突然の「日本に帰りたい」宣言! 10か月で幕を閉じた長男の親子留学と「新たな門出」

カナダに「教育移住」した私の「母子留学つれづれ日記」
- 名前
- 高田さおり
- 家族
- 4人家族(14歳と11歳の男の子)
- 所在地
- カナダ・ブリティッシュコロンビア州
- お仕事
- Study & Stay代表
- URL
- Study & Stay Instagram
【カナダに「教育移住」した私の「母子留学つれづれ日記」】
「僕は高校受験をするから、日本に帰りたい」
カナダで母子留学中の長男がそう打ち明けてくれたのは、日本の中学2年にあたるセカンダリーが始まり1か月が経った頃のことでした。
息子2人と私との3人暮らし、家族の絆も深まったなと感じていた矢先のことだったので、正直に言うと、その言葉を聞いた時はかなりショックを受けました。それでも今となっては「帰国したい」と、自分の口から打ち明けてくれた事は良かったのだと感じています。
そうでなければ、思春期の息子を限界ギリギリまで追い込んでいたかもしれない。
海外でのワンオペにいっぱいいっぱいの私は、そんなサインを見落としていたかもしれない......。
そう思うとゾッとします。
コロナ禍に息子たちを連れカナダに渡ったとき、以前とは異なる常識が生まれ、臨機応変に対応しなければならないというのは重々承知していたつもりでした。けれど、ソーシャルディスタンスの疎外感は拭えないし、マスクとパネル越しでの英語は、口の動きが分からず、聞き取るのに何倍も苦労します。
今思えば、息子たちにとって、初めての海外生活をスタートさせるには(そして親である私にも)、並大抵ならぬ試練が待ち受けていたのだと思います。息子がカナダ留学を満喫できなかった事は、アドラー心理学的には「彼の課題」であるのだろうけれど、やはり母である私から切り離して考えるのはとても難しいことでした。
そもそも今回の母子留学を計画したのは私で、「もう一度カナダに住みたい」と思ったから。そして、その気持ちの裏側には「息子たちには海外でさまざまな経験を積んでたくましく育って欲しい」との願いもありました。それに加え、海や山に囲まれたカナダの広大な大自然をきっと彼らも気に入るだろう、と踏んでいたのです。
だから、長男の帰国宣言を受けてからは、「息子をカナダに連れてきて、楽しい時間を過ごさせる事もできず、居心地の良い環境を整える事もできず、親として今まで何を見てきたのだろう」と、自分で自分を責めました。
ときに子育ては、それだけが全てではないにもかかわらず、親が子どもに使ったエネルギーや時間、コストを天秤にかけ、成果を求めてしまうことがあります。私の子育てのモットーは、「心も体も健やかな状態であれば、それで充分」だったはず。だからこそ、心のバランスを崩しそうになった長男を見て、とても胸が痛みました。
当初は「最低でも3年」と計画していた親子留学でしたが、長男の留学生活はわずか10か月という短い期間で幕を閉じました。そして、日本に帰って高校受験をするという道を、自分の意思で決めたのです。
一方、次男はカナダの自由な学校生活をもう少し味わう力が残っていそうなので、私と2人でカナダにもうしばらく残ることになりました。
同じお腹から生まれたわが子でも、感じることにこんなに差があるなんて......。子育てに正解などなく、やってみないと分からない事ばかりなのだと言うことに改めて気づかされました。
わずかな期間ではありましたが、この留学を通じて長男が得たものの1つとして、日本という母国を客観視できたことが上げられるでしょう。大袈裟かもしれませんが、「受験をしないと入学できない」日本の高校と、「受験しなくても入学できる」カナダの高校。各国の教育の違いも、カナダに来てみないと分からなかったはずです。
きっと自分で決めたことなら、10か月のブランクがある中学の勉強も、夜遅くまでの受験勉強も、頑張れるはず! まさか留学することで自分が息子と離れるなんて思いもしなかったけれど、長男が決めた事を尊重するのも私たち親にしかできません。
日本に残っていた主人に息子を預け、一通りの生活が落ち着いたのを見届けてから、私は次男とまた、寒い冬を迎えるカナダに戻ってきたのです。
〈高田さおりさん連載〉
カナダに「教育移住」した私の「母子留学つれづれ日記」