絵本の部屋10 シンプルを極めた長新太さんの遺作をふたたび

ヨシタケシンスケ宅のおもしろ蔵書を、妻祐子さんが綴る
- 名前
- ヨシタケシンスケ & 吉竹祐子
- 家族
- 中3と小4の男の子をもつ、4人家族
- 所在地
- 神奈川県
- お仕事
- 絵本作家(夫)、クリエイター(妻)
- URL
- くりひょうたん。by吉竹祐子
【ヨシタケシンスケ邸〈絵本の部屋〉から、家族の思い出が詰まったおもしろ蔵書をご紹介。妻の祐子さんが綴ります】
約1年に渡り、我が家の蔵書をご紹介させていただきましたが、今回が最後となりました。毎回、どの絵本を紹介しようか悩みましたが、その度に、息子たちと過ごした<あの頃>の記憶が鮮明に蘇ってきて、懐かしさに浸りながら原稿を書かせていただきました。
そんな最後に選んだ絵本は、「こどものとも0.1.2.」の『ころころ にゃーん』。
この絵本は、長男が5歳の時に本屋さんで見つけ、ショッキングピンクのマジックで大胆に描かれた絵に衝撃を受け、「さすが長新太さんだな!」と、うれしくなって購入しました。買った時は、まさかこの絵本が長さんの遺作であると知らず、しばらくしてから知ることとなりました。セリフは、「ころころ」と「にゃーん」だけ。絵に使われている色はピンクだけ。亡くなられる2週間前に描かれた絵本なのだそう。長さんは、どんな思いでこの絵本を描かれたのでしょう。
実は、1976年には似たタイトルの『ごろごろ にゃーん』という絵本が出版されています。どちらも「ねこ」が出てくるという点では同じですが、『ごろごろ にゃーん』の方は、飛行機に乗ったねこが青いペンで描かれ、セリフは「ごろごろ にゃーん ごろごろ にゃーんと、ひこうきは とんでいきます」です。『ごろごろ にゃーん』にくらべ、『ころころ にゃーん』は、さらにシンプルに描かれていて、より小さな赤ちゃんでも楽しめるように作られたのかな? 長さんが生きていらしたら教えていただきたかったです。
さて『ころころ にゃーん』に話は戻りますが、この絵本、当時5歳だった長男は、とっても怖がってしまったのです。丸いものがころころと転がってきて、お母さんねこの上に乗っかっていくのですが、途中、それまでよりも大きな丸いものがころがってくるところを、私が、臨場感を出してみようと、<ころころ>を低めの声で、ページをめくって<にゃ~~~ん>となるところを必要以上にボリュームを上げて読んだのが怖かったみたいです。なので、次男の時はその点を気を付けて読んでみたら、大好きでよくこれ読んでとせがんでいました。長男には悪いことをしてしまいました。
長さんの絵本は、どれも独特でナンセンスな世界を楽しませてくれますが、『ころころ にゃーん』は、そんな長さん最後の渾身の作品です。ぜひ読んでみてください。とっても愉快です。ただし、読むときのボリュームだけは十分気を付けてくださいね。
〈連載概要〉ヨシタケシンスケ邸のおもしろ蔵書の数々を、妻の祐子さんが心温まる子育てエピソードと共に綴る、その他記事はこちらより
ヨシタケシンスケ邸絵本の部屋