『るりチャンネル』対談|グローバル×AI時代の子育てで大切なこと

「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て
- 名前
- 佐久間麗安 / Rena Sakuma
- 家族
- 4人 (15歳男の子と13歳女の子)
- 所在地
- 東京都
- お仕事
- Bright Choice編集長
- URL
- Rena Sakuma (@renanarena0513) Instagram
【「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て】
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"We're in the midst of a character revolution."
- Adam Grant, "Hidden Potential - The Science of Achieving Greater Things"
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先日、『るりチャンネル』に出演しました。三浦瑠麗さんは、ブライトチョイスのモデルファミリーとしてコラムを多く寄稿いただいたこともある、私と同じ13歳の女の子のママ。同じママ同士、グローバル×AI時代の子育て、これから必要な人材について意見交換しました。
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【lullych るりチャンネル】 Premium Talk 三浦瑠麗x佐久間麗安
PART1:日本の地盤沈下〜みんな勝海舟になろう~
PART2:「AI時代」日本人に英語能力は本当に必要か?
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まずは私たちの現状認識を共有。失われた "20年"が"30年"となり、さらには円安・物価高でいよいよ苦しくなる子育て環境。2020年にブライトチョイスをローンチしてからずっと、読者の方々からは、
「いまの教育で良いのか」
「日本の教育では英語力が心配」
「詰込み型の受験以外にチョイスは?」
などの声がよせられています。
それらのコメントの背景にあるのは、「子育て環境は大きく変わっているのに、何か別の子育てチョイスはないのか?」という焦燥感です。
私自身が、「自分たちとは違うチョイスをしたい」と思ったのは、長男が3歳を迎えた2013年。夫婦で良く考えた末、その後、都内のインターナショナルスクールに進学させることにしました。当時は、GAFAMが台頭するグローバル社会が確立されたころ。世の中は多様な情報で溢れ、目まぐるしいスピードで生活環境が変わっているということを、日々実感していました。
ペンシルベニア大学ウォートンスクール心理学教授 アダム・グラントによれば、これからの時代に必要なのは、好奇心・成長思考・協調性・創造力などの「キャラクター・スキル」という人間らしい資質。*1 (*1 参考文献: Adam Grant、『HIDDEN POTENTIAL- 可能性の科学』、2025年)
たしかに、不確実性高まる時代、子どもたちには、時代の潮流を読みながら、「自ら価値やチャンスを創出できる資質」を持ってほしいと思います。
「未来の先生フォーラム」代表理事の宮田純也さんによれば、いま「情報革命」という、農業革命、産業革命に次ぐ、人類史上3度目の革命期にあるといいます。私たちの社会はインターネットやメタバースなどサイバー空間上に拡大し、あっという間にGAFAMが台頭。いま、産業の構造的変化が起こっているのです。*2 (*2: 参考文献: 宮田純也著『教育ビジネス-子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養』クロスメディア・パブリッシング、2025年)
さて、この歴史的な変革期における、日本の経済環境を振り返ってみると、私が子育てを始めた2010年代というのは、日本の貿易収支が赤字に転落し始めた頃。トヨタの輸出台数*3 がぐっと減少したのもこの時期で、貿易大国だった日本は、1980年代の日米貿易摩擦とプラザ合意による円高の影響から、多くの大企業が現地生産にシフト、海外収益は現地で再投資されるようになり、稼いだ外貨が日本に還流しない「産業の空洞化」と、それに伴う技術の流出、国内生産性の低迷が常態化するようになっていたのです。(*3: トヨタ自動車75年史)
私が外資系投資銀行に勤めた2000年代には、日本企業の海外M&Aは花形案件とされ、数千億からときに兆円規模にも及ぶ買収案件が新聞の一面を飾り、私も海外企業のデューディリジェンス(買収監査)業務で激務の日々でした。
でも、退職して、いざ子育てを始めるようになると、逆に、
「あれ!?日本が取り残されている!?」
という感覚に陥ったのです。
物価高に実質賃金の低迷で、なんだかお給料が上がらない風潮は続くし、いつの間にか韓国サムスンにLGや中国ハイアール、台湾のTMSCなどのアジアの家電・半導体メーカーが台頭している。
日本の「産業の空洞化」の代償を、私たちは日常で実感するようになっていたのでしょう。
さらには昨今の円安で、日本の経済環境は悪循環に陥っています。夫の勧めでフォローしているみずほ銀行のチーフエコノミスト唐鎌大輔さんによれば、貿易赤字と産業の空洞化(=国内投資の低迷)、少子高齢化や低成長、低金利などの経済構造上な要因が「構造的な円安」を生み、日銀の市場介入や利上げでは、この円安トレンドは変わらないといいます。*4 そうして、気づけば1ドル150円台入りしてしまいましたね・・。 (*4 参考文献: 唐鎌大輔著『強い円はどこへいったのか』日経BP 日本経済新聞出版 、2022年)
いまや円安のお買い得感を求めて、世界ではジャパンツーリズムが大人気に。2025年は9月の時点で海外旅行客数過去最高の3,000万人を突破し、日本の観光業は8兆円規模まで拡大。この観光業を、日本の自動車産業に次ぐ外貨の稼ぎ柱として、政府は2030年に訪日客数6,000万人消費額15兆円を掲げているそうです。日本が人気なのは嬉しいのですが、このオーバーツーリズの状況に何か複雑な気持ちになるのは否めません。
経済環境のこの構造的な悪循環を打開するのは、容易なことではありません。強いリーダーシップのもと、抜本的な取り組みが必要そうですね。
また、ここ数年であっという間に生成AIが台頭し、仕事や学習効率が一気に上がりました。いつでも知りたい情報にリーチし、膨大な情報を瞬時に処理することができるようになった一方で、就労環境も大きく変容しています。先日、仕事でお世話になっている方と、建築学科3年生のご子息が就職活動中との話になり、最近ではメタバース建築という分野で採用があると知りました。これまで考えられなかったキャリアですが、建築の知識とITスキルに基づく創造力が問われるそう。社会で活躍するには、正しい知識を習得するよりも、「知識やテクノロジーを活かして何を実現したいのか」ということを意識しなくてはなりませんね。
「これからの時代、子どもたちはどんな世の中を生きて、どんな仕事をするのでしょう? 」
ますます不確実性高まる中で、AI時代を生き抜くスキルの育成というミッションを背負う私たち親は、ますます頭を抱えそうです。
さて、ここ数年、子どもの進路検討でイギリスのボーディングスクールのアドミッションの方々と話す機会が何度かありました。どの学校も共通するのは、日本人に興味津々!だということ。「アジア人は多いけれど、日本人に来てほしい!」と言われることが多く、日本人生徒の活躍を切望しているようでした。
イギリスといえば、10月には、ロンドンの由緒正しいロイヤル・アルバート・ホールにて、大相撲公演が開催されました。会場には多くの観客が集まり、相撲という日本の国技・神事を通して、日本の伝統文化が世界に向けて発信された貴重なイベントです。伝統や敬意、マナーを大切にするイギリスは、日本の文化や価値観とも親和性が高いのでしょう。そんな学習環境で、子どもが「日本人らしく」活躍できる学校があるとよいなと思います。
私の息子はいま15歳。高校の進路を考える上で、大学の進路と卒業後のキャリアにも自ずと関心を持つようになりました。好きな科目は、数学、物理、生物にデザイン&テクノロジーと理系一辺倒で、大学ではエンジニアリング、特に都市工学に興味があるそう。
イギリスの高校受験の面接やエッセイでは、「やはり日本人として語れなくてはね」ということで、夏休みは大阪万博にいって、藤本壮介さんの大屋根リングはじめ、日本のさまざまな建築技術に触れました。例えば、ブルーオーシャンドームの炭素繊維強化プラスチックは、鉄の1/5の重さで同等以上の強度、日本の世界シェアも高いそうです。大屋根リングは世界最大の木造建築としてギネス世界記録に認定されましたが、建築業界では、いま木造高層ビルプロジェクトが話題です。鉄筋コンクリートよりもCO2排出量を低く抑えられ、建築コストも削減可能なエコな技術として期待されており、三井不動産や住友林業、大林組をはじめとした日本企業が、大型の木造高層ビル建設プロジェクトを次々に発表しています。
息子には、次の進学先では、まずは自分の興味関心のある分野から「日本の魅力」を知り、自分らしく意見する、日本人としてリーダーシップを発揮してほしいと願います。そういった前向きな姿勢を持ち続けることで、いずれは自分らしいキャリアを築き、日本社会、国際社会のお役に立てるような大人になってほしいものです。
最近、国際ニュースを見ていると、いま、国際社会では日本人のリーダーシップが問われる場面が増えていると感じます。
10月はASEAN・APEC首脳会議、トランプ大統領訪日などの外交イベントが立て続けに開催されました。自国だけでなく、アジアが共に成長してゆくために、日本の世界における立場を理解し、しっかり意見する人材が必要なのではないでしょうか。グローバル経済が発展し、近隣諸国との交流がいっそう重要になる中で、国境を越えたコミュニケーション力とリーダーシップが求められていると再認識させられたニュースでした。
また、今年は戦後80年。日本は、戦後核を放棄し、経済成長を遂げた国として、紛争の絶えない国際社会の和平のために、もっと前に出て貢献できるのではないでしょうか。
先日、NHKで、核廃絶運動で知られるパキスタンの芸術家、バシル・アマハドさんが、広島・長崎原爆投下80周年を機に自国で開催した作品展の特集を観ました。*5 印パ情勢が緊迫し、核保有を肯定する気運がますます高まる中で、パキスタンには日本をロールモデルに平和を願う人たちがいるということを、私たち日本人は認識しておきたいものです。
(*5 『キャッチ!世界のトップニュース ガザ最新情勢 パキスタンで核兵器廃絶』、NHK放送、2025/10/14 (火))
グローバル時代、国内だけでなく、国際的にも国境を越えた課題が絶えない中で、子育ての悩みはつきませんが、子どもが自分らしく意見し、世界に能動的に働きかけられる「キャラクター・スキル」を育てられるよう意識した一つひとつの子育てチョイスが、いずれ次世代を変えるエネルギーになるのではないでしょうか。
〈佐久間麗安連載〉
「子どもの好き」が最大のモチベーション!な国際派子育て
〈三浦瑠麗さん連載〉
子どもの未来をクリエイトする、国際政治学者の個性派子育て
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【lullych るりチャンネル】 Premium Talk 三浦瑠麗x佐久間麗安
PART1:日本の地盤沈下〜みんな勝海舟になろう~
PART2:「AI時代」日本人に英語能力は本当に必要か?
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