開成中学校でも実践される「ピアノレッスン」のメリットとは?
「ピアノで学ぶ」アート教育論①
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- 武村 八重子
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- ピアニスト&作曲家
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- Otokana (武村メソッドレッスン)
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- MuTiA (武村八重子プロデュース若手演奏家育成プロジェクト)
【「子どもには憧れる力がある」ピアニスト武村八重子さんのアート教育論】
近年、ますます過熱する幼少期からの受験競争。一方で、子どもたちが勉強一辺倒になることへ懐疑的な親や、子どもの個性を伸ばす情操教育への関心も高まりをみせています。
情操教育の代表格ともいえる音楽教育のなかでも、特に人気の高いピアノの習い事は、「音楽的感性を養い、楽器演奏のスキルを身に付ける」といった意義にとどまらず、目標を達成する力や表現力、困難に直面したときの底力といった、子どもたちの「生きる力」を育むベースにもなるのではないか、とブライトチョイスは考えます。
そこで本連載では、「情操教育こそ、現代の子どもたちに必要な教育」との信念のもと、脳科学に基づくオリジナルのピアノレッスン「武村メソッド」を主催される、ピアニストの武村八重子さんにお話を伺っていきます。
「現在、私のレッスンには、3歳から社会人までの生徒が通っています。相手が大人なのか子どもなのかによって教え方は少し変わるのですが、私のメソッドは、目を使って楽譜を丁寧に読み込むことに重きをおいているのが特徴の1つです。その上で鍵盤に触れ、音を奏でる指導を行っています」(武村さん、以下同)
人間が得る情報の約9割は、視覚器官からのものだとも言われています。一般的なピアノレッスンは耳から習得させることが多いのに対し、「武村メソッド」では、目を意識的に使うことで脳を活性化。脳と直結している指に、いち早く信号を伝達させることを意識しているそうです。
そんな独自のメソッドが生まれた背景には、武村さん自身の辛い過去がありました。
「コンサートなどで多忙を極めていた29歳の頃に、突然、手に違和感を覚え、しばらく指が動きにくくなる症状に見舞われたことがありました。医師からは、『オーバーワークが原因なので、できるだけ手を休めてください』と、半ばドクターストップのような忠告を受けたのですが、それでも練習を止めるわけにはいきません。
"最小限の時間で、最大限の効果を得ることのできる練習法はないだろうか"と、試行錯誤を繰り返すなかで出会ったのが『ピアニストの脳を科学する』(古屋晋一著/春秋社)という1冊の本だったのです」
ピアニストの凡人離れした指の動きのメカニズムを脳科学的側面から解き明かした本書の内容に共感し、その後、関連する医学論文なども読み漁ったと言う武村さん。そして生まれたのが「武村メソッド」なのだそうです。
「がむしゃらに練習時間を積み重ねるのではなく、いかに効率的に効果を出すかを突き詰めていった結果、目を使うことで脳を活性化する現在の方法にいきつきました」
その後に出会った音楽家の手の専門医のおかげで、指の不調は3年ほどで完治したそうですが、実体験から生まれたオリジナルメソッドは、現在も多くの生徒から支持を受けています。
「効率的に演奏スキルが身に付くだけでなく、楽譜を丁寧に読み込む癖がつくことで読解力が付き、国語の成績がアップする生徒も少なくありません。また、これは私のレッスンに限った話ではないのですが、音楽教育には、集中力が付いたり、成功体験を積み重ねることで自己肯定感が高まる、といったメリットもあります。物事を要領良く体得する賢さは座学の勉強にも通じるところがあるなど、その重要性は今、さまざまな場面で再認識されているんです」
たとえば、日本トップレベルの進学校として名高い開成中学校では、約35年も前からピアノの授業が必須科目。1人1台の電子ピアノが割り振られ、創作指導も兼ねた高度なピアノ指導が行われていることが注目されています。
「私よりも遥かに社会的知見の深い方々も、『ピアノが脳に良いことは間違いない』と実感されているようで、私の社会人の生徒さんのなかには、経営者の方も少なくありません。東京大学を目指す受験生専門の名門塾の代表の方も、私の生徒のお1人なんですよ。
また、学生の教え子には、ロンドン大学やハーバード大学など、世界の名門校へ進学した子もいるのですが、同級生のほとんどが何かしらの楽器を弾くことができる、なんて話も聞きます。音楽教育を含めた情操教育は、今後、日本の子どもたちがグローバルに活躍するためにも必要なことだと実感しているんです」
次回は、生徒の多くが海外留学を実現した実情に関してより詳しく伺っていきます。
〈連載概要〉
【「子どもには憧れる力がある」ピアニスト武村八重子さんのアート教育論】
第1回:開成中学校でも実践される「ピアノレッスン」 のメリットとは?(本記事)
第2回:国際バカロレアでも必須! アート教育は「世界で活躍するための素養」
第3回:2歳半からの英才教育... 私を救った「恩師の言葉」と「母の教え」
第4回:ピアノが嫌いでもいい! 「憧れ」が最大のモチベーション
第5回:感性を育てる情操教育で「個性を武器」に 世界を見据える
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