思春期インター女子がはまる"Fun Bubble"に気をつけて!

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て
- 名前
- 佐久間麗安 / Rena Sakuma
- 家族
- 4人 (14歳男の子と12歳女の子)
- 所在地
- 東京都
- お仕事
- Bright Choice編集長
- URL
- Rena Sakuma (@renanarena0513) Instagram
【「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て】
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"Giving social media to teenage girls is like handing them a gun."
-Jonathan Haidt (Social psychologist/NYU professor), The Anxious Generation: How the Great Rewiring of Childhood Is Causing an Epidemic of Mental Illness"
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先日、娘の通うインターナショナルスクールで、カンファレンスデーがありました。
カンファレンスデーとは、各学期に先生と行われる三者面談のこと。日本の学校では、放課後に担任の先生と行われますが、インターナショナルスクールでは、学校が休校となり、終日先生方が面談対応をしてくれます。担任の先生だけでなく、主要科目の先生方との面談も必須。5~6教科ほどの先生方とアポを取って学校で面談します。(所用時間は合計で2時間ほどでしょうか)
Grade7(中1)になった娘の先生方が、いま良く口にするキーワードは、"Peer Pressure"。
いわゆる、「同調圧力」です。
「最近、スマホに時間を取られてない?」と、娘のちょっとした変化に気付き、お友だちとのチャットの頻度などを心配した担任の先生。
「もっと前に出ればいいのに。出たがりだと思われたくないの?あなたの作文の内容を見れば、あなたが深く良く考えていることはお見通しだよ。」と、日本語の先生。
アートの先生には、"You are so talented! You should be more spontaneous in articulating your own arts to your teacher and your peers!"「せっかく才能があるのに!制作するだけでなく、先生やお友だちに対して、もっと自分のアートの事を、言葉を使って表現しないと!」
私も身に覚えがありますが、"Peer Pressure"によって、学校で消極的になる時期ってありますよね。娘の年齢になれば、それは日本の学校に限ったことではなく、インターナショナルスクールでも同様です。
それだけではなく、今の子どもたちは、スマホを持ったことで、この"Peer Pressure"を四六時中感じているということを、思春期子育て真っ最中の私たち親は認識すべきだと、感じています。
気を付けないと、このスマホによって、"Peer Pressure"の沼にはまります。そこには、いじめの温床もたくさんあって、目に見えない心の傷も負いかねません。
幸いなことに、お友だちに恵まれている娘の場合は、いじめの心配は全くありません。でも、逆にこの"Peer Pressure"が楽しくてたまらなくなってしまったようで、スクリーンを通じたお友だちとの"Fun Bubble"「楽しいバブル」に完全にはまってしまいました。
娘の場合、その影響は甚大で、11歳のお誕生日にスマホを手に入れてから、色んなことからフォーカスを奪われてしまい、日常生活でよからぬ影響が多々発生しました。
まず、わかりやすかったのが、部屋が散らかるようになったこと。もともと整理整頓が苦手な子ではありましたが、スマホを手に入れてからは、ますますエスカレート。
ひどく散らかっていることが、まるで目に見えないかのように、部屋の真ん中に座ってもくもくとスマホで友だちとチャットばかりしている姿は、滑稽でした。親としては、心配でしかないシチュエーション。
続いて、テニスでは、明らかに練習や試合のクオリティにムラが見られるように。何事も集中力が大切ですが、スポーツというのは、集中力の欠如が結果に顕著に現れます。貴重な週末、わざわざ往復数時間かけて出向いた試合で、上手く実力を発揮できないことで、娘は今しかない大切な時間を奪われたようにも思えます。
長男の時には知り得なかった、インター女子コミュニティは、スマホを通じて、いつでも、密に、つながっています。彼女たちはとにかく情報通で、流行りにもキャッチ―、おしゃれで遊び上手。みんなとってもいい子たちだし、娘のお友だちとの時間は、親が見ても羨ましいほどにとっても楽しいんだと思います。
ママ友がアレンジしてくれて、K-Popのライブに連れてってもらったり、ガールズ同士で話題の映画『Wicked』を観たり、かわいい韓国コスメを求めてショッピングしたり。
でも、冷静に考えてみたら、それができるのも、とても治安のよい日本という国のインターナショナルスクールという守られた環境にいるからこそであり、それはかなり特殊な、とても恵まれた環境なのです。
周りを見渡せば、いま、同学年の日本人のお友だちは、中学受験を乗り越えたところであり、海外の子どもたちにいたっては、治安を考えれば街中で自由に行動できないし、いよいよ高等教育に向けて、学業面だけでなく課外活動でも、自分がこれから頑張りたい分野を考え始める時期。
また、インターのお友だちの中にも、中学受験をしたり、「○○スクールにいきたい」、「将来、○○になりたい」、などと、はっきりと自分のビジョンを持っている子たちもたくさんいます。
一方で、娘の場合、とにかく「いま」がとても楽しくて、それは親としても大変に嬉しいことなのですが、その「楽しいバブル」に囚われすぎているのでは?と、最近になって気づくようになりました。
インターナショナルスクールは、服装、髪型も自由で、学校のお休みも多いから、お友だちとライブやショッピングなど楽しい時間も増えます。そこにスマホが投入されると、その「楽しいバブル」が、娘の頭の中でビッグバブルに膨れあがってしまって、彼女が自分を見失ってしまったように思えたのです。それは、息子がスマホでゲームにはまるよりもずっと、精神的に影響をきたすものでした。
「思春期の女の子たちにSNSを与えることは、彼女たちに銃を持たせるように危険なことだ」、というのは、ニューヨークタイムズベストセラー"The Anxious Generation(不安世代)"で著名な社会心理学者・NYUビジネススクール教授の Jonathan Haidt氏の言葉です。
Haidt教授は、この著書の中で、スマホやソーシャルメディアによって、思春期の子どもたちの知的・精神的発達が阻害されていると注意喚起します。それも、思春期女の子たちの方が、少人数のお友だちとの密な会話を好み、自意識が芽生え始める特性があるため、同年齢の男の子たちよりも、スマホやソーシャルメディアによる被害がずっと深刻だというのです。(より具体的な内容については、こちらの動画『オプラ・ウィンフリーとジョナサン・ハイトがソーシャルメディアが子供時代をどのように変えたかについて語る』をご視聴ください。)
娘がお友だちに恵まれて、充実した時間を過ごせていることには感謝していて、今の学校を選んで本当によかったと感じます。でも、娘にとっては、そろそろ「自分のこと」、「これからのこと」に目を向ける時期。私が娘ときちんと考える時間を設けてあげられていなかったようにも感じています。長男の進学経験から、先々のこともわかっているので、親子ともに少しのんびり構えていたかもしれません。
また、ここ1~2年で気づいたことは、一見情報通に見えても、子どもたちの情報源のほとんどはネットだということ。いいかえれば、知らぬ間に「フィルターバブル」にはまっているのです。K-Pop好きの子はK-Popばかり見ているし、YouTubeで動画を見始めれば、次々に提案される同様の内容の動画ばかりを無意識に見ている。
娘は断定的に意見するけれど、実はものごとを客観視できていない、ということに気付いたのです。
たとえば・・
私 「今後のために~してみたら?」
娘 「しなくていい、興味ない。」
私 「なんで?」
娘 「わかんない。」
こういう類のやり取りが何度あったことか・・。
長男が同じ年齢の頃よりも、しっかり意見できる娘。
当初は、「やっぱり女の子ってしっかりしてるなー。」 と思い、放任した時期もあったのですが、「これからどんなこと頑張りたいの?」と聞けば、「わからない」という返答。
よく会話してみると、自分が好きなことや自分の魅力、自分なりの目標のようなものが、なんだかぼんやりしている。
なぜ「わからない」のかというと、「自分の情報バブル」の外を知らないだけなんです・・。それも、そのバブルが楽しすぎるものだから、外に一切興味関心が湧かない。楽しければ楽しいほど、視野が狭くなるのです。このコンフォートゾーンは、なかなか抜け出すことができません。
では、「楽しいバブル」にはまらないようにするには、どうしたらよいのか?
親としては、バブルの外の世界を見るように仕向けるしかないのでは、と感じています。
とはいえ、彼女が興味のある分野でないと、見向きもしてくれません。
長男のときは、とりあえず耳を傾けてくれる(必ずしも受け入れてくれるとは限りませんが)ことが多かったのですが、「嫌なものは嫌」、ある意味「第2イヤイヤ期」(笑)の娘は、まず関心を持たせることに、一苦労。
これまで私なりに試行錯誤してきた中で、大失敗あり、上手くいったこともあり・・。
まず大失敗したことといえば、娘との根津美術館ツアー。
それは、琳派の墨彩画、水彩画、金屏風の国宝までが揃った、美しいジャパニーズアートの展示。
ルイ・ヴィトンとのコラボで世界的にヒットした村上隆さんも、この琳派に影響されたとのことで、これなら興味を持ってくれるのでは?と娘に熱弁して連れていったものの、彼女はつまらなそうにして、たったの10~15分でスルー。
水彩画が大好きな彼女が描いた生花のアートにも似ていたのに、全く刺さらず、がっかりな結果に。
彼女の中では、Nezu Cafeで食べたショートケーキしか覚えていないのでしょう。
一方、これは大きく成功した!といえるのは、スマホのスクリーンタイムの設定です。
以前、ポッドキャストで聞いたアップルCEOの Tim Cook氏のインタビューで、アップル社としてもスマホ依存を問題視しており、スクリーンタイムの設定や通知設定を活用できるように改良してきたという話は聞いていましたが、このスクリーンタイムをかなり厳しく設定したことで、娘の日常生活に歴然とした違いがみられるように!
いま、家にいる時の彼女は・・
もくもくと水彩画に取り組み、先日は他のインターナショナルスクールとの合同展示 『Art Scape』というイベントで、娘の作品が見事選ばれました。
また、暇さえあればピアノの練習をするようになり、いまではショパン、バッハ、ソナタなど、私の昔の楽譜を引っ張り出して、弾くように。(ABRSMでいうと4~5くらいのレベルでしょうか)
勉強面では、算数がますます好きになったようです。先日は、インター生合同の算数の特別授業で実施されたテストで2位を受賞!
もともと読書好きなのもあって、読書量もアップ。おかげで、英語も国語も、成績がぐっと上がりました。(アニメもマンガもかなり読んでいます。)
テニスについては、いま怪我でお休み中ですが、集中力がぐっと高まり、コーチからは「意識が変わった!」と褒められるように。
そして、何よりも嬉しかったのは、娘自身が、「スクリーンタイムを設定してくれてよかった」と言ってくれたことでした。
「これが本来の娘の姿なのかな?」
これまで、スマホでのチャットのやり取りやSNSに気を取られて見えなかった彼女の個性が、少しずつ取り戻されているように感じています。
やはり、意識的にフィルターバブルの外で過ごす時間を増やすことが、娘の精神的な成長に大きく寄与しそうです。
今年の夏休みは、イギリスでも評判のIBスクールのサマースクールに参加します。
息子よりも俗っぽくて、実は甘えん坊でママっ子な娘は、自分から留学したいとは言いませんが、私から良く説明し、提案したところ、行ってみようと思ったようです。
Critical Thinking (クリティカル・シンキング)の授業、テニス、バスケなど多様なスポーツプログラム、アート、ミュージック、クッキングやベイキングまで、サマースクールといってもIBプログラムのメニューは多彩です。
いろんなことに興味関心がありながらも、まだこれといってフォーカスできていない娘にとって、自分探しの体験になればいいな、と願っています。
また、彼女の好きなことや興味のあることについて、もっと親子で語り合いたいな、と思います。振り返れば、2年前のお誕生日にスマホをプレゼントしてから、「彼女らしさ」を奪われたように感じる日々でした。これから、娘には、「自分らしさ」って何だろうということを模索し、自分と向き合う時間をもっと持たせてあげたいものです。
今年13歳になる娘は、一般的には航空会社からUnaccompanied Minorと見做されないので、1人でフライトに乗らなくてはなりません。現地空港でお迎えはありますが、空の一人旅は初めての体験。
どんな顔をして出発し、どんな顔をして帰ってくるのか?
親としては、心配しつつも、楽しみな夏休みになりそうです。
〈佐久間麗安連載〉
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て