女の子が自由に生きるには?国際女性デーに考えるジェンダーギャップ
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て
- 名前
- 佐久間麗安 / Rena Sakuma
- 家族
- 4人 (13歳男の子と11歳女の子)
- 所在地
- 東京都
- お仕事
- Bright Choice編集長
- URL
- Rena Sakuma (@renanarena0513) Instagram
【「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て】
My father always said, "Malala will be free as a bird." ... But, ...I wondered how free a daughter could ever be.
- Malala Yousafzai, "I Am Malala"
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3月8日は国際女性デーでしたね。
息子が海外留学し、思春期の娘と向き合う時間が増えて、私も女の子の生き方について、以前より丁寧に考えたいと思うようになりました。
最近になって、女の子の子育てで大切にしたいと意識するようになったのは、①「女の子らしさ」という自意識からの解放と、②意見を尊重してあげること。
今年小学6年生になる娘は、兄と同じスポーツに励み、とってもボーイッシュ。見た目にも性格にも「女の子らしさ」があまりなく、仲良しの幼馴染みは男の子。学校でも、ラッキーなことに女の子特有のトラブルに巻き込まれることなく、これまで平和に過ごしてきました。男子・女子を分けないインターナショナルスクールのクラス環境に恵まれたこともあって、「女の子らしさ」という自意識に囚われないで自由に意見する娘の在り方には、日々感心させられています。
女性学ジェンダー研究で活躍される上野千鶴子先生によれば、社会的弱者は「らしさ」に縛られるものであり、「女らしさ」は、控え目にして自己主張しないように、ということだから、女性は圧倒的にソンなのだそうです。(『女の子はどう生きるのか』〈上野千鶴子/岩波ジュニア新書〉より)そうであれば、私は、娘には今のままであってほしいと切に願います。
そうはいっても、女の子の子育ては悩ましい。家庭や学校の環境が男女平等であったとしても、社会に出れば実態は大きく異なるのですから。
SDGs意識の高まりもあって、「フェミニズム」とか「ジェンダーギャップ」とかいう言葉をよく耳にするようになりましたが、情けないことに、私たち大人はジェンダーギャップをなかなか埋められずにいます。このままいくと、いまの女の子たちが大人になったときに、当事者意識とリーダシップをもって社会の実態を変えていかなくてはならなそうです。
(この点においては、大人の女性として、次世代に申し訳なく思うところです‥。)
そう思うようになった一つのきっかけは、最近読んだ、Malala Yousafzaiさんの"I Am Malala"。16歳にしてノーベル平和賞を受賞した彼女がその第一章で描いた、タリバンに撃たれた瞬間の回想シーンには涙したものです。
"Who is Malala?"
下校中のスクールバスで、そういって彼女に銃を向けたタリバンに向かって、
「なぜ女の子が学校に行くべきなのか」ということを説明できずまま撃たれたことを、
彼女は悔やんでいるのだそうです。
自分の命の危機が目の前にあってもなお、意見したい。
"I Am Malala"は、そんな強い思いから生まれた本でした。
その本で一貫して描かれる彼女の意思の強さと言葉の力には、感銘を受けました。
女の子の意見する力は偉大です。
また、この本を読んで得た大きな気づきは、「女性の置かれた境遇」という点においては、日本の現状もパキスタンと大きく変わらないのでは、ということでした。
貧困、非識字、汚職、戦争、核問題、クーデター、テロ、自然災害など、波乱に満ちた歴史をたどるパキスタン。人口2億人を超えるこの国では、読み書きできない成人が5千万人、うち2/3が女性だそうです。「名誉の殺人」など、保守的な慣習によって女性の命が奪われることもあり、その残虐さは "I Am Malala" でもいくつかの事例を通して描かれています。
しかし、この事態、遠く中東の地域の他人事として見過ごすことはできないのでは?
悲しいことに、2023年のジェンダーギャップ指数ランキングで、日本は125位と過去最低順位を記録。ちなみに、パキスタンはというと、142位でした。
あれ、あまり差がないのでは???と思えます。
命こそ奪われることはないけれど、日本でも「女の子が自由に生きること」は至極難しい。
平穏な生活に恵まれ、基本的な権利の平等も与えられているのに、なぜでしょうか。もしかしたら、日本人女性には、タリバンのようなわかりやすい脅威がないだけに、危機感を持つきっかけもなかったのかもしれません。
"I wondered how free a daughter could ever be. (いったいどうやって娘が自由になるのか)"
冒頭で引用したMalalaの疑問を、日本でもまずは女性がもっとシリアスに受け止めたほうが良さそうです。
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The Taliban are not our rulers. It's my life; how I live it is my choice.
- Malala Yousafzai, "I Am Malala"
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2023年のジェンダーギャップ指数ランキング125位という悲しい現実が本当に悲しいのは、政治分野の順位が世界最低クラスの138位ということ。2021年、衆議院の当選者に占める女性議員の割合は9.7%、参議院は22.6%でした。
選挙に行けば、女性立候補者も、女性のためのチョイスも、あまりに少ない。日本には過去に女性の首相が一人もいません。ちなみに、パキスタンでは、1988年にBenazir Bhuttoがイスラム世界初の女性首相になったことがあります。(残念ながら、のちに彼女は暗殺されました。)
男女平等に教育を受けることができても、社会に出れば状況は一転。女の人が権利を行使できていない(ここでいう権利は被選挙権)日本の民主主義は、ジェンダー平等のためには全く機能していません。
女の子が自由に生きるには、女性の意見が社会に浸透する仕組みが必要です。
意見できる女性が必要です。
"Not only men are our rulers."
私たちには、女性のリーダーが必要です。
社会を変えていけるかどうかは、これからを生きる女の子たちに託されているのではないでしょうか。
そうであれば、まずは、目の前にいる娘の言葉に耳を傾け、主体的に意見する力を育ててあげたいなと思います。自分の微力さを情けなく思いながらも、日々の子育ての中で、そんな小さなことから行動したいものです。
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I began to see that the pen and the words that come from it can be much more powerful than machine guns, tanks and helicopters. We were leaning to struggle. And we were learning how powerful we are when we speak.
- Malala Yousafzai, "I Am Malala"
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また、これからを生きる女の子たちが、リーダシップを発揮できる社会を創るためには、私たち女性自身が、「社会的弱者」であるという当事者意識をもっと強く持つことも大切でしょう。
年に何度か、cornerstone I・SHI・ZU・Eという、生活困窮者支援団体に寄付をさせて頂いています。最近では特に、都内の母子支援施設のための支援活動に積極的に取り組まれており、女性が貧困に陥りやすい現状が、とても見えづらいことを改めて認識させられました。私も同じ女性として、この事態を自分事として捉えないとならないと、寄付させて頂くたびに反省します。
2023年のジェンダーギャップ指数ランキングで、日本の経済分野の順位は123位。労働参加率の男女比、管理職の男女比、賃金格差など、日本の社会は様々な課題を抱えています。
女性の非正規雇用、出産・育児・介護に伴う家事労働の増加による就労時間の限定などが要因ですが、女性が社会で活躍する自由が制約された現状について、私たち女性がもっと危機意識を高めないとなりません。
30代、40代のシングルマザーの貧困は、子どもの貧困にもつながるから、日本の未来にとっても憂慮される問題です。厚生労働省が3年に1度実施する国民生活基礎調査によれば、2021年の子どもの相対的貧困率は、11.5%、その半数近くが一人親世帯だそうです。(※相対的貧困率:所得が中間の人の半分未満の世帯の割合)
また、50代、60代の女性の貧困率はさらに高まります。年齢が上がれば、雇用形態、介護の負担、熟年離婚などによって、女性の生活困窮リスクが高まるためです。
私たち女性は、社会的弱者です。そして、当事者である私たちが現状を分かち合い、もっと声を大にして意見しなくては、現状は変わりそうにありません。
上野千鶴子先生によると、フェミニズムとは「弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想」。(『女の子はどう生きるのか』〈上野千鶴子/岩波ジュニア新書〉より)
「弱者の立場を味わって」"Struggle"するから、暴力なんかよりもパワフルな意見が生まれるのでしょう。なぜ私たち女性の自由が制約されるのか、社会で活躍させてもらえないのか?
強がる必要は全然なくて、等身大で訴えるだけでも真意は伝わりそうです。
女性の言葉の持つ潜在能力は、思ったよりも偉大かもしれません。
日本で女性がリーダーシップをとれるように。
「女の子らしさ」という自意識から解放され、自由に意見する、そんな女の子をもっともっと増やしたい。また、それを尊重する男の子を増やしたい。
学校では教えてくれないそんなことを、まずは母親である私たちが認識し、子どもたち(女の子だけでなく男の子にも)に伝えていけたらいいなと思います。
〈佐久間麗安連載〉
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