絵本の部屋9 心に響く短編アニメーション、"悲しい"の裏側にあるもの

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海のある町でのびのびと暮らす、クリエイター夫婦の子育て

名前
ヨシタケシンスケ & 吉竹祐子
家族
中3と小4の男の子をもつ、4人家族
所在地
神奈川県
お仕事
絵本作家(夫)、クリエイター(妻)
URL
くりひょうたん。by吉竹祐子

ヨシタケシンスケ邸〈絵本の部屋〉から、家族の思い出が詰まったおもしろ蔵書をご紹介。妻の祐子さんが綴ります】

ある日、何気なくテレビをつけたら、短編アニメーション作品を数日に渡り放送するという企画番組がオンエアされていて、面白そうだったので録画することにしました。その時に、たまたま放送されていたのが今回ご紹介する『ダム・キーパー』です。

たった18分間の短いアニメーションだったのですが、見終わった後、ボロボロと涙が出てきて、悲しいような、ホッとするような、なんとも言えない衝撃を受けました。そんな話を夫にしたところ『ダム・キーパー』のことはすでに知っていて、絵本化されていること、そしてその絵本を持っているとのことでした。

絵本版『ダム・キーパー』は、すべての絵を描きおろして絵本化したそうです。制作者は、ピクサーでアートディレクターをつとめていた日本人の堤大介氏とロバート・コンドウ氏。アニメーション制作スタジオ「トンコハウス」を設立し、自主制作した処女作なのだそう。同作品は、世界中の国際映画祭で20以上もの賞を受賞し、2015年には、米国アカデミー賞短編アニメ―ション部門にノミネートされ、一大ニュースとなり話題を集めた作品です。そんな有名な作品だということも知らず、あの瞬間に私は、たまたまテレビを付けて、たまたま出会うことができたわけで、この運命に感謝したい気持ちにすらなりました。

私があまりに衝撃を受けたので、息子たちにもぜひ観てもらいたくて、映像と絵本をセットにして観せてみました。二人とも、やっぱりじんわりと涙していました。「なんだか分からないんだけど、なんか悲しくなる...」というのが二人の意見。でも、その悲しいの裏側には、ただ悲しいだけではなく、なんかホッとした気持ちもあったりして、うまく言葉に言い表すのは難しい様子でした。

みなさんにもぜひ観ていただきたい。そして、感想を語り合いたいな、って思う作品です。絵は、さすが!という上手さで、いわゆる<アニメ>っぽいものではなく、一つ一つ手で描かれているという感じが全面に出ていて、そこもまた魅力的です。

〈連載概要〉ヨシタケシンスケ邸のおもしろ蔵書の数々を、妻の祐子さんが心温まる子育てエピソードと共に綴る、その他記事はこちらより
ヨシタケシンスケ邸絵本の部屋

       
  • 『ダム・キーパー』

  • ダム・キーパーって何?

  • 主人公ピッグ

          
  • アニメーション版『ダム・キーパー』

  • 本当の友達

  • 2015年に米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた短編映画『ダム・キーパー』が、2019年に絵本化されています。

    『ダム・キーパー』トンコハウス作(KADOKAWA刊)

  • 「ダム・キーパーって何? ピッグはどうしてダム・キーパーなの?」私は、そんな疑問から作品に入ることになりました。

  • 夢も希望もない恐ろしい世界から町を守る仕事が<ダム・キーパー>。主人公ピッグは、そんな大切な仕事を、一人で、誰も知らないところで毎日頑張っていたのです。

  • 絵が本当に素晴らしい。映像を観ているような感じがなく、動く絵本という感じ。日本語吹き替えのナレーションは、柄本明さん。そこもまたすごく良いのです。2015年米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた短編映画『ダム・キーパー』。

  • お友達が100人いることよりも、一緒にいて心から楽しいと思えるお友達が、一人いることの方が幸せだよな~と思います。