13歳で海外留学|思春期の自立心と自分で人生を創るということ

Choice

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て

名前
佐久間麗安 / Rena Sakuma
家族
4人 (13歳男の子と11歳女の子)
所在地
東京都
お仕事
Bright Choice編集長
URL
Rena Sakuma (@renanarena0513) Instagram

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て

しかない、というものは世にない。人よりも一尺高くから物事をみれば、道はつねに幾通りもある。
------『竜馬がゆく』より (司馬遼太郎 著 / 文春文庫)

------------------------------------------------

13歳で海外留学することを決めた息子を、新学期の始まる夏に送り届けてきました。
現地に着くまでは、うきうきしていた息子ですが、いよいよ寮に入るとなると、なんだか浮かない表情。

普段は口数少ない息子がはじめて、
「寂しい」
と、感情をあらわにしたのです。

そうして、堰を切ったように、
「いよいよママは帰ってしまう」
「僕はこれから一人だ」
「やっぱり来年からにすればよかったかな・・」
「前の学校は良かったなぁ」
と、どんどん弱音が出てくる(笑)。

最後に寮に送り届けた日は、自分の決断したことの重大さに面食らってしまったのでしょうか。おいおい泣いて、私から離れられない。

2人で号泣しながらギュッとハグをして、
「あなたのことが大好きだから、手放すよ」
「あなたは一人じゃない、いつでも帰っておいで」
と、伝えました。

このタイミングでの海外留学は、幾通りの道を親子で一緒に見て、話し合って、最後に息子自身が決めた進路でした。こんな風に泣き崩れるのは初めてのことで、私も息子を日本に連れ戻したい気持ちに揺り動かされましたが、頑張って背中を押してやりました。(東京への飛行機に乗るまで、息子のことを思い出しては涙していましたが・・)

「中学・高校の進路は自分で決めてほしい」
というのが、インターナショナルスクールの小学校に子どもを通わせる上で一番大切にした子育ての目標でした。

その背景には、「私たち親世代と全く違う世界を生きる息子には、私たちと全く違う人生を歩んでほしい」、という漠然とした願いがあったのです。
2011年、デューク大学のキャシー・デビッドソン大学院教授が、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と語ったニューヨークタイムズ紙のインタビューは、話題になりましたね。

私たち夫婦は、日本で受験勉強して、自分の学力に合った学校に進学しました。それ以外にあまり選択肢もありませんでしたから。息子も同じ道を歩むとすれば、中学受験をしていたのでしょう。いまの時代は、日本の中学校でも、国際生クラスやサイエンス特化クラス、国際バカロレアプログラムなど、教育環境も多様化しています。

インターナショナルスクールの先には、またさらに多様な進路があります。国内だけなく海外の学校も視野に入るようになり、同じ海外でも、アメリカ・イギリスだけでなく、カナダやオーストラリア、ヨーロッパやアジアなども、いま留学先として人気です。留学先によって、学生の人種構成も様々。また、学校のプログラムにも個性があって、スポーツ、サイエンスやアートなど、子どもの興味関心次第では、アカデミック以外の教養に力を入れている学校もあるということにも気づかされました。

「多様な進路があるけれど、息子には自分で選ばせよう。」
社会に出るころにはどんなキャリアがあるかもわからない中、母親としては、「自分の進路を決める」というプロセスを通して、心の成長を遂げる思春期の時期から、自分の人生にオーナーシップを持ってほしかったのです。人が幸せになるためには、「自分の人生、自分で創らなければならない」のですから。


また、昨年ChatGPTが話題になりましたが、子どもたちは、検索エンジンから対話型生成AIまで、便利なツールを使っていかようにも情報に触れられるようになりました。
デジタルネイティブな子どもたち世代は、世の中の様々な情報にリーチする方法を知っているからこそ、自分で物事をチョイスできないと、自分らしさが情報社会の渦に埋もれてしまうリスクを抱えているということも、親として認識しておく必要がありそうです。

でも、人生経験の浅い小学校高学年の子どもに、その後の人生に多大な影響のある大事なことを決めさせるのもいかがなものなのか、とも思えます。
ですから、一緒に探して、一緒に体験して、一緒にとことん悩んでみようと思いました。
親も知る由もない先行きの見えない世界を、一緒に冒険してみることにしたのです。

インターナショナルスクールに通っていて、勉強とスポーツの双方が好きな息子とは、①日本の中学受験、②海外のボーディングスクール受験、③スポーツアカデミーといった進路を一緒に検討してみました。(アカデミックもスポーツも、となると、選択肢も増えてしまったのです・・)

また、高校まで日本のインターナショナルスクールには通うということも、当初は選択肢の1つにありましたが、検討を進めなかったのは、息子自身が環境を変えたいと決めたからでした。勉強もスポーツも好きだったので、中学受験塾やスポーツアカデミー通い、スクール以外の環境に触れる中で、「勉強とスポーツで今よりも挑戦できる環境は外にありそう」と思ったようでした。

まだ10年そこらしか生きていない子どもにとってみたら、かなり難しい判断であることは百も承知でした。日本の学校に、海外の学校、大好きなスポーツもあって、選択肢も多い息子にしてみれば、決めるに決めかねる状況。「ママが決めてくれた方がずっと楽だ」と思ったはずです。

でも、坂本龍馬が言うように、「しかない、ということは世にない」のです。その時代を生きる息子自身が、自分の目で見て、幾通りもの道の中から大切な思春期を生きる土壌を選ぶべき。だから、「親がお膳立てしてはダメ」というのが、母親としての命題でした。

「小学校のその先にあるものは?」
息子は、臆病な心を震わせて、色んなことを考えたと思います。
慎重な息子にしてみれば、自分の「直感」を切り札にBETする、博打のような心地だったのではないでしょうか。

それでも最終的に、「勉強もしながらスポーツでも挑戦してみたい!」という、自分の意思を掘り起こせたのは、幾通りもの道を見て悩んだからこそ。最終的に、自分でスポーツ留学という文武両道の道を歩むことに決めたのです。

親として一番喜ばしいのは、この大変なプロセスを経て、息子がずいぶんと自立したこと。
進学後、慣れない海外留学生活の中で、一時は自分の決断に少しひるみ、ホームシックで寂しくなっても、果敢に挑戦できる環境は、息子の人生に抑揚をつけてくれました。寂しいのでしょう、良く電話をかけてくれます。それでも、電話越しの声は、別人のように明るく元気!とっても前向きに頑張れているのです。
「人生、山あり谷あり」という経験は、それが自分で選んだものであるがゆえに、息子の自立心を芽生えさせてくれたようです。

また、「寂しい」という感情が発露したことで、思春期の息子が素直に頼るようになりました。物理的には離れていても、心理的には寄り添える、親子関係にそんな良い距離感が作られたようにも感じています。そして、必要なときはしっかり声に出して友人や先生といった周囲の方々にも頼りなさい、とも伝えています。
人間だれしも一人で生きていくことはできないもの。私たちは、誰かに頼る術をもって初めて、自立できるものなのですから。

さて、息子が晴れて自立し、めでたしめでたし、子育ても終了!というわけにはいきません。息子の選んだ進学先は、スポーツアカデミーとインターナショナルスクールが併設された文武両道のプログラムのある学校。勉強を怠ることなく高いレベルでスポーツに打ち込むことは、決して簡単ではありません。スポーツの世界では、怪我をして選手生命を危ぶまれるかもしれないし、実績も出せずに途中で挫折する可能性だって大いにある。学校を訪問した際には、大学進学担当の先生とも面談し、今後の進路相談もして、スポーツの道をそれた場合の「プランB」を確認したところです。

子どもに自分で決めさせるという事は、何かに挑戦する権利も、成功する可能性も、失敗や後悔する権利も、全て与えるということ。
親としては、ダメだったときには別の道も用意しておいた上で、子どもには安心して思いっきり挑戦させてあげようと思っています。

いま、息子は今までで一番生き生きしています。

思春期の時期に、自分の進路という人生で大切な航路を「自分で選ぶこと」は、子どもを本当に逞しくしてくれるものです。
それは、人生の肥やしとなるこの大切な時期に、自分の心の根を生やす場所を見つけ出すことであり、「自分の人生、自分で創らなければならない」という人生の永遠の課題の第一歩。

日々、ホームシックな息子と電話で会話しながら、人生で一番大切なことが何であるかを、親である私が教えてもらっていると感じています。

〈佐久間麗安連載〉
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て

       
  • 夢の原点

  • 寂しさをこらえて

  • 新拠点

          
  • 一時帰国

  • 広大な敷地に立派な学習施設とスポーツ施設が立ち並ぶスタンフォード大学で毎日テニスをした体験は、「いつしかこのような環境で挑戦したい」という夢を息子に与えてくれてくれました。その想いが息子の人生にとって大切な指針の一つになったようです。連れていってあげてよかった。

  • 私の帰国前日は、一緒に博物館へ。息子はずっと浮かない表情で、いよいよ学校に向かう車中では親子で涙が止まりません。「前の学校に戻る?」と聞いたら、「そういうことじゃない」といった息子は、ただただ寂しかったようです。これが息子の選んだ人生、きっと大丈夫と思えた瞬間でした。

  • 息子が選んだ学校は、これまで見た中で、学生の人種が一番多様でした。様々な文化、宗教、考え方があるので、「こうでなくてはならない」というしがらみがありません。その一方で、自分の意見や他者への理解も求められます。そんな環境で揉まれながら、息子は果敢に挑戦しています。

  • いち早く冬休みがスタートし、久しぶりに自宅に帰ってきた息子。私が仕事から帰宅して急いで夕食の支度をしていると、ふらりとキッチンに来て「一緒に作りたい」といって手伝ってくれました。あんなに受け身だった子が、まるで別人のように自主的で前向きになりました。