセイやムービーなどで表現する必要があります。
いわゆる「自己ポートフォリオ」と呼ばれる、学業&課外活動の総合的な実績は、入学審査で学校に対して子どもが「自分らしさ」をアピールするための大切なツール。
子どもの個性が進路に活かせるというのは、本当に素晴らしいことです。
ただ、その分、アプリケーションにはより労力もかかるのも事実。裏を返せば、それは「自分らしさ」が評価の対象になるということなのですから。
受験生は、アプリケーション専用ポータルサイトに、成績表、必須科目の先生の推薦状、SAT/SSAT、TOEFL/IELTS/Duolingoなどのテストのスコアに加えて、課外活動における功績、活動内容を編集したムービーや、指定のエッセイを複数アップロードします。アメリカのボーディングスクールの出願プロセスも、これに倣います。
基本的に、成績表とテストのスコアなどで入学審査が行われるイギリスやカナダの大学受験はもっとシンプルですが、いずれ子どもに海外進学させてあげたいと思ったら、やはりアメリカは視野に入ってくるもの。
インターナショナルスクールに入学すると、スポーツやアート、プログラミングなど、何かしらの分野で得意なことがある先輩たち。それを見て、自ずと、幼少のころから習い事やアクティビティを頑張る子どもたちが多くなります。我が家でも、いろんな習い事を試してみて、子どもたちは小1くらいの頃からテニスに真剣になりました。
(*イギリスの大学は、基本的には学校の成績と共通テスト〈GCSE/A-Level〉のスコア〈トップスクールは+面接・ディスカッション〉、カナダの大学は高校卒業資格、英語力を証明するテストスコア、成績表があれば受験できるそうです。)
インターナショナルスクールやボーディングスクールでは、高校生たちがこの「自己ポートフォリオ」を構築できるよう、多様な選択科目や、プログラミングやアートなどの課外活動、Varsityと呼ばれる体育会系プログラムとそのための学習施設が用意されていることが一般的。日本では、アメリカンスクールがその典型例です。息子の場合は、高校でもっとテニスを頑張りたいといって、テニスアカデミーが併設されたイギリス系のボーディングスクールに編入しました。
錦織圭選手を輩出したアメリカのIMG Academyが有名ですが、アジア圏でも、エプソムカレッジインマレーシアがサッカー、テニス、ゴルフ、アートのアカデミーを併設するなど、課外活動の充実した学校が世界的に増えてきているようです。
高校にプログラムがあれば、学校の課外活動の時間を使って活動できますし、なければ学校の外で習い事を続けます。いずれにせよ、高校生たちは、学業と課外活動の両立でとっても忙しそう・・。
息子のお友だちには、例えばスポーツではVarsity2チームに所属している、なんて子がいたり、音楽ではピアノの先生について、ARBSM(英国王立音楽検定)資格取得のために練習に励んでいる、なんていう子も。みんな本当に頑張っていて、感心してしまいます。
「勉強はできて当たり前」というのが、海外進学(特にアメリカ進学)で良くいわれることで、高校生たちは、自分の個性や意欲など、学力+αの部分をアピールできるように、マルチタスクをこなしながら日々精進しなくてはならないのです。
さらには、最近、アメリカのNCAA(全米大学体育協会)がますます過熱しています。
大学スポーツ進学となれば、個人競技のテニスの場合、UTRやITFという、いわゆる世界共通のスポーツ偏差値があって、子どもたちはポイント(戦績)を上げるために凌ぎを削ります。海外のテニスアカデミーに所属する息子の周りでも、強い選手たちの間でそんな話題をチラホラ聞くようになりました。偏差値とは無縁と思っていたのに、スポーツの世界はシビアです。
さて、この秋は、我が家も発表会や試合シーズンで、習い事で忙しい季節。
海外留学中の息子は毎週のようにテニスの試合に出場し、娘はピアノの発表会がありました。
挙句の果てには、私も娘と連弾することになったので、一緒になってピアノの練習をするハメに 笑
大学進学を意識するようになった息子については、いよいよテニスが"ちょっとシリアス"になってきて、勉強との両立も難しい。
この10月、息子はトーナメントの合間に中間テスト週間もあって、さぁ大変。毎日学校の授業に加えて、5時間のテニスの練習に励み、週末はトーナメントに行って、夜はチューターとテスト勉強をする日も。体力と集中力の勝負でした。
そんな大変な時期に、怪我のトラブルも。
試合も途中棄権するなど、思うように結果を出せなかったようです。高校では、テニスの戦績についても一定のポイント目標があるだけに、本人も落ち込んでいた様子。これにテスト勉強の負荷も加わって、ストレスを感じていたように思います。
毎日電話で、テニスでは痛みを抱えながら試合に出場したこと、テストでは、理数系の息子には英語が難しくなったと感じていることを話してくれて、電話越しに涙した日もありました。文武両道を貫くのは、一筋縄ではいきません。
大学スポーツを目指す子どもの中には、テニスでいうと、ITFやUTRがストレスになって、イップスなど精神的な支障をきたす子どももいるようです。思春期の子どもは、周囲の評価にとてもセンシティブ。外部の尺度を気にして肩肘はらないように、親が意識してサポートする必要がありそうです。
そんな最中、娘のピアノの発表会がありまして、これが息子のようなプレッシャーがなんにもない!ミドルスクール生になった娘も、テニスは "ちょっとシリアス"になりつつあるのですが、ピアノはあくまでもエンジョイする習い事なんです。
それでも、発表会になると真剣そのもの。
ジブリで馴染み深い、久石譲の『Summer』を自分で選曲したのも良かったのか、夢中になって練習していました。本番の演奏では、娘の奏でるあのノスタルジックなメロディーに感傷的になったのか、夫の目には涙。(親バカですね)
私は、娘との連弾で、くるみ割り人形の序章を伴奏。
「バレリーナが踊るように軽いタッチで」、「おもちゃがカチャカチャするように」
先生にアドバイスをもらって、クリスマスに鑑賞したバレエの舞台を思い浮かべながら、楽しく練習しました。
本番のステージに置かれたスタインウェイ&サンズのグランドピアノは、なんとも優美。
娘と二人で音を奏でると、スタインウェイの羽のように軽い鍵盤を弾く指先から、花びらのように音が舞っていくよう。心も一緒に舞っていきそうな美しい体験に、私もすっかり魅了されてしまいました。
発表会の余韻をまだ感じているのか、その後も娘は「今度は『エリーゼのために』を弾けるようになりたい」、といって毎日練習し、一カ月足らずで一通り弾けるようになってしまいました。
娘は、ただ、自分の感じるままにのびのびとピアノを弾いているのです。
ピアノという楽器を通した自己表現が、楽しくなったのでしょう。
意外だったのは、娘がこのピアノの発表会をきっかけに、彼女にとって大切なテニスや勉強にも、これまで以上に集中できていること。娘の中で、上手く回り出した小さな歯車が、他の歯車ともかみ合って、いろんなことが好転してきているように思います。
本来、習い事は、自己表現を通して人生を楽しむためのものなのでは?
そうした「自分らしい」体験こそ、子どもに "グリット"と自己実現力をもたらしてくれるのでは??
娘の素朴な姿勢から、そんな大切なことに気づかされた出来事でした。
さて、怪我も治って、年末は大事なトーナメントを控える息子は、ここで挽回するぞ!と、エンジンがかかった様子。いま、彼にとって一番大切な歯車が動き出そうとしています。
目標を達成してほしいからこそ・・、
「目先のポイントを追うよりも、自分のためにテニスをしよう」
そんな風に声をかけるように心がけています。
「自分らしい」体験をしてはじめて、息子のベストが引き出せるのですから。
息子の中で動き出した歯車が、生涯にわたって回り続けて、これからの人生の原動力になりますように。
そうすれば、長い人生、仮にどこかでギアチェンジしたとしても、自己実現していけると思うんです。
日本の学校でも、AO受験など、子どもの個性が評価の対象になることが増えてきていますね。
子どもにとっては、大人の評価を臆せず、のびのび頑張ることが、進学の結果以上に大切です。
可能性に満ちた子どもには、「自分らしさ」というポテンシャルを大事にしてほしい。
"ちょっとシリアス"な習い事は、少し力を抜くくらいがいい。
大切な時期こそ、親がそんな風に見守ってあげられたらいいと思うのです。
〈佐久間麗安連載〉
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て