娘もいよいよ1年生|ニューヨーク公立校における最新ギフテッド教育事情
子育ても仕事も自分らしく彩るマンハッタンの暮らし
- 名前
- 小浪良子 / Ryoko Konami
- 家族
- 3人(夫、5歳の女の子)と7歳の豆柴
- 所在地
- ニューヨーク
- お仕事
- IROHA NYC経営
- URL
- 小浪良子 / Ryoko Konami インスタグラム
- URL1
- IROHA NYC
【子育ても仕事も自分らしく彩るマンハッタンの暮らし】
長い夏休みが終わり娘はこの秋からELementary School(小学校)へ入学しました。
今回はニューヨークでの学校選びとGifted & Talented(G&T、ギフテッド教育)について書きたいと思います。
ニューヨークのG&Tは大きく分けて二つあり、学校区の公立学校の中にギフテッドのクラスが設置されているDistrict G&T(ディストリクトG&T)と、一般教育のない全校ギフテッド生徒のみのCity Wide(シティワイド)といわれる学校があり、どの学校も公立のため学費は無料です。
ギフテッド&タレンテッドと聞くと、なんだかずば抜けて優秀なイメージがありますが、ニューヨークの判定基準は少し前に大きく変わり、正直なところそれほど難しい訳ではありません。
以前は、幼稚園から2年生までの子どもたちは、OLSAT(The Otis-Lennon School Ability Test )と呼ばれる能力試験とNNAT(Naglieri Nonverbal Ability test)という非言語能力試験の組み合わせで、標準化された試験を受け、そこで97パーセント以上の点数を取った子どもは、シティワイドへ応募する資格を取得でき、90パーセント以上の点数を獲得した子どもは、ディストリクトG&Tへ応募する資格を得ることができました。
ですが、2023年にエリック・アダムス市長は「この制度は親の言うことを聞くことに完全にコミットしている」と主張し、テストの代わりに成績が評価に採用されることになりました。その内容は、4つの項目すべてで「期待を超える(above expected)」を獲得し、担任からの推薦を得た生徒はG&T抽選に参加することができるというもので、シティワイドとディストリクトG&Tの区別もありません。
また、上位10%の学校に在籍するすべての生徒が、3年生からG&Tへの転校を申請できるという新制度「トップパフォーマー」も追加されたそうです。
これまで一般的だったテストでの判断は、富裕層がそのために家庭教師をつけるなど、本来の趣旨とは違うという意見もあったり、そもそもこの制度が「ニューヨーク市の公立教育の不平等さを象徴するプログラム」「(ギフテッド教育のクラスや学校には白人とアジア系が生徒の多く占めているため)差別的だ」といった批判も多くあり、ニューヨーク市長が変わるたびにシステムも変わったりして、政治に左右されやすいプログラムなのです。
とはいえ、私立校の学費があまりに高額なニューヨークでは、より良い教育の機会を得るためにギフテッド教育を選択する家庭が多いのも事実です。
実際、アダムズ市長の前任者であるデブラシオ市長は、人種や社会・経済的多様性の欠如に不満を抱き、G&Tを完全に廃止することを決意していたそう。
また、これまでの入学試験では日本語の選択肢がなかったため、担任が日頃の学校での様子からつけた評価を重視してくれるようになったということは、娘にとっても入りやすくなった点だと思います。
応募後は抽選なので、人気が集中する全校ギフテッド生徒のみの学校(シティワイド)の入学許可を得るのはなかなかの難関で、通常ウェイティングリストが300人から600人。まさに運とプライオリティー(すでに在籍している兄弟がいるなど)がものをいう世界。
我が家は3校を希望リストに書き(本来は12校埋めた方が良いです)、第1希望にしていた全校ギフテッドのみの学校(シティワイド)はウェイティングリストの約100番目だったので、最終的には入学許可が届いた、学校の中にギフテッドのクラスが設置されているディストリクトG&Tへ行くことにしました。
第1希望にしていたシティワイド校は情操教育にも力を入れていて、メディテーション(瞑想)やヨガ、マインドフルネスのワークショップやチェスを授業に取り入れていたり、1年生の動物についての学習では「脊椎・無脊椎動物」の分類、生息地、虫・両生類・魚・動物などの特徴や見分け方などまで掘り下げて学ぶなど、ユニークなカリキュラムが印象的でした。そして12th Grade(12年生)まであるので、一度入学したら中学・高校受験を考えなくて良いというのも人気の理由だと思います。また、算数はシンガポール式算数を取り入れ、第二外国語(キンダーガーデンから小学5年生まで必須)は中国語というのも他の公立にはないオリジナリティ溢れる内容。
一度入るとたとえ成績が悪くても退学させられることはなく、入学後に特別なサポートが必要なことがわかった場合は、学校内で個々に合わせたカウンセリングや、読み書きの専門家による指導、スピーチセラピーなどが受けられるそうです。アジア系が多く数名通っている子どもを知っていたのも希望した理由として大きかったです。
※ニューヨーク市(NYC)に5校あるシティワイドの学校 ↓
・New Explorations into Science, Technology and Math (NEST+m)
・Brooklyn School of Inquiry (BSI)
・Talented and Gifted School for Young Scholars (TAG)
・The Anderson School
・The 30th Avenue School (Q300)
ディストリクトG&Tを設けている学校のリストはここで見られます。
アメリカの義務教育は親が子どもに教育を受けさせる義務があるのと同時に、公立学校が子どもたちに生産的な教育を与える義務もあり、ギフテッドの生徒が優等生なわけではなく、一般的な授業に満足ができないのであれば、満足できる教育を与えるというのがギフテッドクラスの根底の考え。
普通クラスとは違うアプローチの仕方や、子どもの特性を活かした異なる種類の課題を割り当てられるのかなという印象です。
結局のところ、いくら土壌が整えられていても花を育てるのは自分。
成長につながる豊かな教育体験を通して、とにかく楽しく負担のない学校生活を送ってもらえたらと思います。
<小浪良子さん連載>
子育ても仕事も自分らしく彩るマンハッタンの暮らし