ピアノが嫌いでもいい!「憧れ」が最大のモチベーション
「ピアノで学ぶ」アート教育論④
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- 武村 八重子
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- ピアニスト&作曲家
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【「子どもには憧れる力がある」ピアニスト武村八重子さんのアート教育論】
近年、ますます過熱する幼少期からの受験競争。一方で、子どもたちが勉強一辺倒になることへ懐疑的な親や、子どもの個性を伸ばす情操教育への関心も高まりをみせています。
情操教育のなかでも人気の高いピアノの習い事は、「音楽的感性を養い、演奏スキルが身に付く」といっただけでなく、目標を達成する力や困難に直面したときの底力、また言語以外のコミュニケーションツールとして、子どもたちの「生きる力」を育むベースにもなるようです。
しかし同時に、ピアノのレッスンのような音楽教育は、単調な反復練習に多くの時間を割かなければならず、「最初こそ楽しく通っていたものの、徐々にレッスンを億劫がるようになってきた」「子どもが練習嫌いでなかなか上達しない」など、親の悩みもつきないもの。そこで今回は、音楽教育にも尽力されるピアニストの武村八重子さんに、子どもたちのモチベーションを高める指導方法などに関して伺っていきます。
「今は、下は3歳から上は大学生までの子どもたちに教えているのですが、ピアノのレッスンは地味な反復練習が大半。日々の練習が大好きだという生徒など、まずいません。それでも諦めずにレッスンを続けられるよう、幼少期の子どもたちには、目標を達成するごとにシールや花丸でご褒美をあげたり、『先週はうんと頑張ったから、今週はこれくらいにしようか』と、緩急を付けたレッスンを心掛けています」(武村さん、以下同)
小学生以上の子どもたちには、お手本となる憧れを示すことも重要なのだそう。
「子どもたちは、本能的に、すごい物に憧れる力を持っています。だから、生徒たちには日頃から私のコンサートを聴いてもらったり、私がプロデュースしている若手演奏家の演奏を聴かせたりしているんです。」
「かっこいい年上に憧れ、『あんな風になりたい』との気持ちが最大のモチベーション」と語る武村さん。また、生徒を子ども扱いしないことも心掛けています。
「上手くできれば褒めますが、時として我慢も必要なのだときちんと話します。私はピアノのレッスンをよくマラソンに例えるのですが、42キロを走っている間はずっと辛い。でも、ゴールテープを切ったときの爽快さ、沸き起こる拍手の嬉しさが必ず待っているから頑張ろうね、と話すんです」
子どもにとっては、親とは違うより客観的な目線を持った信頼のおける大人の存在も必要不可欠です。
「私のレッスンの土台は信頼関係を築くことです。それは日々の積み重ねでしかなり得ないのですが、『この先生は、何があっても自分の味方になってくれる』と、生徒たちに信じてもらえることが重要。その上で、今の課題は何か、どこが優れていてどこが劣っているのか、を客観的な視点で子どもたちに伝えることが私の役目だと思っています」
武村さんのレッスンに通っている生徒のなかで、プロの演奏家を目指している子は2割ほど。「ピアノが好きじゃなくても、先生に会いたいからって通ってくれればそれでいいんです」と語る彼女の教育論は、日々の子育ての参考にもなりそうです。
信頼のおける恩師に恵まれ、夢を持った子どもたちは、同時に、憧れの存在に近づくために目標をたて、努力することを惜しまないはずです。そのプロセスこそが、子どもの「生きる力」を育むのだとすれば、音楽教育などに代表される情操教育こそが、現代を生きる子どもたちには必要不可欠なのかもしれません。
最終回となる次回は、日本の音楽教育の課題や武村さんの今後の夢などを伺っていきます。
〈連載概要〉
【「子どもには憧れる力がある」ピアニスト武村八重子さんのアート教育論】
第1回:開成中学校でも実践される「ピアノレッスン」 のメリットとは?
第2回:国際バカロレアでも必須! アート教育は「世界で活躍するための素養」
第3回:2歳半からの英才教育... 私を救った「恩師の言葉」と「母の教え」
第4回:ピアノが嫌いでもいい! 「憧れ」が最大のモチベーション(本記事)
第5回:感性を育てる情操教育で「個性を武器」に 世界を見据える
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